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第一章
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しおりを挟む「殿下、一体、何やっているんですか。俺の妹に」
ディリスは苦々しい口調でウィルティムに話しかけた。
休憩時間が終わり、また訓練が始まる。
その合間の時間に、俺は殿下を探し出して問いただした。
「今の姿の時に、殿下というな。ウィルでいい、ウィルで」
「はぁ~、もう騎士団の連中は気づいていますよ、ウィルが第一王子であること」
そう、この器用な殿下は表向きは留学していることにして、魔法薬で髪と瞳の色を変え、名前をウィルティムと称して騎士団に所属している。
「まぁ、流石に2年もいるからな。それに、騎士として鍛えることもできたし、王子業に戻る時期でもあるからな」
ウィルティムは少し遠い目をしている。身軽な身分になって、騎士団で修業したいと身分を偽っていると知った時は驚いたが、本来の殿下はわりと伸び伸びとした男なのだ。
窮屈なことが多い王子業に戻るのは、本意ではないのだろう。だが、国王である陛下との約束の2年間も、もう終わる。
俺の場合、妹のリアリムの王家の森事件をきっかけに、ウィルティムと知り合い彼が第一王子であることも伝えられていた。
最近では、休憩時間にやってくるリアリムに会いに来ていたから、好意があることは知っていたが、複雑なことになっている。
「で、ウィルとしてはどうして妹に伝えていないんだ、お前が第一王子であることを」
「それだ。まぁ、俺としては王子である俺を好きになって欲しいのだが」
確かに、リアリムは騎士であるウィルティムに好意を持っているのだろう。だが、あれだけ王子であるウィルストン殿下を嫌っているのだから、ややこしいことになっている。
「だからって、リアリムの恋人役を引き受けるとは、全く。リアリムも何を考えているのか、、」
妹のリアリムは、時々とんでもない行動に出ることがある。昔はそうでもなかったのだが、10歳を過ぎた頃から時々意味のわからない言葉を話し、理解の範疇を超える行動に出ることがあった。
「まぁ、リアリムのハートをつかむように努力するよ。そうすれば、立場を超えて俺の腕の中に飛び込んでくれるさ」
ウィルティム、いや、ウィルストン殿下。頼むから妹をこれ以上混乱させないでくれ、と思うが、アイツも大変な男に魅入られてしまったものだ。
こうなると、妹が殿下に落ちるのも時間の問題かもしれない。
すでに2年前、王家の森に入り込んだ妹を助け出して以来、ウィルは妹にロックオンしている。
まぁ、初めの頃は焦ったが、2年も変わらず妹に好意を抱いていた。
俺も家から王子妃を出すことに腹をくくったが、妹は未だに気が付いていない。
これから起きるであろう、妹の混乱ぶりを想像すると少し可哀そうになるが、まぁ頑張ってくれ。
ため息をつきながら、俺はまた訓練に戻っていく。ウィルとこうして気兼ねなく過ごすことができるのも、あと少しだろう。
だが、デートと言っていたが、妹は時々とんでもない服装を選ぶときがある。コスプレというらしいが、さすがにウィルティムとのデートであれは着て行かないだろう、、。
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