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第二章

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 翌日、三人で昨日の屋敷に赴くと黒装束の男が立っていた。昨日は気配を消していたが、今日は堂々とその姿を表している。

「で、残りの資金は持ってきたか」

「あぁ、この通りだ。だが、まずはクローディアの身柄をこちらに渡してもらう方が先だ」

 そう言いながら公爵閣下は、カバンに入れた九億ルータルもの現金を見せつけた。奥の現金も本物であることを証明すると、それを黒装束の男の目の前に置く。

「そうだな、今連れてきてやるから待っていろ」

 黒装束の男が外に出ようとしたところで閣下が話しかけた。

「クローディアともう一人、一緒に攫われた女性も一緒か?」

 閣下が聞くと、黒装束の男が答える。

「護衛の女がいたが、俺たちはご令嬢だけを連れてきた。護衛の女も、ということなら別の話だ」

 その男の言葉に、思わずぐっとなってしまう。護衛の女、それはクローディアのことであろう。彼女は果たして無事なのだろうか。心配し始めると尽きないが、今は本物のクローディアかルフィナ嬢を待つしかない。

 両腕を縛られたルフィナ嬢は、疲れた顔をしていた。髪は解け艶がない。どれだけ怖い目にあってきたと言うのか。

「金と交換だ」

「わかった、いいだろう」

 そうして、ルフィナ嬢をクローディアとして受け取ると同時に男にカバンを渡す。男はカバンを受け取ると、スッとその姿を消した。





「ルフィナ嬢、やはりあなたがクローディアと間違われていたのか」

 彼女の縛られている縄を解きながら、俺はルフィナ嬢に問いかけた。

「あのっ、お姉さまからそうしなさい、と言われました。ほ、本来なら私などではなく、お姉さまがっ、で、でも。足手まといになるので、先に行くように、と言われました。申し訳ありません」

「いや、クローディアならばそう言うだろうと予測していたよ。気を悪くしなくてもいい」

 ルフィナ嬢は今にも泣きだしそうな顔で、それでもお姉さまから昨夜渡された手紙です、と言って自由になった手で手紙取り出し閣下に手渡した。

「なにっ、クローディアからの手紙か? で、アイツは何をしているんだ?」

「は、はい。何でも、人身売買組織が絡んでいるからと言っていました。あ、あの、でも! やっぱり危険なのでお願いします、どなたかをあの屋敷へ送ってください」

「ルフィナ嬢、もうその手配は出来ている。今から私たちも行くところだ、ただ、確認のために申し訳ないが一緒に来て欲しい」

「は、はいっ、それはもちろん、大丈夫ですっ。お姉さまは、今日の午後に組織の人たちが来るから、それまでに逃げるようにと言っていました」

 やはりクローディアは、自分で解決しようと動いているようだった。彼女は手紙の中に、誘拐犯の人数と特徴、さらには人身売買組織が午後に来ることを記していた。

 この生きた情報を逃すわけにはいかない。俺は急いで騎士団に走り、クローディアからの情報を伝える。本心としては一刻も早くクローディアを救いに向かいたい。だが、これは組織を一網打尽にするチャンスでもある。

 この日、午後までの時間をこんなにも長く感じたことはなかった。


 *****

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