婚約破棄はまだ早い?男装令嬢、でも乙女!それは密かな二重婚約 〜幼馴染の純情騎士も、腹黒な美形商人も、どっちも素敵で選べませんっ!~

季邑 えり

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第二章

2-6

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 ガチャリと扉が開き、ドカドカと男たちが入ってくる足音が聞こえた。

 マズイ、まだ縄が解けていない。仕方ない、様子を見なきゃ……

 床に横たわったまま、足音を数える。どうやら三人の男がいるようだ。

「おいっ! どっちの女が公爵の娘だ?」

「それを言われても、俺たちも知らねぇ。二人いたから、どっちかだろうと思って連れてきただけだ」

 男たちは私とルフィナ嬢の二人を見て迷っていた。

「でも兄貴、こっちの女の方がいいドレスを着ていますぜ。こっちの女はズボンを履いているから、護衛じゃないかな」

「そうだな、おい、公爵の娘は丁重に扱えと言われているからな」

 その言葉を聞き私はルフィナ嬢の方を見ると、酷く泣いていた彼女は男たちの姿を見てさらに「ひっ」と悲鳴を上げて気を失っている。それはそれで心配だけど、今は彼女が公爵令嬢と勘違いされている方がいいかもしれない。

「お、お嬢さまに手を出すな……」

 私は唸るような声を出して、男たちを睨む。

「兄貴、やっぱりこっちのドレスの女ですぜ、公爵の娘は」

「おい、この女からはたんまり金がとれるらしいから、そうだな、ベッドにでも寝かせておけ」

 そう言うと、ルフィナ嬢を部屋の中にあるベッドへ横たわらせる。どうやら私と勘違いしているおかげか、彼女は乱暴にされる様子がない。今は気を失っているが、その方が却って安心できる。

「こっちの護衛の女はどうしやすか、兄貴、えへへ……」

 男たちはまるで私を獲物の如く見ている。三人の中でも兄貴、と言われている人物が私をじろりと見た。

「へぇ、よく見るとこっちもいい女だな。身体つきもいいから、アッチも良く締まりそうだな」

「じゃ、じゃあ兄貴! 俺たちで味見してもいいかな?」

 男たちは私が縛られているのを見て、何もできないと安心しているのか、厭らしい目つきで全身を嬲るように見てきた。

「早く済ませるぞ、女には手を出すなって、アイツが言っていたからな……。バレると厄介だ」

 そう言いながら、兄貴と呼ばれた一番体格のいい男は私の顎をもつと、顔を近づけた。はぁ、とかかる男の口の匂いが臭い。

「へへっ、可愛い顔してやがる。下を使うと売り物に傷がついちまうから、今は口だけで我慢だな」

 そう言うと、私の口の中に指を入れて無理やり広げてくる。

「いいか、噛んだりしたら、こっちのお嬢さまを襲うからな」

 カチャカチャと男がズボンを下ろし始める。女であれば見境がないのか、すでに男の下半身には滾ったモノがあった。

「へへっ、こんな綺麗な女の口に突っ込むなんて、もうすぐに出ちまいそうだ」

 二人の男に身体を押さえられているので、さすがに身動きがとれない。一人は私の胸をまさぐるように服の上から触りはじめている。

 まずい、このままこの男のモノを口に含まないといけないのだろうか。だが、そうしなければルフィナ嬢に危害を加えられてもいけない。手を使うことが出来さえすれば、密かに仕込んである毒針も使えるのに。

 すぐにでも突っ込まれそうになるところで、また扉がバタン、と開かれた。

「おいっ、お前達何をしている? 女たちに手を出すな、と言っておいただろう」

 その声を聞いた男たちは、一瞬ビクッと身体を縮こませた。

「へ、へいっ、すんませんっ、この女は護衛の女だったんで、つい。あ、でもこっちのお嬢さまの方には手をだしてませんぜ」

 兄貴、と呼ばれていた男は黒装束の男に頭を下げて謝っている。

「お前、その汚いものをしまっておけ。仕事が上手くいけば、いくらでも後で遊べるからな。今はこっちの女を地下に連れて行って、他の女たちと同じところに入れておけ。こっちのお嬢さまは、身代金をたんまりとってからだ。それまでは絶対に手をだすな。いいな」

 そう言うと黒装束の男はベッドの上で気を失っているルフィナ嬢を見ると、その髪からブルーラベンダー色の髪飾りを取り外した。

「やっぱり金持ちのお嬢さまは身に着ける物が違うな。よし、お前達のうち二人は、この扉の外で見張っていろ」

「「へいっ」」

 私を押さえつけていた二人は飛び出すようにして部屋の外に出ると、黒装束の男は私の方を見た。

「お前、いい顔をしているな。粗末な服を着ているが、お前はただの護衛か?」

「お、お嬢さまに手をだすなっ」

 今日はお忍びだったために、平民の着る服にしておいてよかった。このまま護衛の振りをしておけば、少なくともルフィナ嬢を守ることは出来そうだ。それに、男が話していた「他の女たち」のことも気になる。

「そうだな、それはお前の態度次第だな」

 そう言うと、黒装束の男は拳を握って私の鳩尾のところをガツッと一発殴った。

「うぐっ」

 痛みで目の前が白くなり、思わず胃液を吐きそうになる。悶える私を見た男は「連れていけ」と言って最後の一人に私を担がせた。

 殴られた痛みと、乱暴に米俵を持つように肩に担がれた私はその揺れでまた気持ちが悪くなる。こいつら、絶対に許さない。後で必ず痛い目に合わせてやると、私は心に誓った。


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