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「ああ、君のような女性を見つけることができた。奇跡だ。嬉しくて仕方がない」
「奇跡…あの、先輩、あなたの目には、もしかしたら美醜が反対に映る魔法でもかかっていませんか?」

「恋に落ちるのに、美醜は関係ない。あと俺の知らない間に、俺に魔法をかけることができる奴がいたら、教えてほしいな。というか、君はとても可愛らしい」
「可愛らしい…」

「そうだ、まだ名前を聞いていなかった。君の名前を教えてほしい」
 この人、私の名前も知らないで、一目ぼれして、そしてキスをしたのか。

「私は、アユフィーラ・デズモンドです。魔術研究科の1年です」
「アユフィーラ、アユフィーラ…可愛い名前だな。アユ、と呼んでもいいか?」

「ええと、それは…ちょっと嫌です。先輩とは、何も関係がありませんし」
 心配されているのは嬉しいが、どう考えても先輩と私は釣り合わない。きっと、一目ぼれも時がたてば、気持ちは収まるだろう。

「俺は、君と特別な関係になりたい」
「あの…それは、お断りします」
 あ、落ち込んでいる。きっと、自分が断られると思っていなかったのかな。こんな目立つ人と、特別な関係、なんかになったら、私の穏やかな学園生活が死んでしまう。

「断らないでほしい。あ、今、答えるのが難しいなら、今度でもいい」
「いえ、お断りします」
 はっきり、きっぱりと答える。余計な誤解は与えたくない。

「では、同じ魔術研究科だから…、先輩と、後輩の間柄からスタートしよう」
「はい?まぁ、それはそうですが…」
 学年に1クラスしかない魔術研究科だから、わりと学年を超えた繋がりもあると聞く。今も先輩、と呼んでいるくらいだ。

「よし、なら、明日からランチを一緒に食べよう。食堂で待っている」
「はい?」

 あれ?私、はっきりと断ったはずなのに。ランチを一緒に食べる、なんて、どうしてそうなる?

 断ろうとしたところで、次のクラスの予鈴が鳴る。「すまない、次のクラスは抜けられないから、また後で」と言って、シキズキ先輩は慌てて医務室を出て行った。

 結局、先輩は私のどこに一目ぼれをしたのかもわからず、明日からのランチも約束させられてしまった。私の穏やかな学園ライフが、ガラガラと音を立てて崩れていった。





 ランチを一緒に、とは言ったものの。どこで、とか、何時に、とか。何も約束していなかったから、いつものようにセリアと一緒に、食堂に行った。

 食堂の入り口で、背の高い彼が、腕を組んで、長い脚を組みながら、誰かを待っていた。学園の指定する制服を、スリムタイプにして、ジャケットも細身にして、彼の身体にフィットするようにしてあった。シャツのボタンを二つ、外して少し着崩していたのも、彼のカッコよさを際立たせていた。

 食堂に入る人、人、人。みんながチラッと彼を見ていく。

 とてもではないが、それだけ注目されている彼に話しかけるとか、話しかけられたら死んでしまう。私の穏やかな学園生活が確実に死ぬ。もう既に半分、死にかけているけど。

「セリア、ごめん。食堂に入れない」
「え?どうしたの?」

 そう言って回れ右をしたところで、ガシッと腕を引き寄せられた。
「待っていた。こっちだ」

 有無を言わさず、シキズキ先輩に引っ張って行かれた先には、昨日もお会いしたイザーク先輩が、席をとって待っていた。

「やあ、昨日は大変だったね。もう大丈夫?」

「昨日は大丈夫でしたが、今は大丈夫ではありません」

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