ダンジョン魔改造!このチートスキルでガトリング美少女とともにダンジョン配信し、人生ハードモードを抜け出せ!

逢巳花堂

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第22話 江ノ島ダンジョン⑥

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 地底湖の中には、半魚人のようなモンスターがウヨウヨと蠢いている。

 気持ち悪っ、と思いながら、俺は地面に手を当てた。

 この湖面全体を何かで覆い尽くせば、モンスターの攻撃を防ぐことが出来る。だけど、埋め立てるところまで行くと、エネルギーをかなり消耗してしまう。

 ここは、網だ。

 湖上に網をかけるようなイメージで、全体を覆ってしまえばいい。

(網よ、広がれ!)

 足元の岩壁がグニャリと変化して、硬いワイヤー製の網となって広がっていく。岩場と岩場の間を埋め尽くすように、網は湖面を覆っていく。

 完全に湖面を封鎖したところで、半魚人どもはようやく異変に気が付いたか、バシャバシャと音を立てて、湖の中から飛び出そうと暴れ始めた。しかし、網で遮られて、水から出ることはかなわない。

「キエエエエ!」
「ケエエエエ!」

 湖面に顔だけ出して、半魚人どもは怒りの声を上げている。

 悪いな、お前達の出番を奪っちゃって。だけど、面倒な戦いはしないほうがいいだろ? お互いにとって。

 何よりも、今、俺が集中しないといけないのは、あの世直しDライバー蛇和尚だ。

 俺は岩場をなんとか飛び移っていき、中央の大きな岩場へと近付いていく。

 戦いは既に始まっていた。

「ぬおおおりゃあああ!」

 蛇和尚は錫杖を豪快に振り回し、空を裂き、岩を削り、チハヤさん達を叩きのめそうとする。

 その強烈な攻撃を、チハヤさん達はサイドステップや受け身でかわし、見事に相手のことを翻弄している。

 さらに、そこへナーシャが参戦してきた。

「降参しなさい! 降参しなかったら、蜂の巣にするわよ!」

 物騒なことを言いながら、ガトリングガンの銃口を蛇和尚へと向けている。

「がははは! 人間相手に撃てば、殺人罪だぞ! 撃てるものなら撃ってみろ!」

 と蛇和尚が挑発した直後、

「おーりゃああああ!」

 威勢のいい掛け声とともに、ナーシャは容赦なくガトリングガンを乱射し始めた。

 一応、相手の胴体は狙わず、足元の岩場を狙っての射撃だ。ガガガガガ! と音を立てて岩が削れ、破片が舞い散る。

 まさか撃つとは思っていなかったのか、蛇和尚は身をのけぞらせた状態で、口をあんぐりと開けて固まっている。

 チハヤさん達も、仰天した様子で、ナーシャのことを見つめている。

 少しして、蛇和尚が喚き始めた。

「本気で撃つ奴がいるか⁉ 当たったらどうするんだ! 馬鹿野郎!」
「当たったら、ごめんなさい、するしかないわね」
「ごめんで済む攻撃じゃなかったぞ、今のは!」
「何よ! この程度のことでビビってるの⁉ 頼ればいいじゃないの、仏の加護とやらに! それか、そんな1ミクロンも無いような、みみっちい心臓しか持っていないなら、今すぐ世直しDライバーを名乗るのやめたら!」

 ザ・辛辣な言葉を浴びせかけられ、蛇和尚は耳まで顔が真っ赤になった。

「仏のことを馬鹿にするのはいい。俺のことを馬鹿にするのは許さん!」

 というか、ちょいちょい、この坊主、仏様に対してバチ当たりな発言をするよな。蛇和尚というのは名前とコスチュームだけで、本当は僧侶でもなんでもないんじゃないか?

「ぬううううん!」

 突然、蛇和尚は法衣を脱ぎ捨てた。白いフンドシ一丁の姿になると、割れ目たっぷりのムキムキ筋肉を見せて、まるでボディビルダーのようなポージングを決める。

「秘奥義! 金剛爆体《こんごうばくたい》!」

 たちまち、蛇和尚のマッスルボディが輝き、テカテカに黒光りし始めた。

「うえ……」

 シュリさんが気持ち悪そうな声を上げる。

「わー♪ すごい♪ すごい♪ すごい変態だあ♪」

 レミさんが手を叩いて喜んでいる。

「ふはははは! これで、我が肉体はいかなる攻撃も受け付けない、絶対防御の体となった! 遠慮することはない! いくらでも、好きな攻撃を仕掛けるがよ――」
「ではお言葉に甘えて」

 冷たい声音でチハヤさんは言い放つと、マインスロアーの引き金を引いた。

 爆弾がまっすぐ飛んでいき、蛇和尚の顔面にぶつかる。直後、首をもぎ取るのではないかと思うほどの、すさまじい爆発が起こった。

「ぶぐほぁっ⁉ や、やりやがったな⁉」
「あ、本当に平気なんですね。すごい防御力ですね」
「いきなり初手で顔面を狙う奴がいるか! よく見ろ! 眼球は硬化できないんだぞ! ここを怪我したらどうするんだ!」
「なるほど。目が弱点、と」
「はっ⁉ しまったーーー!」

 どうやら蛇和尚は脳味噌の大きさも蛇並みのようだ。

 シュリさんが地面を蹴り、一気に蛇和尚の懐まで間合いを詰める。そこから、えげつないほどに正確に、相手の眼球を狙ってナイフを突き刺そうとした。

 蛇和尚は身を傾けて、シュリさんのナイフ攻撃を避けたが、その頭頂部に銃弾がチュイン! と当たって弾き返された。レミさんのライフルによる狙撃だ。傷を負わせることはかなわなかったが、蛇和尚を逆上させるには十分だったようだ。

「こざかしい連係攻撃をしおってーーー!」

 まずは一番白兵戦が弱いだろう、レミさんを倒すことを考えてか、そちらへ向かって猛然と突進していく。

 そこへ、ナーシャが割りこんできた。

「よせ! ガトリングガンは効かない!」

 マインスロアーでもビクともしない蛇和尚を、ガトリングガンの銃弾で倒せるとは思えない。

 しかし、ナーシャは一歩も退かなかった。

 あろうことか、ガトリングガンを地面に投げ捨てると、素手になって、腰を落として、蛇和尚のことを迎え撃とうとする。

「がはははは! そのヒョロヒョロの体で、何が出来る!」

 すっかり舐め腐っている蛇和尚は、真っ向から、ナーシャに体当たりを仕掛けた。

 ところが、ナーシャは吹っ飛ばなかった。

 蛇和尚の胸板を、正面から押さえて、動きを封じ込めている。

「ぐ⁉ ぬ⁉ なぜだ⁉ どういうことだ⁉ その水着のような格好で、なぜ、ここまでの力が出せる!」
「これはただのレオタードではないの。ナノマシンを搭載し、全身の神経や筋肉に働きかけて、最高で通常の何十倍ものパワーを発揮させることが出来る、最新型のパワードスーツ。ま、理屈を説明しても、あなたみたいな脳筋野郎にはわかんないでしょうね」
「ぐおおおおお! どけえええ!」

 憤怒の表情の蛇和尚は、拳を振り上げ、ナーシャのことを殴り飛ばそうとした。

 が、それよりも速く、ナーシャの華麗なるハイキックが、ズドンッ! と蛇和尚のこめかみに叩きつけられた。

「あ――」

 グルンと白目を剥き、蛇和尚は膝から崩れ落ちる。

「愛称はガトリング・ナーシャだけど……私、一番得意なのは格闘戦なの。ごめんね、強すぎて」

 クスッ、と微笑み、唇に人差し指を当てるコケティッシュなポーズを取って、ナーシャは倒れた蛇和尚へとウィンクを飛ばした。

「すっげ……」

 俺はそう呟いてから、ハッと気が付いた。

 結局、俺、見ているだけで何もしていなかった、と。
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