上 下
33 / 61
第二章

2-2

しおりを挟む
 
「ユウ君。言われた通りにやってみたけど、返って裏目に出たよ、どうしよう、って、どうしようもないけど」

 しばらく臥せっていたけれど、嘆いていても仕方がない。またユウ君、ユゥベール第二王子にアトリエに招待された私は、念のためにウィルストン殿下に知らせた上でモデルをするために王宮に来ていた。

「そっか、なんていうか、リアリムってドジっ娘だね」

 シャカシャカとキャンパスに色を乗せながら話すユウ君は、どことなく他人事のように話を聞いている。

「ちょっと、ユウ君のアドバイスがあったから、誘ってみたんだよ。でも、決定打になるはずが、反対に逃げられないように抑えられたっていうか、ヤられ損って言うか、」

「へっ? 兄上との閨、気持ち良くなかったの? おかしいなぁ、王太子ルートは、かなり気持ちイイはずだけどなぁ、」

「もうっ、またゲームの話? 私にしてみると、現実なんだから、もうちょっと、真面目に聞いて!」

「ははっ、ゴメンゴメン。聞いているよ、リアリムの好きな騎士様が、実は王子様だったってことでしょ」

 あけすけな話が出来るのは助かるけど、もうちょっと親身になって欲しい。そりゃ、男と女の違いはあるかもしれないけど。

「ほんと、騙された感じがして、なんかこう、婚約に納得できないっていうか。もう、宣誓書に署名しているから、進めないといけないのだけど、気持ちが、追いつかなくて」

 今日もニーハイソックスにホットパンツ。三角座りだから、楽な体勢ではあるけれど、ずっと続けているとやっぱり疲れてくる。

「兄上もなぁ~、やることが黒いって言うか。それだけリアを捕まえたくて必死なんだろうけどね」

「必死、かぁ~。なんで私なんかにロックオンしているんだろう。平凡子なのに」

「いやいや、リアは平凡でも何でもないよ。すっげぇ可愛いって自覚、ないよね~。まぁそれがヒロインっぽいっちゃぽいけど」

「もうっ、またヒロインって。ほんと、ゲームみたいにリセットできる人生なら、もう確実にリセットボタンを押してるよ、」

 はあ~っと、またため息が出てしまう。大好きなウィルティム様が、まさかウィルストン殿下だったなんて。好きな人と婚約、そして結婚できるのは嬉しいし、そりゃ、エッチもすっごく良かった。でもね、やっぱり騙されていた感じがして、モヤモヤしている。

「でもリア、他の攻略対象からのアプローチはないの? そっちのスチルもみたいんだよなぁ~」

「え? 何言ってるの? 他のって、お兄様とか、チャーリー様とかってこと? ないない! な~んにも、ない」

「ふーん、そうなんだ、おかしいなぁ、結構ゆるゲーだったから、ヒロインが動かないとアプローチをガンガンしてくるハズなのに、なぁ、」

 絵筆を置いて、ちょっと考えるユウ君。お願いだから、絵に集中しよう、ね。

「もうっ、ユウ君。私の悩みは第一王子なの。このままだと、私が王子妃になっちゃう、って、もう遅いか」

 また、ため息がでちゃう。さっきから、何度目だろう。

「ふ~ん、そんなに嫌なら、僕がリアにプロポーズしよっか?」

 ははっと言って笑うユウ君。でも、その後ろにいる人を見て、私は思わず「ひっ」っと声にならない悲鳴を挙げた。

「ユ、ユウ君、う、後ろ、」

 今度は絵を描くことに集中し始めたから、後ろの入り口から入って来たウィルストン殿下に気が付いていない。

「くくっ、リアが僕のお嫁さんになるとかって、ウケるぅ~」

 ユウ君、冗談半分だろうけど、それを冗談に受け取らない人が後ろにいますっ! そして黒いですっ!

「ユゥベール、面白い話だな。俺の婚約者を前にして、いい冗談だ」

「ひっ」

 今度はユウ君が悲鳴を挙げた。怒気を持った視線でユウ君を射抜くウィルストン殿下は、冗談じゃないくらいに怖い。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

闇黒の悪役令嬢は溺愛される

葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。 今は二度目の人生だ。 十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。 記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。 前世の仲間と、冒険の日々を送ろう! 婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。 だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!? 悪役令嬢、溺愛物語。 ☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓
恋愛
旧題:悪役令嬢に転生するも魔法を使えることの方が嬉しかったから自由に楽しんでいると、王子に溺愛されました  乙女ゲームの悪役令嬢リリアンに転生していた私は、転生もそうだけどゲームが始まる数年前で子供の姿となっていることに驚いていた。  これから頑張れば悪役令嬢と呼ばれなくなるのかもしれないけど、それよりもイメージすることで体内に宿る魔力を消費して様々なことができる魔法が使えることの方が嬉しい。  もうゲーム通りになるのなら仕方がないと考えた私は、レックス王子から婚約破棄を受けて没落するまで自由に楽しく生きようとしていた。  魔法ばかり使っていると魔力を使い過ぎて何度か倒れてしまい、そのたびにレックス王子が心配して数年後、ようやくヒロインのカレンが登場する。  私は公爵令嬢も今年までかと考えていたのに、レックス殿下はカレンに興味がなさそうで、常に私に構う日々が続いていた。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...