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第一章
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しおりを挟む「え? 売れ残ったら僕が貰うし、それに、多分大丈夫だよ。ヒロインだからさ、実はリアリムはモテモテなんじゃない?」
「そ、そうかなぁ、普段は、声なんてかからないよ」
「それは、多分、そのイザベラって人の腰ぎんちゃくだからだよ。いいも悪いも、イザベラが邪魔している」
ドキッとしてしまう。確かに、どんな夜会でもイザベラ様の後ろにいたから、ダンスとかにも誘われにくかった。
「と・に・か・く。兄上と結婚したくないんだろ? で、その騎士様が好きなんだろ? いいじゃん、転生前にも付き合っていた奴いたから経験したことあるよね? もう捨てちゃいな!」
何か、ゆう君、キャラがチャラくなっていないか?
「えぇぇ、でも、うーん、」
ニホンのゆるゆるな純潔意識と違って、ここでは貴族令嬢の乙女の価値は高い。そんなに簡単に捨てていい物かと考えてしまう。
「何なら、僕が相手しようか? って、そうすると僕と結婚ってなりそうだけど」
「それは、もっと嫌。初めてならウィルティム様がいい」
「じゃ、決まり。ウジウジしないで、決めちゃいなよ。ぱぱっと済ませれば、もう悩むこともないし」
ユウ君は軽く言うけれど、でも、確かにいい方法かもしれない。
この世界の人よりは純潔にこだわりはないし、っていうかウィルティム様に貰って欲しい。
結婚出来たら一番だけど、貴族じゃない彼とは難しい。
でも、そっか。ウィルティム様にお願いして、思い出にしてこの恋を終わらせるのも一つかもしれない。
ゆう君の言う通り、一発やってしまおうか。
私は毒されるように、ユウ君からの提案を受け入れようとしていた。
「でも、私から誘うなんて、恥ずかしすぎて無理」
ニホンであれば、それらしい雰囲気の場所に行けば、なんとなく誘えそうだけど。この世界ではそんな雰囲気になれそうなところが思い当たらない。
「酒飲むところ、とかは? 僕も一度、連れられて行ったことがあるよ」
さすがにユウ君は社会勉強として、娼館とか酒場にも行ったことがあるみたいだ。
お酒を飲めば気も大きくなるし、この私のハレンチなお誘いにも頷きやすくなるだろう。
もちろん、私もお酒の力を借りれば、何とかお誘いできるかもしれない。
断られたら、それもお酒で紛らわせれば。うん。よし! 何とかなるだろう!
「わかった、今度のデートで、居酒屋に連れて行って、って誘ってみる」
「うん、それでお泊りしてくればいいよ。だいたい、酒場の二階って連れ込み部屋になっているから、そのままやっちゃいな」
「えぇぇ、そんなラブホも備わっているの、この世界、う~ん、わかった。やってみる」
話している間に、どうやら時間が来たようだった。アトリエでポーズをとっていたから、ちょっと身体が軋んでいる。
大きく伸びをすると、ジッと見つめてくるユウ君の視線を感じた。
「リア、その、結構いい身体しているから、気をつけなよ。間違っても、兄上に胸を触らせたらダメだよ」
「へっ? そんな、気を付けているよ。当たり前でしょ、」
「うん、それなら、いいけど。王太子は確か、オッパイ星人だったから、ね。スイッチ入ると止まらないから」
「それも、ゲームの設定?」
「まぁ、そうだよ。でも、男なんてそんなものだから。はい、とりあえず今日は終わり。疲れただろ、ありがとう、リア」
そう言うとユウ君は水を入れたコップを差し出してくれた。冷たい刺激が喉を潤してくれる。
「じゃ、今日は着替えてから帰るね。また次は、連絡してね」
「あぁ、気を付けて帰りなよ。バイバイ」
そう言うと、ユウ君はもうキャンパスに向かっていた。
そっとアトリエの隣の部屋にいくと、既に私のドレスを用意した女官の方が待っていた。
その女官に手伝ってもらいながらドレスに着替え、私はユウ君のアトリエを出て帰宅するため、王宮の廊下を歩く。
「でも、私、この身体でお酒を飲んだことがないし、大丈夫かな、」
一発やるのか、どうするのか。ちょっとボオッっとして歩いていた私は、目の前にスッと立っている人に気が付かずにいた。
「リアリム嬢」
声をかけられて、ハッと前をみるとそこには超絶不機嫌な顔をしたウィルストン殿下が立っていた。
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