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ようするに、相手を選べない。そして、その相手は…辺境地出身であったり、貴族とは名ばかりの者であったり。時々、外国から参加する人もいるが、将来、帝国に滞在することを約束させられる。
「アユフィーラ、でも、スレイヤールでしょ。先輩に、会ってしまうかもしれないよ」
「そっちが、目的かもしれない。私が選ばれた、最大の理由」
「えっ、それって…」
「だって、彼ほど優秀な、独身の魔術師なんて、スレイヤールにいるのかしら。それに団長も、私と彼が恋人だったこと、知っていたわ」
「帝国も、乙女の古傷を利用するなんて…ひどいわね」
「…まぁ、彼を連れて来い、っていう命令じゃなくて。誰でもいいから、優秀な魔術師、ってなっていたから」
「でも、アユフィーラ。忘れられないんでしょ」
「セリア…そんなこと、ないよ。大丈夫。もう、4年もたっているし、私も大人になったし」
「そうだね、アユフィーラも綺麗になったよね。でも、長期で派遣となると、陰で泣いちゃう人、いるんじゃない?」
「そんなこと、ないよ。だって、声かけられても、きちんとお断りしているし」
「今のアユフィーラなら、スレイヤールでも、モテモテだよ」
「そんなこと…ないよ。未だに私、ぽちゃぽちゃだし」
「それが、いいんじゃないの!スレンダーばっかりが、美人じゃないわよ!アユフィーラには、その立派なお胸もついているし!」
「セリア…それは言わないで」
学園に入学した当時から比べると、10センチも背が伸びた。そして、ぽっちゃりとしていた身体も、程よく健康体になった。近眼だった目も、魔力だまりが解消されるに従って、眼鏡は必要なくなった。もともと真珠のような肌は、今も柔らかい。
働くようになってからは、お化粧もきちんとするようになった。ぽっちゃりとしていた頃に成長した胸は、そのまま残っている。今や、だれもアユフィーラを野暮ったい女性、とは言わない容姿である。むしろ、金茶のゆるやかにウェーブした髪と、空色の瞳、柔らかな雰囲気の美人である。
性格は、優し気な見た目と違って、あまり可愛くない…というのが、親友のセリアの感想だが、それを知る者は少ない。
ようするに、今やアユフィーラは、その容姿と、魔術師としての才能、そして公爵家の一人娘ということから、後継ぎではない貴族の二男、三男から激しくアプローチを受けている。
「とにかく、離れてしまうのは悲しいけど。スレイヤールで、いい男捕まえておいで!」
「そこまでポジティブになれればいいけど。でも、スレイヤールで研究チームに入れるのは、楽しみかな」
「そうね、あそこは制作はイマイチだけど、魔道具の開発力はあるからね…」
「そうなの!あのユニークなアイデア、どうやって開発しているのか、不思議よね」
「ふふ、今朝は真っ青だったから、心配だったけど。その調子なら、大丈夫かな。アユフィーラ、過去にケジメつけるのもそうだけど、何なら仕返ししちゃいなよ!青春を傷つけた、あの男に!」
「へ?仕返し?」
「そうそう!あれだけ派手に、いろいろされたんだから、今度はアユフィーラが、いろいろ派手にやっちゃいな!」
「そんな、どうやって仕返しするのよ…」
「そうね、もう一度、あの男に告白させて、期待させて、でも最後に振っちゃうとか!で、違う男と即結婚!」
「…セリア。‥‥‥出来るかな、私」
「今のアユフィーラなら、大丈夫よ!そうね、男の人を魅了するテクニック、覚えておこう!」
二人で食べるランチは、あっという間に終わった。アユフィーラも、親友と話をしたことで、少し落ち着くことができた。
スレイヤールに行くことも、もう少しポジティブに考えてみよう。あの男と会うのは、怖いけど。でも、吹っ切るためには、いい機会かもしれない。‥‥仕返しなんて、出来るかわからないけれど。
―――アユフィーラの運命が、また回りはじめるまで…あと少し。
「アユフィーラ、でも、スレイヤールでしょ。先輩に、会ってしまうかもしれないよ」
「そっちが、目的かもしれない。私が選ばれた、最大の理由」
「えっ、それって…」
「だって、彼ほど優秀な、独身の魔術師なんて、スレイヤールにいるのかしら。それに団長も、私と彼が恋人だったこと、知っていたわ」
「帝国も、乙女の古傷を利用するなんて…ひどいわね」
「…まぁ、彼を連れて来い、っていう命令じゃなくて。誰でもいいから、優秀な魔術師、ってなっていたから」
「でも、アユフィーラ。忘れられないんでしょ」
「セリア…そんなこと、ないよ。大丈夫。もう、4年もたっているし、私も大人になったし」
「そうだね、アユフィーラも綺麗になったよね。でも、長期で派遣となると、陰で泣いちゃう人、いるんじゃない?」
「そんなこと、ないよ。だって、声かけられても、きちんとお断りしているし」
「今のアユフィーラなら、スレイヤールでも、モテモテだよ」
「そんなこと…ないよ。未だに私、ぽちゃぽちゃだし」
「それが、いいんじゃないの!スレンダーばっかりが、美人じゃないわよ!アユフィーラには、その立派なお胸もついているし!」
「セリア…それは言わないで」
学園に入学した当時から比べると、10センチも背が伸びた。そして、ぽっちゃりとしていた身体も、程よく健康体になった。近眼だった目も、魔力だまりが解消されるに従って、眼鏡は必要なくなった。もともと真珠のような肌は、今も柔らかい。
働くようになってからは、お化粧もきちんとするようになった。ぽっちゃりとしていた頃に成長した胸は、そのまま残っている。今や、だれもアユフィーラを野暮ったい女性、とは言わない容姿である。むしろ、金茶のゆるやかにウェーブした髪と、空色の瞳、柔らかな雰囲気の美人である。
性格は、優し気な見た目と違って、あまり可愛くない…というのが、親友のセリアの感想だが、それを知る者は少ない。
ようするに、今やアユフィーラは、その容姿と、魔術師としての才能、そして公爵家の一人娘ということから、後継ぎではない貴族の二男、三男から激しくアプローチを受けている。
「とにかく、離れてしまうのは悲しいけど。スレイヤールで、いい男捕まえておいで!」
「そこまでポジティブになれればいいけど。でも、スレイヤールで研究チームに入れるのは、楽しみかな」
「そうね、あそこは制作はイマイチだけど、魔道具の開発力はあるからね…」
「そうなの!あのユニークなアイデア、どうやって開発しているのか、不思議よね」
「ふふ、今朝は真っ青だったから、心配だったけど。その調子なら、大丈夫かな。アユフィーラ、過去にケジメつけるのもそうだけど、何なら仕返ししちゃいなよ!青春を傷つけた、あの男に!」
「へ?仕返し?」
「そうそう!あれだけ派手に、いろいろされたんだから、今度はアユフィーラが、いろいろ派手にやっちゃいな!」
「そんな、どうやって仕返しするのよ…」
「そうね、もう一度、あの男に告白させて、期待させて、でも最後に振っちゃうとか!で、違う男と即結婚!」
「…セリア。‥‥‥出来るかな、私」
「今のアユフィーラなら、大丈夫よ!そうね、男の人を魅了するテクニック、覚えておこう!」
二人で食べるランチは、あっという間に終わった。アユフィーラも、親友と話をしたことで、少し落ち着くことができた。
スレイヤールに行くことも、もう少しポジティブに考えてみよう。あの男と会うのは、怖いけど。でも、吹っ切るためには、いい機会かもしれない。‥‥仕返しなんて、出来るかわからないけれど。
―――アユフィーラの運命が、また回りはじめるまで…あと少し。
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