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第一章
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この世界は、まだ絵具なども発達していない。
油絵具が中心だけど、第二王子の描くその絵は、転生前の世界にあったアニメを思わせるような内容のものばかりだった。
「で、殿下、これは。あっ、これ」
未来の猫型ロボットが笑っている。油絵のその姿も、愛らしいけど、何故、これが。
「君、その生き物が何か、わかるの?」
「はい、未来の猫型ロボットですよね。耳は確か、ねずみに齧られたはず」
「も、もしかして、君も、転生した、の? ニホンの記憶がある、とか?」
「で、殿下、もしかして、殿下も記憶があるのですか?」
お互いに、転生者がいるとは思いもしなかった。
「すげぇ! マジ、すげぇ! うひょ~、もしかして知り合いだったりして! 転生前の名前、覚えてる?」
「あっと、実は、ヒシウチ・リア、だったことまでしか、漢字は覚えていなくて」
私の名前を聞いた殿下は、ひゅっと喉をならして急に黙ってしまった。
「で、殿下? 殿下のお名前は」
しばらく、沈黙の後に彼はそっと囁くように名前を教えてくれた。
「僕は、ヒシウチ・ユウ、だよ。母の名前はアイコ、父はテルヒコ。もしかしてリア?」
「ユウ、ユウ! もしかして、ユウ君?」
彼は、私の転生前の双子の弟の名前だった。
「リア!」
「ユウ君!」
お互いにひしっと抱き合って、再会を喜ぶ。奇妙な記憶を持ちながら異世界で生きてきたのだ。
ひくっ、ひくっと嗚咽交じりの声で泣いてしまうと、ユウはかつてのように頭をポン、ポンと撫でてくれる。
かつてと違い、今世のユウは引きこもりとはいっても、身体は鍛えていたようだ。よく見ると、鼻筋も通っていてイケメン度が半端ない。このボサボサの髪と髭さえなければ。
落ち着いてきたところで、お互いに記憶を照らし合わせる。特に、最後の場面。
「あ、もしかして。私たち、実家で同時に亡くなったから、同じ時に転生したのかな」
「そうかもね、リア。でも、どっちにしても、こうして会えたのは嬉しいね」
不思議な感じがした。転生前の記憶は、もう既にうっすらとしか残っていない。
けれど、彼の笑顔は何となく覚えている。
お互い、大人になってからは別の方向に進んでいたから、会うことも少なくなっていたけれど。
弟というか、兄というか、双子だった私たちは幼い頃から常に一緒だったのだ。
思わぬ出会いに、感動に浸っていると第二王子である彼はさらに私に爆弾発言をしてきた。
「で、リア。どうして乙ゲーのヒロインになってるの? って、覚えてる? 乙女ゲームの“愛しい私の世界”」
「ひょへっ? な、何言ってるの?」
どうやら彼に言わせると、この世界は転生前のニホンにあった乙女ゲーム、それも “愛しい私の世界”に酷似しているらしい。更に、私はピンク髪をしたヒロインのようだった。
「それ、覚えていない」
「あっ、そうか。リアは大学で離れた後だったな、僕はハマっていたからさぁ、すっげぇ覚えてる」
「ユウ君、その言葉。チャラい」
「ははっ、っパねぇ! 通じるよ~! ホント、この世界固いんだよな~」
思わずジトっとした目でみてしまう。それはお前が王子に転生しているからだと言いたかった。
「ユウ君。髪の毛をきちんと整えて、髭も剃って。歯もちゃんと磨いているの? 口が臭いと女の子にもてないよ」
「うひょう! それ、まさしくリアだな! なっつかし~」
ケタケタと笑うその顔は、まさしく弟のユウ君だ。色は白いし、髪の色も目の色も違うし、全然同じではない顔つきをお互いしているけれど、でも、覚えている。
「で、ヒロインって。どういうこと? もしかして、バッドエンドあり?」
油絵具が中心だけど、第二王子の描くその絵は、転生前の世界にあったアニメを思わせるような内容のものばかりだった。
「で、殿下、これは。あっ、これ」
未来の猫型ロボットが笑っている。油絵のその姿も、愛らしいけど、何故、これが。
「君、その生き物が何か、わかるの?」
「はい、未来の猫型ロボットですよね。耳は確か、ねずみに齧られたはず」
「も、もしかして、君も、転生した、の? ニホンの記憶がある、とか?」
「で、殿下、もしかして、殿下も記憶があるのですか?」
お互いに、転生者がいるとは思いもしなかった。
「すげぇ! マジ、すげぇ! うひょ~、もしかして知り合いだったりして! 転生前の名前、覚えてる?」
「あっと、実は、ヒシウチ・リア、だったことまでしか、漢字は覚えていなくて」
私の名前を聞いた殿下は、ひゅっと喉をならして急に黙ってしまった。
「で、殿下? 殿下のお名前は」
しばらく、沈黙の後に彼はそっと囁くように名前を教えてくれた。
「僕は、ヒシウチ・ユウ、だよ。母の名前はアイコ、父はテルヒコ。もしかしてリア?」
「ユウ、ユウ! もしかして、ユウ君?」
彼は、私の転生前の双子の弟の名前だった。
「リア!」
「ユウ君!」
お互いにひしっと抱き合って、再会を喜ぶ。奇妙な記憶を持ちながら異世界で生きてきたのだ。
ひくっ、ひくっと嗚咽交じりの声で泣いてしまうと、ユウはかつてのように頭をポン、ポンと撫でてくれる。
かつてと違い、今世のユウは引きこもりとはいっても、身体は鍛えていたようだ。よく見ると、鼻筋も通っていてイケメン度が半端ない。このボサボサの髪と髭さえなければ。
落ち着いてきたところで、お互いに記憶を照らし合わせる。特に、最後の場面。
「あ、もしかして。私たち、実家で同時に亡くなったから、同じ時に転生したのかな」
「そうかもね、リア。でも、どっちにしても、こうして会えたのは嬉しいね」
不思議な感じがした。転生前の記憶は、もう既にうっすらとしか残っていない。
けれど、彼の笑顔は何となく覚えている。
お互い、大人になってからは別の方向に進んでいたから、会うことも少なくなっていたけれど。
弟というか、兄というか、双子だった私たちは幼い頃から常に一緒だったのだ。
思わぬ出会いに、感動に浸っていると第二王子である彼はさらに私に爆弾発言をしてきた。
「で、リア。どうして乙ゲーのヒロインになってるの? って、覚えてる? 乙女ゲームの“愛しい私の世界”」
「ひょへっ? な、何言ってるの?」
どうやら彼に言わせると、この世界は転生前のニホンにあった乙女ゲーム、それも “愛しい私の世界”に酷似しているらしい。更に、私はピンク髪をしたヒロインのようだった。
「それ、覚えていない」
「あっ、そうか。リアは大学で離れた後だったな、僕はハマっていたからさぁ、すっげぇ覚えてる」
「ユウ君、その言葉。チャラい」
「ははっ、っパねぇ! 通じるよ~! ホント、この世界固いんだよな~」
思わずジトっとした目でみてしまう。それはお前が王子に転生しているからだと言いたかった。
「ユウ君。髪の毛をきちんと整えて、髭も剃って。歯もちゃんと磨いているの? 口が臭いと女の子にもてないよ」
「うひょう! それ、まさしくリアだな! なっつかし~」
ケタケタと笑うその顔は、まさしく弟のユウ君だ。色は白いし、髪の色も目の色も違うし、全然同じではない顔つきをお互いしているけれど、でも、覚えている。
「で、ヒロインって。どういうこと? もしかして、バッドエンドあり?」
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