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「ねぇ、セリア。愛って、なんだろうね」

 二人で朝食と昼食を兼ねて、遅いランチを食べながら、ふと、思い出したように話をする。

「ん?どした?」

「ホラ、私って、昔からどこか、冷めたところがあったじゃない?」

「…シキズキ先輩のこと?」

 王立公園の近くにある、このパスタ・レストラン。ランチが美味しいと評判だ。

「うん。先輩はさぁ、こう、すっごく私に夢中で、私が一番で、私が世界の中心、みたいな所があったけど、そんな先輩を見れば見るほど、こう、スゥーって、冷静になる自分がいたの」

「アユフィーラは、そうだね、なんていうか、夢中って感じではなかったよね」

「でも、この前、深夜に残業していたら、先輩と二人っきりになったの。偶然」

 ランチで頼んだ、ペンネ・アラビアータが届く。

「先輩が、私の髪を、こう、久しぶりに優しく、すいてくれたの。そしたら、ぶわっと4年間のこと、思い出してきて…今でも、愛して、います。って。初めて伝えたの、先輩に」

「初めて、だったの?」

「そう、初めて。私、あんなに仲良く、1年も付き合っていたのに、1度も言ったことがなかった」

 セリアの頼んだ、ボンゴレが届く。

「そしたら、俺が、その言葉を欲しかったときには、くれなくて、何で今なんだ、って」

 アラビアータの赤が、目の前のものが形を無くしていく。

「先輩を、泣かせてしまった」

 セリアも、ボンゴレに手をつけない。

「セリア、私、先輩をまた泣かせちゃった」

 私の頬を、涙が伝っていく。

「アユフィーラ…」

「先輩は、たくさんの愛を、私にくれてたのに。その時は返せなかったのに、今頃、愛してるって、気づくなんて…ね」

 パスタが冷めていく。

「‥‥‥アユフィーラ、パスタ、食べよう」

 そう言って、セリアはボンゴレを食べ始めた。私のアラビアータは、辛かった。

「アユフィーラ、この言葉、覚えてる?…愛は寛容であり、愛は親切です。…愛は決して絶えることがありません、って。異世界の聖書っていう、聖典のことば」

「ん、そんな言葉、あったね」

 アラビアータの味がしない。辛味を足しておく。

「シキズキ先輩。傍から見ていても、本当に優しくて、親切だったよね。アユフィーラにだけだけど。だから、もう少し、信じてみたら?愛は絶えることはないって」

「そうかな…」

 やっぱり、涙の味がする。

「このお店のパスタ、美味しいね」

 セリアは美味しそうに、ボンゴレを食べている。帝国は内陸国だから、新線な魚介類が手に入りにくい。ここは海辺も近いから、貝類も美味しい。

「うん、セリア。ありがとう。私、もう少し、この自分の気持ちと向き合ってみるね。どうせしばらく、忙しくなっちゃうから、恋愛している暇はなさそうだけど」

「ふふ、アユフィーラ。今から、海を見に行きたいな」

「いこっか」

 二人とも、パスタを食べ終えてから、思いつきで馬車に乗り、海を見に行った。海はキラキラと、輝いていた。

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