【完結】初恋相手にぞっこんな腹黒エリート魔術師は、ポンコツになって私を困らせる

季邑 えり

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「君は、どうして、そんな服を着て…あれほど、谷間の見える服は、俺の前だけにしろと言っただろう…」

 シキズキは、アユフィーラを連れて、普段から誰もいない資料室に入った。

「ドース部長には、関係ありません…今は」

 学園にいた時の、お付き合いをしていた頃ならともかく。今は何も約束も、関係もない人から、そんなことを言われたくなかった。

 そもそも、彼でなくても、誰かを誘惑しないといけないのだ。自ずとセリアのアドバイスに従った服装をしていた。清楚だけど、ちょっとセクシー。自立した女性でありながらも、どこか、抜けている表情。そうした女性を、小悪魔的、といったかな…今のアユフィーラのテーマであった。

「とにかく、君の服装はハレンチだ。迷惑だ。業務に支障があるから、今後は常にローブを着てくれ」

「ドース部長に命令されることではありません」

 と、話していたところで、後ろから声をかけられた。

「そうだな、シキズキ。今は、デズモンド嬢は俺の部下だからな。必要な指導は、俺を通じて行うから、彼女に直接ではなくて、俺に言ってくれ」

 二人に声をかけたのは、アレクセイ部長だった。

「アレクセイ、俺は…」

「とにかく、彼女をこんなところに引っ張り込んで、二人きりになることも、プレッシャーになる。下手をしたら、パワハラだぞ、お前」

「わかった。言い過ぎた、すまない」

 そう言って、シキズキは頭を下げて、資料室を出て行った。一瞬、アユフィーラを見つめた目は、もっと何かを言いたそうにしていたが。

 落ち着いたところで、アユフィーラはアレクセイ部長に顔を向けた。

「アレクセイ部長、ありがとうございます。助かりました」

「いいってことよ。アユフィーラちゃんは、大切な俺の部下だからな。アイツもおかしいな、普段はあんな注意の仕方をしないんだが…、まぁ、また何かあったら、すぐに言ってくれ」

「はい、お気遣いありがとうございます」

「ただでさえ、魔術師は男性が多いからな。狼の中の子羊ちゃんだから、十分気を付けるに越したことはない」

「気を付けます」

 そうして二人で資料室を出ようとしたところ、私の肩の辺りをみて、アレクセイ部長が声をあげた。

「ん?何だこりゃ?」

 そう言って、私についていた埃を払うように、手をパッ、パッと振った。

「アイツ…こんなもの張らせていたのか。デズモンド嬢、シキズキの使い魔が君についていたが、何か心当たりはあるのか?」

「えっ、使い魔ですか?ドース部長の?」

「そうだ、巧妙に隠れているが、こんなことをできるのは、シキズキぐらいだ。あいつは偵察系の魔術に長けているからな…」

 心当たりと言っても。ありすぎる。

「私が、帝国のスパイと思っているのかもしれませんし…」

「そうか、その可能性もあるか。まぁ、このことについては、俺が直接アイツと話をしておくよ。疑っているなら、申し訳ないな」

「いえ、そんな…。疑われても、仕方ありません。実際、スレイヤール王国から知恵を盗んでいるわけですから」

 その後は穏やかに、私のプレゼンテーションの話になって終わった。アレクセイ部長からも、褒めてもらえたのは、嬉しかった。やはり、研究環境がいいと、結果も違うものになる。

 だけど、シキズキ先輩の使い魔…どうして、私につけていたのか。本当に、スパイと疑われているのか。それとも、私を常に、見張っていたいのか…。でも、なぜ?

 考えても、すぐに答えがでない。そうした場合は、身体を動かすことを優先しよう。頭を切り替えるため、アユフィーラは宮殿にあるジムに、行くことに決めた。

 その背中を、やはり、シキズキの使い魔はひっそりと、眺めていた。

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