1 / 103
プロローグ
しおりを挟む
訪ねて来た少年は、美しい銀髪と、強い魔力持ちであることを示す黒い瞳をしていた。整った容姿は、まだ幼さを残しているが、将来はかなりの美男子になることが予想される。
グレアム・ソングフィールドは、自分を訪ねて来た少年を快く応接室に迎え入れた。その少年の魔力の強さと、年齢に見合わない高尚な態度に、興味が出た。
「僕はシキズキ・ドースと申します。姉がお世話になりました。こちらは、手紙とお借りしていた宝石です。姉は現在、体調を崩しており、弟の私が代理で届けさせてもらいました」
少年の姉に渡していた宝石をわざわざ、返却に来たと言う。…女性にプレゼントしたものを、返してくるとは。
「シキズキ君か、わざわざ届けてくれて、ありがとう」
「こちらこそ、忙しいところ面談のお時間を下さり、ありがとうございます」
丁寧な言葉遣いに、珍しく輝くような銀髪。整った顔でもあるし、これは好印象を持たれやすい少年だな。
「君は、かなりの魔力持ちだと聞いたけれど。将来は、魔術師を目指すのかな?」
「はい、宮廷魔術師になりたいと、思っています。そのための学校に通いたいと思いますが…」
「…我が国の魔術学校では、君ほどの魔力持ちでは、満足できないかもしれないね」
「師となる方に、弟子入りすることも考えたのですが。なかなか僕の興味のある魔術分野では、難しくて」
悩ましいであろう、才能のある者に共通する、学ぶ場を探している。
「そうだな、魔術師として極めるのであれば、やはりサザン帝国学園の魔術研究科であろうな…」
「はい、そこに行きたい希望はありますが…」
我が国から、サザン帝国に留学するには、国家の推薦状と、莫大な留学資金が必要となる。その二つを、この貧乏伯爵の息子が用意することは、難しいであろう。
「そうか、シキズキ君。君も、私の祖母の残した遺言のことは、聞いているだろう。ドース伯爵家を支援するように、とのことだが、どうだろうか。君が望むのであれば、その魔術師の勉強のための資金と、必要な協力を支援しよう」
「それは!‥‥‥ありがたい話ですが、まずは父と話します」
「ああ、そうしてくれ。我がソングフィールド家としてはドース家を支援したい気持ちに変わりはない。サザン帝国であれば、私も近々、外交官として派遣されることが決まっている。留学の為の、手続きも出来るだろう」
それに将来、有能な魔術師を育成し、今から恩義を売ることが出来るのであれば、ソングフィールド家としてもいい投資となる。
「で、君の興味のある魔術はどういった分野になるのかな」
「は、はい。僕は今、性魔道具を開発したいと思っています」
「は? すまない、もう一度、聞かせてほしい」
「性魔道具、です。セックスやオナニーのための魔道具です」
「そう、か。っは、君の年齢であれば、そう、だな」
少し意外な答えに、驚いてしまった。だが、思春期は性のことに関心が高まる時期だ。彼の年齢を考えれば、わからなくもない。
「ええ、僕は長いこと魔力だまりに苦しんできて、それを解決することができたのは、精通してオナニーが出来るようになったからです。その時、オナホールや、数々の性魔道具を知り、興味を持ちました。更なる開発を重ねて、性の問題に取り組むことができれば、と思っています」
「そうか、確かに、魔力だまりの解決のための、性魔道具か」
意外にも、真面目な答えが返って来た。
「それだけでなく、もっと快感を共有できるような魔道具ですとか、中イキしやすくする媚薬とか、いろいろ開発したいところですね」
「…君の年齢にしては、詳しいね」
「勉強しましたから」
ニコッと笑う顔は、純粋そのものだ。だが、その裏では何を考えているのかわからないような、狡猾さも持ち合わせているようだ。とはいっても、まだ13歳であることを考えれば、将来はもっと違うことに目を向けることもあるだろう。
「とにかく、学校や留学については、ぜひ支援させてほしい。ドース伯爵にも、改めて話をしよう」
「わかりました。そう言ってくださること、感謝します」
終始にこやかに話をすることができた。一般的に気難しい魔術師が多い中、あれだけの魔力を持ち、にこやかな美男子の魔術師がいれば、あの王太子殿下辺りが目をつけそうだな。殿下は有能な人材を駒のように扱うところがある。
「グレアム・ソングフィールド様、お会いできて、その、嬉しかったです」
シキズキは、キラキラとした笑顔で返事をした。
「ああ、前向きに検討してほしい」
「では、失礼します。また、お会いできると嬉しいです」
「そうだな、次回に詳しい取り決めをしよう」
彼の留学話は、この会話から始まった。後に、ソングフィールド家が後ろ盾となり、留学の道が開かれることになった。
その留学先でシキズキは自分が恋に落ちるなど、この時は思いもしなかった。自分の中に渦巻く魔力にまだまだ翻弄され、将来を憂いているただの少年だった。彼が彼女に出会うのはまだ先の話であったが、運命の糸はこの時から、絡み始めていた。
グレアム・ソングフィールドは、自分を訪ねて来た少年を快く応接室に迎え入れた。その少年の魔力の強さと、年齢に見合わない高尚な態度に、興味が出た。
「僕はシキズキ・ドースと申します。姉がお世話になりました。こちらは、手紙とお借りしていた宝石です。姉は現在、体調を崩しており、弟の私が代理で届けさせてもらいました」
少年の姉に渡していた宝石をわざわざ、返却に来たと言う。…女性にプレゼントしたものを、返してくるとは。
「シキズキ君か、わざわざ届けてくれて、ありがとう」
「こちらこそ、忙しいところ面談のお時間を下さり、ありがとうございます」
丁寧な言葉遣いに、珍しく輝くような銀髪。整った顔でもあるし、これは好印象を持たれやすい少年だな。
「君は、かなりの魔力持ちだと聞いたけれど。将来は、魔術師を目指すのかな?」
「はい、宮廷魔術師になりたいと、思っています。そのための学校に通いたいと思いますが…」
「…我が国の魔術学校では、君ほどの魔力持ちでは、満足できないかもしれないね」
「師となる方に、弟子入りすることも考えたのですが。なかなか僕の興味のある魔術分野では、難しくて」
悩ましいであろう、才能のある者に共通する、学ぶ場を探している。
「そうだな、魔術師として極めるのであれば、やはりサザン帝国学園の魔術研究科であろうな…」
「はい、そこに行きたい希望はありますが…」
我が国から、サザン帝国に留学するには、国家の推薦状と、莫大な留学資金が必要となる。その二つを、この貧乏伯爵の息子が用意することは、難しいであろう。
「そうか、シキズキ君。君も、私の祖母の残した遺言のことは、聞いているだろう。ドース伯爵家を支援するように、とのことだが、どうだろうか。君が望むのであれば、その魔術師の勉強のための資金と、必要な協力を支援しよう」
「それは!‥‥‥ありがたい話ですが、まずは父と話します」
「ああ、そうしてくれ。我がソングフィールド家としてはドース家を支援したい気持ちに変わりはない。サザン帝国であれば、私も近々、外交官として派遣されることが決まっている。留学の為の、手続きも出来るだろう」
それに将来、有能な魔術師を育成し、今から恩義を売ることが出来るのであれば、ソングフィールド家としてもいい投資となる。
「で、君の興味のある魔術はどういった分野になるのかな」
「は、はい。僕は今、性魔道具を開発したいと思っています」
「は? すまない、もう一度、聞かせてほしい」
「性魔道具、です。セックスやオナニーのための魔道具です」
「そう、か。っは、君の年齢であれば、そう、だな」
少し意外な答えに、驚いてしまった。だが、思春期は性のことに関心が高まる時期だ。彼の年齢を考えれば、わからなくもない。
「ええ、僕は長いこと魔力だまりに苦しんできて、それを解決することができたのは、精通してオナニーが出来るようになったからです。その時、オナホールや、数々の性魔道具を知り、興味を持ちました。更なる開発を重ねて、性の問題に取り組むことができれば、と思っています」
「そうか、確かに、魔力だまりの解決のための、性魔道具か」
意外にも、真面目な答えが返って来た。
「それだけでなく、もっと快感を共有できるような魔道具ですとか、中イキしやすくする媚薬とか、いろいろ開発したいところですね」
「…君の年齢にしては、詳しいね」
「勉強しましたから」
ニコッと笑う顔は、純粋そのものだ。だが、その裏では何を考えているのかわからないような、狡猾さも持ち合わせているようだ。とはいっても、まだ13歳であることを考えれば、将来はもっと違うことに目を向けることもあるだろう。
「とにかく、学校や留学については、ぜひ支援させてほしい。ドース伯爵にも、改めて話をしよう」
「わかりました。そう言ってくださること、感謝します」
終始にこやかに話をすることができた。一般的に気難しい魔術師が多い中、あれだけの魔力を持ち、にこやかな美男子の魔術師がいれば、あの王太子殿下辺りが目をつけそうだな。殿下は有能な人材を駒のように扱うところがある。
「グレアム・ソングフィールド様、お会いできて、その、嬉しかったです」
シキズキは、キラキラとした笑顔で返事をした。
「ああ、前向きに検討してほしい」
「では、失礼します。また、お会いできると嬉しいです」
「そうだな、次回に詳しい取り決めをしよう」
彼の留学話は、この会話から始まった。後に、ソングフィールド家が後ろ盾となり、留学の道が開かれることになった。
その留学先でシキズキは自分が恋に落ちるなど、この時は思いもしなかった。自分の中に渦巻く魔力にまだまだ翻弄され、将来を憂いているただの少年だった。彼が彼女に出会うのはまだ先の話であったが、運命の糸はこの時から、絡み始めていた。
14
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる