極上の一夜から始まるCEOの執着愛からは、逃げきれない

季邑 えり

文字の大きさ
上 下
18 / 20
エピローグ

番外編:結婚式の後で

しおりを挟む

 勝堂コーポレーションの総力を上げた結婚式が終わり――玲奈はクタクタになっていた。

 二次会では哲司が玲奈を追いかけるため、ヨーロッパを巡る旅をした話が披露され盛り上がった。いかに玲奈が逃げたのか、それを哲司がどうやって捕まえたのか。最後のドバイでは哲司が間違えてアブダビに行ったことなど、面白く紹介されていた。

 白いワンピースに白のパンプス。花嫁らしい服を着ていた玲奈は、結婚式に関する全てのイベントが終わってホテルにたどり着くと――ベッドに飛び込んだ。

「哲司さん、私もう……着替えられない」
「今夜は何も着ないで大丈夫だよ」
「そんな元気ない」

 朝から和装の準備で大変だった。着物は好きだけど、今日は緊張していたし、本格的な打掛は重たかった。白無垢で挙式をし、色打掛で披露宴、途中でふんわりドレスに着替えてお見送りをし、二次会には白いワンピースを着た。

 どれも最高級品だったに違いない。この日のために誂えたものだった。……残念ながら、記憶が曖昧なので後から写真で見直そう。

「先に写真を撮っておいて良かった……こんなにも緊張すると思わなかった」
「人が多かったからね。お疲れ様」
「ほんと、もうダメ」

 まだメイクも落としていない。今夜はいわゆる『初夜』だけど、そんなことをする元気がない。

「お風呂入りたい」
「お湯の用意ならできているよ」

 花嫁と違って花婿の着替えは楽そうだった。和装も素敵だったし、タキシードは着慣れていた。背も高くモデルのような哲司だから、何を着てもカッコいい。

 そんな人が自分の夫になったなんて、やっぱり信じられない。

「……足揉んで欲しい」
「喜んで」

 で、そんな高貴な人に足を揉んでもらうなんて、なんて贅沢なのだろう。

 哲司はいそいそとベッドに近寄ると、玲奈のふくらはぎを優しく揉み始めた。

「もうちょっと強く」
「こうかな」
「うん。気持ちいい」

 血流が流れ始め生き返るようだ。足の裏側まで、力を入れてマッサージしてくれる。なんていい夫なのだろう。

「ありがとう、哲司さん……ほんと、気持ちいい」
「腰もマッサージしようか?」
「……うん」

 うつ伏せに寝ている身体の、腰のあたりを指圧する。二本の親指がいい仕事をしている。背骨に添ってだんだんと上を押し、最後に肩甲骨の付け根をぐっと押し込んだ。

「っ、あっ、……あぁ……気持ちいい、そこ」
「なんか複雑だな」
「……どうして?」
「……」

 玲奈の疑問には答えないで、哲司はひたすら奉仕するように指圧する。身体の凝りがほぐれて来たところで、玲奈は「ありがとう」と伝えながら身体を起こす。

「哲司さん?」

 彼も疲れているのに、シャツを腕まくりしてマッサージをしてくれた。お風呂の用意もしてくれている。ベッドの端に腰かけている彼の横に、玲奈も腰かけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にエタニティの小説・漫画・アニメを1話以上レンタルしている と、エタニティのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。