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第二章
2-2
しおりを挟む「ユウ君。言われた通りにやってみたけど、返って裏目に出たよ、どうしよう、って、どうしようもないけど」
しばらく臥せっていたけれど、嘆いていても仕方がない。またユウ君、ユゥベール第二王子にアトリエに招待された私は、念のためにウィルストン殿下に知らせた上でモデルをするために王宮に来ていた。
「そっか、なんていうか、リアリムってドジっ娘だね」
シャカシャカとキャンパスに色を乗せながら話すユウ君は、どことなく他人事のように話を聞いている。
「ちょっと、ユウ君のアドバイスがあったから、誘ってみたんだよ。でも、決定打になるはずが、反対に逃げられないように抑えられたっていうか、ヤられ損って言うか、」
「へっ? 兄上との閨、気持ち良くなかったの? おかしいなぁ、王太子ルートは、かなり気持ちイイはずだけどなぁ、」
「もうっ、またゲームの話? 私にしてみると、現実なんだから、もうちょっと、真面目に聞いて!」
「ははっ、ゴメンゴメン。聞いているよ、リアリムの好きな騎士様が、実は王子様だったってことでしょ」
あけすけな話が出来るのは助かるけど、もうちょっと親身になって欲しい。そりゃ、男と女の違いはあるかもしれないけど。
「ほんと、騙された感じがして、なんかこう、婚約に納得できないっていうか。もう、宣誓書に署名しているから、進めないといけないのだけど、気持ちが、追いつかなくて」
今日もニーハイソックスにホットパンツ。三角座りだから、楽な体勢ではあるけれど、ずっと続けているとやっぱり疲れてくる。
「兄上もなぁ~、やることが黒いって言うか。それだけリアを捕まえたくて必死なんだろうけどね」
「必死、かぁ~。なんで私なんかにロックオンしているんだろう。平凡子なのに」
「いやいや、リアは平凡でも何でもないよ。すっげぇ可愛いって自覚、ないよね~。まぁそれがヒロインっぽいっちゃぽいけど」
「もうっ、またヒロインって。ほんと、ゲームみたいにリセットできる人生なら、もう確実にリセットボタンを押してるよ、」
はあ~っと、またため息が出てしまう。大好きなウィルティム様が、まさかウィルストン殿下だったなんて。好きな人と婚約、そして結婚できるのは嬉しいし、そりゃ、エッチもすっごく良かった。でもね、やっぱり騙されていた感じがして、モヤモヤしている。
「でもリア、他の攻略対象からのアプローチはないの? そっちのスチルもみたいんだよなぁ~」
「え? 何言ってるの? 他のって、お兄様とか、チャーリー様とかってこと? ないない! な~んにも、ない」
「ふーん、そうなんだ、おかしいなぁ、結構ゆるゲーだったから、ヒロインが動かないとアプローチをガンガンしてくるハズなのに、なぁ、」
絵筆を置いて、ちょっと考えるユウ君。お願いだから、絵に集中しよう、ね。
「もうっ、ユウ君。私の悩みは第一王子なの。このままだと、私が王子妃になっちゃう、って、もう遅いか」
また、ため息がでちゃう。さっきから、何度目だろう。
「ふ~ん、そんなに嫌なら、僕がリアにプロポーズしよっか?」
ははっと言って笑うユウ君。でも、その後ろにいる人を見て、私は思わず「ひっ」っと声にならない悲鳴を挙げた。
「ユ、ユウ君、う、後ろ、」
今度は絵を描くことに集中し始めたから、後ろの入り口から入って来たウィルストン殿下に気が付いていない。
「くくっ、リアが僕のお嫁さんになるとかって、ウケるぅ~」
ユウ君、冗談半分だろうけど、それを冗談に受け取らない人が後ろにいますっ! そして黒いですっ!
「ユゥベール、面白い話だな。俺の婚約者を前にして、いい冗談だ」
「ひっ」
今度はユウ君が悲鳴を挙げた。怒気を持った視線でユウ君を射抜くウィルストン殿下は、冗談じゃないくらいに怖い。
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