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しおりを挟む―――ええと、確か、王立公園の近くにあるって、聞いたけど…
今日は、休日を利用して、シキズキ先輩の生家を訪問することにした。事前に手紙を書いて、訪問を伝えてある。先輩が帝国に留学中に親しくなった方からの、プレゼントを渡すため…と、わざとらしい理由をつけて。
先輩の生まれた伯爵邸には、今はお姉さんと、その家族が住まれているみたい。お父様は、伯爵位をお姉さんの夫に譲り、引退して領地に住んでいるそうだ。
シキズキ先輩は、ドース伯爵家の嫡男だったのに、伯爵位を継がなかった。魔術師として生きるとしたら、その方が自由だ。彼は、以前からそうしたいと言っていたことを、思い出す。
「あ、ここかな」
王都の中でも、比較的広い敷地に、大きな木がたくさんあるお屋敷だった。訪問を告げると、執事の方が迎えに来てくれて、中を案内してくれる。
屋敷に入る前の中庭で、仲良く遊んでいる子供たちを見かける。
「あっ、お客様だよ!ママ~、きれいなお姉さんが来たよ!」
「ハルマサ!中に入りなさい!ホラ、アキズキも手を洗って!フユキシ、こっちよ!」
元気そうな、女性の声が聞こえてくる。声のする方を見ると、銀色の輝く髪が見えた。ほっそりとした女性は、3人の男の子たちを呼んでいた。あの方が、先輩のお姉さんかもしれない。
「こちらにお入りください」
そうして案内された応接室で待っていると、当主と思われる男性と、先ほどの女性が入って来た。
アユフィーラも席を立ち、挨拶をする。
「はじめまして、アユフィーラ・デズモンドと申します。本日は、お忙しい中訪問させていただき、ありがとうございます」
「こちらこそ、よく来てくださいました。私はこの家の当主をしています、ティード・ローワン・ドースです。こちらは妻の、リノリラです。義弟のシキズキは、すみません。どうやら外出しているようで」
「あ、いえ、突然お邪魔させていただいたので。私は友人に頼まれただけですので…」
やっぱり、本人は留守にしていたみたい。会えるかどうか、わからなかったけど、避けられているのだから仕方ない。
「義弟の話を聞きたいところですが、私もこれから仕事が入っていまして。妻の方が、留学中の義弟のことを聞きたいと言っているので、ゆっくりしてください」
そう言うと、ドース伯爵は席を立って、部屋を出て行った。それと同時に、可愛らしいお子さんたちが、扉から中を伺っている。
「あら。お行儀の悪い子たちで、すみません」
「いえ、私は大丈夫です。可愛らしいお子様たちですね」
「そうなのよ。さ、みんな、ご挨拶して。こちらは、シキズキおじさんのお友達の、アユフィーラ・デズモンドさんですよ」
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