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本編

5.衝撃の告白

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 リーバイは、少し離れた席で、メイティーラ達を眺めていた。

―――メイは、綺麗になった。あれは、昔から僕のものだ。あんな愚図な男には渡さない。

 今日は、パンツを履かない、なんて馬鹿げた命令を彼女にした。それを真面目に守っているのだろう、終始メイは、緊張している感じだった。どうせ、あの愚図な男のことだ。今日のパンツを用意することなんて、できないだろう。

 愛しいメイ。緊張しながら、僕のことを思い出すといい。後で父親のエルドバ伯爵に、今日メイがパンツを履かなかったのは、グレンのせいだと話をすり変えてしまえば、婚約もなくなるだろう。

そうすれば、僕の番だ。既に家族とは話をしてある。2年前は気づくのが遅すぎたが、今回は間違えない。何としても、メイを手に入れてやる。

 リーバイは、二人を見送りながらも、二人で会うのは今日で最後だ、と、黒く微笑んでいた。


◇ ◇ ◇


 ゴウ侯爵家に来るのは、久しぶりだった。広い庭園には、季節ごとに花が植えられていて、いつでも散策することが楽しめる庭だった。

「今日は、街歩きをすることができて、楽しかったです。ありがとうございました」

 庭園の東屋に来て、人目がなくなり、ようやく落ち着くことができた。

「でも、やっぱり人混みは苦手かもしれません」
「・・・そうか」

 ここに来ても、無言になってしまう。風が心地よく吹いていた。

「君に、一つ聞きたいことがあるのだが・・・」

 少し迷ったような目をした後、グレンは質問をした。

「今日、君はスカートの下に、・・・その、何も履いていなかったのは、理由を聞いてもいいかな?」
「―――!!!―――」

――――知られてしまっていた!

「そ、それはどうして・・・」
「その、馬車の中で、見えてしまって」

――――見られていた!

「あの・・・見たのですか?」
「ああ、すまない」

 グレンは、顔を赤くして下を向いてしまった。顔を赤くしたいのは私の方だが、赤くなるより青くなってしまった。

「あの、見せるつもりはなかったのです」

 こうなったら、正直に話すしかない。

「もし、私が履いていないことを、グレン様が察してくださったら、パンツをいただけると」

 言い終わらないうちに、いきなり、ガバッとグレンがメイティーラを抱きしめた。

「君は、本当に、そこまでして・・・」
「あの・・・グレン様」

 グレンは、はぁ、と吐息をつきながら、メイティーラをまっすぐ見つめた。

「君に、今日、渡したいものがある。―――受け取ってもらえると、嬉しい。」

 そうして、グレンは小さな袋にはいった、白いパンツをメイティーラに渡した。

「グレン様!―――そんな、用意してくださったのですか」
「ああ、いつも、口数が少なくて、すまない。さらに、プレゼントを用意したこともなかった」
「グレン様、私、嬉しいです」

 グレンの腕の中で、感極まったメイティーラは、うれし涙が流れた。

「ああ、君にあんなことをさせるほど、悩ませていたなんて、申し訳ない」

 そう言って、グレンはメイティーラの頬に流れた涙を、その唇で拭った。その唇は、頬から、順に下に行き、二人の唇が重なった。

「グレン様・・・嬉しい」

 二人の想いが、初めて重なった。言葉は少ないが、グレンは自分のことを、大切にしてくれている。

「その・・・すぐに履いた方が、君のためのように思うのだが」
「えっ、あ、はい」

 グレンは、メイティーラが既に男性用のパンツを履いていることに、気がついていない。メイティーラは少し考えたが、あることを決意して、すっと立ち上がった。

「グレン様、ちょっと待ってくださいね」

 そう言うと、履いていたパンツをグレンの目の前でするすると脱いだ。脱いだパンツには、ツーっと何か、濡れた後が糸を引いていた。そして、その後で、プレゼントでもらったパンツを履きなおした。

「メ、メイティーラ、今、君が履いていたそれは・・・」
「これは、その・・・グレン様にお渡ししようと思っていた男性用のパンツです。あの、我慢できなくて、これを履いてしまいました。なので、グレン様には、また今度、新しいパンツを用意しますね」
「・・・」

 いつものように「そうか」と言って終わるかと思った会話は、終わらなかった。

「いや、それでいいから、いただくよ」

 そう言うと、メイティーラが握っていた男性用パンツをさっと取り上げた。

「グレン様、ダメです。・・・濡れてしまっています」
「・・・なおさら、いい」

 グレンは手の中にあるパンツに、鼻を近づけて「くんっ」と匂いを嗅いだ。そしてジャケットの内ポケットに、大切そうにしまってしまった。

私のパンツの匂いを嗅ぐなんて、グレンはこんな人だったのだろうか。意外な面をみてしまって驚いたが、さらにグレンは驚くことを言ってきた。

「君に、もう一つ、プレゼントを用意している」

 そう言うと、小さな箱を取り出した。「開けてほしい」というので、メイティーラはその箱をそっと開けた。

「―――!!!―――」

 中には、キラリと光るダイヤモンドのついた、指輪が入っていた。プロポーズに使われる石だ。

「メイティーラ、君のことを、大切に想っている。婚約している間柄だが、自分の口から言いたくてね。―――結婚してほしい」

 下着だけでなく、ダイヤモンドのついた指輪まで用意してくれていた。嬉しさで、また涙が流れた。

「はい、私も、お慕いしております。―――結婚、お受けいたします」

 メイティーラは、うるんだ目でグレンを見上げた。グレンは、その顎を上げると、彼にしては珍しくお願いを口にした。

「メイティーラ、もっとキスをしても、いいだろうか」
「はい」

 恥ずかしかったが、既にグレンの顔が近くにあった。彼は、メイティーラの下唇を挟み、そして上唇を挟むように口づけてきた。唇だけでなく、顔中にキスをしてくる。

 チュッ、チュッ、―――チュッ、チュッ

「メイティーラ、もう少し、深くキスをしても、いいだろうか」

 深く?意味がわからなかったが、「はい」と返事をしたとたん、グレンの下が口の中に入って来た。驚いて顔を話そうとしたが、既に頭の後ろを抑えられていて、動かすことができなかった。

 クチュッ、グチュッ  クチュ

 音もだんだんと、深くなる。彼の舌は、歯列を舐め、頬の内側を舐め、そしてメイティーラの舌を吸った。

「んん、んっ、―――ううん」

 最後にチュパッと音をたてて、グレンは唇を離した。はぁ、はぁ、とメイティーラは息が上がっていた。

「ああ、次からは、鼻で息をするように」

 細い目を、さらに細くして微笑んだグレンは、「ではもう一度」というと、深いキスをするのであった。

二人は日が暮れるまで東屋で見つめあい、そして唇を時折、深く合わせお互いを貪ったのであった。
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