【完結】初恋相手にぞっこんな腹黒エリート魔術師は、ポンコツになって私を困らせる

季邑 えり

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 シキズキ先輩の保護者であり、外交官の方と聞いていたので、アユフィーラはソングフィールド候はてっきり壮年の方と思い込んでいた。

 それが、これほどまでに若々しく、魅惑的な瞳をした男性だったとは。つい、驚いてその顔をポーっと見つめてしまった。

「アユ、こっち向いて」

 両手で頬を挟んで、自分の方に顔をむけさせたシキズキは、「俺のことは、先輩呼びなのに、アイツを名前で呼ばないで」と、また呟いていた。

「さ、アユフィーラ嬢、こちらで食事をしよう」

 終始にこやかな笑顔のグレアムは、スマートにアユフィーラを食事の場へ案内した。

「今日は私的な場だから、遠慮しないで欲しい。シキズキの可愛い恋人をもてなすことができて、嬉しいよ」

「ありがとうございます。グレアム様は、サザン帝国に派遣されて長いのでしょうか?」

 前菜と共に、飲み物が提供される。私は発泡水にしておいたが、二人はワインを食前酒として、飲んでいた。

「私は、そうだな、もう5年になるのかな。シキズキも、出会った頃はまだ13歳で、はは、美しい少年だったよ。私も魅了されたものだ」

「まぁ、シキズキ先輩がそんなに小さな頃から、お知り合いなのですか?」

「ああ、あの頃は、本当に天使のような美少年だった。丁寧で、真面目そうな子だったが…今や、その面影もない。生意気なことに、私より背が伸びて、騎士としても訓練しているから、私よりも体力があるだろうな。精力は負けないが」

「そ、そうなんですね…」

 最後の言葉は、スルーしておく。彼より精力がある、だなんて、冗談じゃない。といっても、シキズキ先輩と最後までしたことはないから、男性の精力があるといっても、どれ程のことを言うのかわからないけれど。

でも、美少年だったシキズキ先輩を見てみたい気もする。グレアム様は、さすがに外交官をされていることもあり、話題も豊富だった。

「グレアムさん、頼むから昔のことは、恥ずかしいから止めてください。あと、俺の精力を舐めないでください」

 やっぱり最後の言葉はスルーしよう。恐ろしくて、体験したくない。

「あの、そういえばお二人の噂を聞いたのですが…」

 今のうちに、昼間聞いて気になっていたことを聞くことにした。

「ん?どういった噂かな?」

「はい、お二人がビーエルの間柄として有名だと。金と銀のBL貴公子、と呼ばれているとか…」

 グレアム様は驚いた顔を一瞬して、しかしすぐに表情を作り直し、私を調べるように見つめてきた。

「で、アユフィーラ嬢は、ビーエルが何か、ご存じなのかな?」

「ええ、友人に聞きました。麗しい男性同士の友愛の姿、と」

 ダイレクトに説明するのは、さすがに恥ずかしい。私としては、シキズキ先輩が同性愛もいける、両刀使いだとしても問題ない。むしろ、新しい世界に興味がある。シキズキ先輩は、私とグレアム様の話を、聞きながら黙々と食事をしている。
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