19 / 20
エピローグ
番外編:結婚式の後で2
しおりを挟む「いや……結婚したんだなぁって」
「うん?」
「玲奈が、僕に甘えてくれた」
嬉しくてたまらない――そんな顔をした哲司は、玲奈を引き寄せる。
「どうやら僕は、可愛い妻が喜んでいる姿を見るのが、好きみたいだ」
「そ、そう?」
「ああ、それも僕がしたことで喜んでもらえると、もっと嬉しい」
あまったるい声を出すとくすくすと笑いながら、哲司は玲奈の顔にかかる髪を払った。
「だから、もっと僕に甘えるように」
熱い唇が額に当たる。そういえば今日は、何度も彼のキスを額で受け止めていた。
「そんなに口づけされると、ふやけちゃいそう」
するとキスを止めて、哲司にしては珍しく下から見上げるように玲奈の瞳を覗き込んだ。
「溶かしているんだけどな」
彼の方が年上なのに、時々とても可愛らしく見える瞬間がある。今がそう。
今度は玲奈が彼の顔にかかった前髪を払い、秀でた額を露わにする。お返しとばかりに玲奈もチュッとキスをした。
「だったら私も、哲司さんを溶かしたい」
視線が絡むと、どちらからと言わず笑いが漏れ始める。二人で見つめ合い、くすくすと笑っていると幸せな気持ちでいっぱいになった。
「ふつつかな嫁ですが、よろしくお願いします」
「こちらこそ。ふつつかな夫ですが」
今さらかな、と思わなくもないけれどお互いに挨拶を交わす。夫婦となって初めての夜。玲奈は哲司の腕の中に囲われると、疲れを覚えながらも彼の愛撫を受け入れ始めた。次第に荒い息が交差する。
「玲奈、今夜は中にだすよ」
「……っ、うん」
二人で話し合って決めていた。結婚式が終わったら、いつでも子どもを迎える準備をしていこうと。
頷いた途端、嬉しそうに口角を上げた哲司は、これまでで最短ではないかと思うほどの速さで熱を放出した。いくら何も隔てずにするのが初めてといっても、早すぎるのでは?
「……」
「……」
互いに見つめ合い、またくすりと笑い合う。どうやら、考えているのは同じことのようだ。
「玲奈の中が気持ち良すぎるからだ」
「そんなこと言って……童貞じゃあるまいし」
「言ったな?」
まだ体内に残る彼の一部が、再び硬さを取り戻していく。今夜は疲れていたから、すぐに終わると思っていたけれど。……どうやら、彼のやる気スイッチを押してしまったようだ。
でも……うん。今夜はなんといっても『初夜』なので。
その後、「お風呂に入りたい」と呟いたためにバスルームに連れて行かれ、そこでも嬌声を上げることを——玲奈はまだ知らない。
(おわり)
0
お気に入りに追加
441
あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり


王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている
と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。