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「アユフィーラさんの研究領域が、医療と聞いたからね。得意なところで研鑽してもらうのが、いいかと思って」
そうは言うけれど、兵力は国家の重要機密だ。私のような他国からの研究員が、第二開発部門で働くことはないだろう。
「それから、ここが宮殿内食堂になる。研究員証を見せれば、つくりたての食事をオーダーできるよ」
「すごい、綺麗なところですね…これで職員食堂とは、信じられない」
宮殿内でも、パティオに面した場所にある職員食堂は、庭からの光をいっぱい取り込み、明るかった。そして、広い。メニューも豊富そうだ。
「ここは、騎士団や、文官など、様々な職種の者が利用するからね。王様が、これまたグルメでね。美味しい食事を食べなければ、作業効率は上がらない、といってね。改装してからは、すごく良くなったな」
ははは、と朗らかに笑うアレクセイ部長は、他部署の人からも挨拶を受けている。人柄の良さが、知られているようだ。
「では、第二開発部門を案内しようか」
…とうとう、会えるかもしれない。彼が、シキズキ先輩が、この第二開発部門にいることは、事前に聞いていた。
「はい、お願いします」
お化粧、大丈夫かな。口紅、落ちていないかな。髪は、綺麗にまかれているかな…
4年前に、あんなにひどく、私は捨てられたのに、また会える。‥‥緊張している。もう4年、でも、まだ、たった4年しか経っていない。
今日、彼の黒曜石の瞳に、4年経った私はどんな風に、映るのだろう。
階段で最上階に進む。ヒール靴が、カツン、カツンと音を響かせる。フロアに到着すると、セキュリティのために部長が手をかざし、掌紋を確認させてからドアを開ける。
「ここのフロアは、機密事項が多いから、入る為には許可されたものしか、ドアを開けることができない。君の場合は…少し難しいかな。ま、今日は挨拶だから」
そう言って、アレクセイ部長はフロアに入っていく。私も、部長の後をついていく。
「ああ、ここにいたか。シキズキ、紹介しよう。新しく研究員としてサザン帝国から派遣された、アユフィーラ・デズモントさんだ。第一開発部門で、1年いることになった。アユフィーラさん、彼は、この第二開発部門の責任者で、シキズキ・ドースだ」
彼は、スタッフである魔術師と何か話しをしていたのを止めて、こちらを向いた。
―――髪が、伸びている。短髪だった髪が、流れるようなストレートの…銀色の長髪になっている。相変わらず、スリムなタイプのスーツを着ている。今日は、ブラックに細いラインが入っていて…すごい。カッコイイ。
彼の存在感は、変わらない。最後に会ったのは、18歳の彼だった。今は、22歳。男らしさに磨きがかかり、少し憂いのある雰囲気は、彼の整った顔を際立たせて、美しかった。
でも、その瞳には、何の感情も表れていない。あれほど、私を見つめる瞳は、いつも欲情とか、愛情とか、優しさを表していたのに。―――今日は、何も表していない。
「ああ、久しぶりですね。ようこそ、スレイヤールへ。デズモント嬢」
彼は、仕事の手を少し休めて、でも手に持つ書類はそのままで、挨拶をしてくれた。でも、握手はしてくれない。
そうは言うけれど、兵力は国家の重要機密だ。私のような他国からの研究員が、第二開発部門で働くことはないだろう。
「それから、ここが宮殿内食堂になる。研究員証を見せれば、つくりたての食事をオーダーできるよ」
「すごい、綺麗なところですね…これで職員食堂とは、信じられない」
宮殿内でも、パティオに面した場所にある職員食堂は、庭からの光をいっぱい取り込み、明るかった。そして、広い。メニューも豊富そうだ。
「ここは、騎士団や、文官など、様々な職種の者が利用するからね。王様が、これまたグルメでね。美味しい食事を食べなければ、作業効率は上がらない、といってね。改装してからは、すごく良くなったな」
ははは、と朗らかに笑うアレクセイ部長は、他部署の人からも挨拶を受けている。人柄の良さが、知られているようだ。
「では、第二開発部門を案内しようか」
…とうとう、会えるかもしれない。彼が、シキズキ先輩が、この第二開発部門にいることは、事前に聞いていた。
「はい、お願いします」
お化粧、大丈夫かな。口紅、落ちていないかな。髪は、綺麗にまかれているかな…
4年前に、あんなにひどく、私は捨てられたのに、また会える。‥‥緊張している。もう4年、でも、まだ、たった4年しか経っていない。
今日、彼の黒曜石の瞳に、4年経った私はどんな風に、映るのだろう。
階段で最上階に進む。ヒール靴が、カツン、カツンと音を響かせる。フロアに到着すると、セキュリティのために部長が手をかざし、掌紋を確認させてからドアを開ける。
「ここのフロアは、機密事項が多いから、入る為には許可されたものしか、ドアを開けることができない。君の場合は…少し難しいかな。ま、今日は挨拶だから」
そう言って、アレクセイ部長はフロアに入っていく。私も、部長の後をついていく。
「ああ、ここにいたか。シキズキ、紹介しよう。新しく研究員としてサザン帝国から派遣された、アユフィーラ・デズモントさんだ。第一開発部門で、1年いることになった。アユフィーラさん、彼は、この第二開発部門の責任者で、シキズキ・ドースだ」
彼は、スタッフである魔術師と何か話しをしていたのを止めて、こちらを向いた。
―――髪が、伸びている。短髪だった髪が、流れるようなストレートの…銀色の長髪になっている。相変わらず、スリムなタイプのスーツを着ている。今日は、ブラックに細いラインが入っていて…すごい。カッコイイ。
彼の存在感は、変わらない。最後に会ったのは、18歳の彼だった。今は、22歳。男らしさに磨きがかかり、少し憂いのある雰囲気は、彼の整った顔を際立たせて、美しかった。
でも、その瞳には、何の感情も表れていない。あれほど、私を見つめる瞳は、いつも欲情とか、愛情とか、優しさを表していたのに。―――今日は、何も表していない。
「ああ、久しぶりですね。ようこそ、スレイヤールへ。デズモント嬢」
彼は、仕事の手を少し休めて、でも手に持つ書類はそのままで、挨拶をしてくれた。でも、握手はしてくれない。
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