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第一章
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「あ、それはルートによるけど、で、リアはどのルートなの?やっぱり王太子ルート? それとも、義理兄の騎士ディリス? もしかして側近のチャーリー?」
「はぃぃ? ディリス兄さまは、本当のお兄様よ。義理でも何でもないわ。だって、顔だって結構似ているし、そんな恋愛対象になんてなりえないわ」
「えぇぇ! 何だろう、設定が変わっているのか? 兄上のウィルストン殿下を見た時から、この世界は乙ゲーだと思ったのに、なぁ~」
「チャーリー様も、あり得ないわ。あの方、いつもウィルストン殿下の傍にいるもの。確かに素敵な方かもしれないけど、私が好きなのは、あっ」
「へぇ、リア。もう好きな人がいるんだ」
ユウ君はにたっと笑って、揶揄うような視線で私を見る。
「もうっ、いいでしょ。それよりユウ君。その引きこもりって、何よ。もしかして漫画ばっかり描いているの?」
「漫画じゃないよ、油絵だ。結構、この世界では前衛的だといわれていて、一部のコレクターには受けがいいんだよ」
「まぁ、確かに。昔っから絵が上手だったもんねぇ」
転生前のユウ君は、緻密な絵を描けるからかエンジニアになっていたような気がする。
「本当は、絵描きになりたかったんだよ、まぁ、転生前は無理だったけど。今の世界なら、絵を描くことに没頭できるからさ。王子といっても、優秀な兄上がいるし。僕はひっそりと絵を描いて生きて行こうと思って、さ」
「まぁ、その、やりたいことをやるのはいいけど。でも、一応この国の王子なんだから、しっかりした格好をして」
「はいはい。リアに言われたら、仕方ないな。ねぇ、もっと話がしたいから、そうだ、本当に絵のモデルになってよ。そうすれば、宮殿に頻繁に来る理由になるでしょ」
「まぁ、そうね。私ももっと話がしたいし」
「うん、すごい、リアがヒロイン! すげぇ、じゃ、僕の推しカプの王太子ルートで! ウィルストン殿下との熱い夜を過ごしてくれ! できたらのぞき見させてくれ!」
「断る」
なんてことを言うんだ、のぞき見させてだなんて。
それに頼むから、私とウィルストン殿下をくっつけないでください。
「私、もう好きな人がいるの。できればその方と、難しいかもしれないけど、一緒になりたい、の」
口に出してみても、やっぱり難しそうで悲しくなる。
結局、今日もウィルストン殿下に断ったつもりだけど、何故か次に会う約束をさせられている。
「そっか、リアも、大変そうだな、でも、きっとゲーム補正があるから」
何かまた、ぶつぶつと言い始めている。
「ちょっと、そろそろ時間だから、今日は帰るね。また時間をみつけて、ゆっくり会おう、ね」
「うん。そうだね、リア。今度はもっとゆっくりと話したいね」
「私もだよ。あっ、そうだ! 今の世界では身分があるから、二人きりの時以外、私は殿下って呼ぶからね」
「わかった。僕もなるべくリアリム嬢って呼ぶようにするよ」
こうして、私の嵐のような一日が終わった。結局、ウィルストン殿下は何故か諦めてくれなかったけれど、弟だったユウ君に再会できた。まぁ第二王子ってところが微妙だけど。
家に着いた私はすぐに、自分の寝室のベッドにダイブしてしまった。
段々と複雑になっていく私の世界。どうか平凡な結婚ができますように。
祈る私の願いは、けして難しいものではないと思うのだけど、なぜかそれはとてつもなく難しいミッションのように感じるのであった。
「はぃぃ? ディリス兄さまは、本当のお兄様よ。義理でも何でもないわ。だって、顔だって結構似ているし、そんな恋愛対象になんてなりえないわ」
「えぇぇ! 何だろう、設定が変わっているのか? 兄上のウィルストン殿下を見た時から、この世界は乙ゲーだと思ったのに、なぁ~」
「チャーリー様も、あり得ないわ。あの方、いつもウィルストン殿下の傍にいるもの。確かに素敵な方かもしれないけど、私が好きなのは、あっ」
「へぇ、リア。もう好きな人がいるんだ」
ユウ君はにたっと笑って、揶揄うような視線で私を見る。
「もうっ、いいでしょ。それよりユウ君。その引きこもりって、何よ。もしかして漫画ばっかり描いているの?」
「漫画じゃないよ、油絵だ。結構、この世界では前衛的だといわれていて、一部のコレクターには受けがいいんだよ」
「まぁ、確かに。昔っから絵が上手だったもんねぇ」
転生前のユウ君は、緻密な絵を描けるからかエンジニアになっていたような気がする。
「本当は、絵描きになりたかったんだよ、まぁ、転生前は無理だったけど。今の世界なら、絵を描くことに没頭できるからさ。王子といっても、優秀な兄上がいるし。僕はひっそりと絵を描いて生きて行こうと思って、さ」
「まぁ、その、やりたいことをやるのはいいけど。でも、一応この国の王子なんだから、しっかりした格好をして」
「はいはい。リアに言われたら、仕方ないな。ねぇ、もっと話がしたいから、そうだ、本当に絵のモデルになってよ。そうすれば、宮殿に頻繁に来る理由になるでしょ」
「まぁ、そうね。私ももっと話がしたいし」
「うん、すごい、リアがヒロイン! すげぇ、じゃ、僕の推しカプの王太子ルートで! ウィルストン殿下との熱い夜を過ごしてくれ! できたらのぞき見させてくれ!」
「断る」
なんてことを言うんだ、のぞき見させてだなんて。
それに頼むから、私とウィルストン殿下をくっつけないでください。
「私、もう好きな人がいるの。できればその方と、難しいかもしれないけど、一緒になりたい、の」
口に出してみても、やっぱり難しそうで悲しくなる。
結局、今日もウィルストン殿下に断ったつもりだけど、何故か次に会う約束をさせられている。
「そっか、リアも、大変そうだな、でも、きっとゲーム補正があるから」
何かまた、ぶつぶつと言い始めている。
「ちょっと、そろそろ時間だから、今日は帰るね。また時間をみつけて、ゆっくり会おう、ね」
「うん。そうだね、リア。今度はもっとゆっくりと話したいね」
「私もだよ。あっ、そうだ! 今の世界では身分があるから、二人きりの時以外、私は殿下って呼ぶからね」
「わかった。僕もなるべくリアリム嬢って呼ぶようにするよ」
こうして、私の嵐のような一日が終わった。結局、ウィルストン殿下は何故か諦めてくれなかったけれど、弟だったユウ君に再会できた。まぁ第二王子ってところが微妙だけど。
家に着いた私はすぐに、自分の寝室のベッドにダイブしてしまった。
段々と複雑になっていく私の世界。どうか平凡な結婚ができますように。
祈る私の願いは、けして難しいものではないと思うのだけど、なぜかそれはとてつもなく難しいミッションのように感じるのであった。
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