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第一章

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「ねぇ、レーヴァン。やっぱり他の人と手合わせしたい。卒業前に、もう少し技術を上げておきたいの」

 少し口をとがらせて伝えると、レーヴァンは眉根を寄せながら振り返った。

「クローディア。それなら、俺から一本とってからだと言っただろう」

 むにゅっと口の両端をつままれると、アヒル口になってしまう。

「んん、わ、わかった。じゃ、どんな手を使ってもいいから、一本とれればいいよね」

「とれれば、な」

 私の口で遊んだレーヴァンは、満足したのか口の端をくっと上げて自信満々に笑っている。

 休暇前となった週末、どうしてもレーヴァンから一本とって、レオンと手合わせがしてみたい。
 卒業したら、そんな機会はめったにない。

 仕方ないなと言いながらもレーヴァンは、刃をつぶした剣を持ってくると言って部屋を出ていった。彼は今回も余裕だと思っているのだろう。

 そうであれば何かしらの作戦が必要だ。

 今回、嫌がるレオンを何とか説得して鍛錬場に呼んでいる。
 後輩も一緒に連れてきてほしい、と伝えておいたからギャラリーは十分いるだろう。

 これから行うことを考えると、思わず汗が一筋、背中に流れる。
 でもこの機会を逃せばもう、レーヴァンから一本とれることもないだろう。

 今日こそは、どれだけ卑怯と言われても今日こそは一本とる。

 覚悟を決めて、私は用意してきたブラウスに着替え鍛錬用のズボンを履いた。
 今回は胸当てを外しておく。私の作戦には必要だからだ。

 レーヴァンは、手合わせをしていても私が傷つかないように注意している。
 いくら遠慮しないでと言っても、私が血を流すことがないよう気を付けている。

 それが彼の盲点になるはずだ。

 レーヴァンも着替えて鍛錬場にやって来るとレオンや後輩達がいるのを見て、少し驚いた顔をした。
 だが直ぐにいつものように真面目な顔に戻る。

「レーヴァン、今日こそは貴方から一本とるわ!」

「クローディア……では、そちらに立ちなさい」

 鍛錬場の中央に行き、長剣を持って構える。私は自分専用に作成した細く長いレイピアを持った。
 どうしても筋力の違いがあるため、普通の長剣を持つと動きが鈍くなる。

「よろしくお願いします!」

 指導官であるレーヴァンに挨拶をすると、すぐに審判役のレオンが号令をかけた。

「はじめっ」

 どちらかが「まいった」と言うか、剣を手放すなど攻撃不可能にさせることができれば勝ちだ。

 じり、じりと構えながら相手の動きを見る。これまでも、私から仕掛けることでレーヴァンの剣を取ろうとして、反対に剣をはじかれることが多かった。

 私は右にゆっくりと動く。レーヴァンは私の動きを注意深く観察していた。

 どう比べても非力な私が彼に勝つとしたら、油断させるしかない。今回はその隙をつくるために作戦を考えていた。

「レ、レーヴァン!きゃぁぁ!」

 可愛らしく叫んで私はしゃがみ込むと、思った通りレーヴァンは焦って私に近づいてきた。

「ど、どうしたっ、クローディア?」

 よしっ、十分に彼が間合いに入ってきたことを指の間から確認すると、立ち上がりながら私は彼に切りかかる。

 ガキンッと剣と剣のぶつかり合う音がする。

「その手に、のるかっ」

 私の渾身の一撃をレーヴァンは寸でのところで受け流して後ろに下がった。

「クローディアっ、卑怯だぞっ!」

「どんな手でもいいって、いったでしょっ、覚悟っ!」

 私は彼が剣を構えなおすその前に、一気に攻める。ここまでは予想通りの流れだ。
 細身の剣を素早く打ち込むが、彼はその全てを受け止める。

 息が上がるほど打ち込んでも、彼に傷一つつけることができない。
 こうなると……もう一つ、卑怯な技を使うしかない。

 私は一旦後ろに下がると、はぁ、はぁと息を整えた。

「どうした、クローディア。もう息が上がったのか? では、こちらから行くぞっ」

 そういうと、彼は私から剣を奪うために大きく踏み込んできた。よしっ、この時を待っていた!

 私は足を使い、ざっと砂ぼこりを立てる。一旦剣を片手でもつと、空いた左手で私は自分のブラウスを引き裂いた。

「うわっ!」

 レーヴァンは目を見開いて、私のポロリとでた片方の乳にくぎ付けとなった。この時だ!

 私は剣を下から振り上げて、レーヴァンの喉を狙う。剣先を彼の喉元に当てると動きを止めた。

 はぁ、はぁ、はぁ……

 荒い息遣いしか聞こえない。その時間は一瞬だったけれど、とても長く感じられた。
 私は片方のおっぱいをポロリと出したあられもない姿で、レーヴァンに剣を向けている。

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