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何だろう、この、バラバラだった点が、線になって結びついていく感じは。シキズキ先輩のお姉さんが、グレアム様と婚約するハズだった。けれど、シキズキ先輩が王太子様と何か約束をしたから、その婚約が流れた。で、お姉さんは本当に結婚したかった騎士様と、結婚することができた。
そのグレアム様と一緒にサザン帝国に滞在していたのは、偶然なのだろうか。当時から、シキズキ先輩の魔力は突出していた。そして、留学中の週末は、ほとんど忙しくて、会えなかった…
今、スレイヤール王国の実質の支配者は、王太子のデニスリード殿下と聞く。そんなに力のある方と、当時、少年だった先輩が、一体何を約束したのか。いや、させられたのか。
気になるけれど、これ以上、ここで考えていても仕方がない。
「アユフィーラさん、何か、悩まれているのかしら?」
リノリラさんに、優しく声をかけられる。この優しさは、シキズキ先輩と同じだ。
「いえ、大丈夫です。…本当は、シキズキ先輩から、きちんとお話を伺えれば、良かったのですが。あの、学園での別れ方が、その…一方的だったように思ったので。でも、もう終わったことですから。大丈夫です」
「そうね、シキズキも、夫も守秘義務が絡む仕事をしているから、時々だんまりするのよね…」
「ドース伯爵も、ですか?」
「えぇ、そうよ。彼は宮廷騎士団の、王太子付きだから、王宮にいれば会うこともあるかもしれないわね。何か困ったことがあったら、彼を頼ってね。体力だけは、あるみたいだから」
「そう言っていただけると、嬉しいです。ありがとうございます」
「アユフィーラさん、これは、私のカンだけど…シキズキのこと、もうちょっと、待ってあげて」
「え、待つ、ですか?」
「そう。諦めないで、待っていて。いつまで、とはわからないのだけど…」
リノリラさんは、時々不思議なことを、大木の精霊から告げられるらしい。今は長女のエレノアちゃんの方が、その能力が強いようだ。
そのエレノアちゃんを通じて、最近、不思議なことを告げられた、という。曰く、シキズキの恋が成就するのに、時間がかかる、が、必ず成就する、と。
「シキズキの恋の相手が、アユフィーラさんかどうか、そこまではわからないの。でも、お会いして、私はそうだといいな、って思っているわ。だから、もう少し。もう少し、待っていて」
「はぁ、精霊のお告げですか。わかりました。参考にさせていただきます」
最後に、何か突拍子もないことを聞いてしまった。恋が成就する…か。私では、ありえない。彼は今や、王国の兵器開発の重要人物で、私は帝国の貴族として、跡取り娘として帰らなくてはいけない。
私が必要なのは、私の婿になって、帝国に住むことのできる優秀な魔術師だ。
それでも、先輩の暖かい家族とお会いできて、嬉しかった。その後は、留学時の先輩の話で盛り上がり、昼食を頂いて、そしてまたおしゃべりをして、帰宅した。
シキズキ先輩には、結局、会うことはできなかった。
そのグレアム様と一緒にサザン帝国に滞在していたのは、偶然なのだろうか。当時から、シキズキ先輩の魔力は突出していた。そして、留学中の週末は、ほとんど忙しくて、会えなかった…
今、スレイヤール王国の実質の支配者は、王太子のデニスリード殿下と聞く。そんなに力のある方と、当時、少年だった先輩が、一体何を約束したのか。いや、させられたのか。
気になるけれど、これ以上、ここで考えていても仕方がない。
「アユフィーラさん、何か、悩まれているのかしら?」
リノリラさんに、優しく声をかけられる。この優しさは、シキズキ先輩と同じだ。
「いえ、大丈夫です。…本当は、シキズキ先輩から、きちんとお話を伺えれば、良かったのですが。あの、学園での別れ方が、その…一方的だったように思ったので。でも、もう終わったことですから。大丈夫です」
「そうね、シキズキも、夫も守秘義務が絡む仕事をしているから、時々だんまりするのよね…」
「ドース伯爵も、ですか?」
「えぇ、そうよ。彼は宮廷騎士団の、王太子付きだから、王宮にいれば会うこともあるかもしれないわね。何か困ったことがあったら、彼を頼ってね。体力だけは、あるみたいだから」
「そう言っていただけると、嬉しいです。ありがとうございます」
「アユフィーラさん、これは、私のカンだけど…シキズキのこと、もうちょっと、待ってあげて」
「え、待つ、ですか?」
「そう。諦めないで、待っていて。いつまで、とはわからないのだけど…」
リノリラさんは、時々不思議なことを、大木の精霊から告げられるらしい。今は長女のエレノアちゃんの方が、その能力が強いようだ。
そのエレノアちゃんを通じて、最近、不思議なことを告げられた、という。曰く、シキズキの恋が成就するのに、時間がかかる、が、必ず成就する、と。
「シキズキの恋の相手が、アユフィーラさんかどうか、そこまではわからないの。でも、お会いして、私はそうだといいな、って思っているわ。だから、もう少し。もう少し、待っていて」
「はぁ、精霊のお告げですか。わかりました。参考にさせていただきます」
最後に、何か突拍子もないことを聞いてしまった。恋が成就する…か。私では、ありえない。彼は今や、王国の兵器開発の重要人物で、私は帝国の貴族として、跡取り娘として帰らなくてはいけない。
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それでも、先輩の暖かい家族とお会いできて、嬉しかった。その後は、留学時の先輩の話で盛り上がり、昼食を頂いて、そしてまたおしゃべりをして、帰宅した。
シキズキ先輩には、結局、会うことはできなかった。
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