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「で、君は、スレイヤール王国からの留学生か」

 父が、私が友人として紹介したシキズキ先輩に、話しかけた。

「はい、15歳から帝国の学園に、留学して学んでいます」

「そうか、では、3年以上滞在しているのか」

 帝国では、3年以上の滞在歴があれば、移民として正式に滞在することができる。シキズキ先輩がその気になれば、帝国の魔術師団に就職することも、可能だからだ。

「お父様。酔っていますわ、その辺りにしておいてください。先輩が困ります」

 シキズキ先輩が、父に余計なことを言わないうちに、引き離しておかなくては。そう焦れば焦るほど、父はシキズキ先輩に絡み始めた。

父として、娘の男の友人というのは、何か気になったのかもしれない。学年も違うのに、仲良く週末に会う間柄だから、さらに怪しまれている。

「そういえば君は、娘のように魔力だまりに苦しんでいた、と言っていたな」

「はい、私の場合は、13歳ごろまで発熱が続きました。魔力だまりが収まってからは、健康になりましたので、今は魔術研究科だけでなく、騎士科にも所属しています」

「ははは、そうか!君はダブルディグリーか!すごいな!」

「そうですね、できれば二つの卒業証書を得たいと願っています」

 父は、シキズキ先輩は騎士科にも所属していると聞き、大いにご機嫌となった。魔術師は怪しい、という偏見がある。父の年代であれば、それは仕方ない。

「侯爵には、一つお許しをいただきたいことがあります。お話しても、よろしいでしょうか」

「ああ、許しとは?話の内容にもよるが、いいだろう。言ってみなさい」

「はい、実は、アユフィーラ嬢の魔力だまりですが、どうやら私の魔力との親和性が高いので、魔力交換を試したところ、非常に有益な結果を得ました」

「ん?その有益な結果とは、何だ?」

「魔力だまりの解消が、促進されることです。体感することは難しいのですが、私自身は、かなり魔力循環が良くなりました。アユフィーラ嬢にも、適応されると思います。ついては、魔力交換を引き続き行うことの許しをいただければ、と思います」

「…その、魔力交換とは、どうやってやるのか?」

「それは、身体の一部を接触させるだけです。短時間で、可能なことです。ですが、アユフィーラ嬢の状態からすると、毎日、少しだけでも接触がある方が、効果的かと思います」

「アユフィーラ、お前はどう思っているのかね?」

「はい、魔力交換をすると、確かに、身体の調子が良くなります。最近、発作の兆候もなくなりました」

「うむ、そうか。アユフィーラが納得しているのであれば、問題なかろう」

「侯爵、お許しいただき、ありがとうございます」

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