【R18】ふたつのアレを持つ男 ~竜人と淫魔の受付嬢の恋~

季邑 えり

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第五話

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 家に入ると、私はいつものようにエプロンをつけて料理をして彼を待つ。マスターの好きなエピメボドラを絞めて、とっておきのワインを用意する。

 あとはアイカおすすめのランジェリーショップで用意した、黒の透ける素材でできたキャミソールを素肌の上に着る。

 準備万端、気持ちを整えていたところで――彼が玄関の扉を開けて「ただいま」と帰って来た。

「あ、お帰りなさい」
「待たせたな……ああ、今日もかわいいな」

 彼は一直線に私のところへ来ると、抱き寄せて額にキスを落とす。「ただいま」も「おかえり」も、彼から言って欲しいとお願いされていた。まるで新婚のようで恥ずかしいけれど、彼はとっても喜んで、他の人には見せないような顔をして私を抱きしめる。最近は顔の上にキスまでするようになった。

「で、今日は何をつくってくれたんだ?」
「えっと、マスターの好きな新鮮なエピメポドラがあったから、買ってきたの」
「エピメポドラ? あれは獰猛な奴だろう。大丈夫か?」
「うん、吸血したら大人しくなったから、そのまま締めちゃった」
「……そうか」

 最近、吸血鬼としての能力も向上してきたのか、小動物であれば上手に血を抜くことができるようになった。手乗りサイズのエピメボドラであれば、大人しくさせるのに丁度いいくらい。まだ生きているから、ギャ、ギャと叫びながらお皿の上でピチピチ跳ねているけど、逃げ出すことはない。

試したことはないけれど、多分人一人くらいなら乾かせるような気もする。しないけど。

「だが、危ないことはしてはいけないよ。それに……家の中では、マスターは禁止だろう?」
「でも……マスターはマスターだし」
「セラージュ」

 軽く睨みつけられて、私は口を尖らせる。「ほら」とせかされても、やっぱり恥ずかしくて言えない。頭を左右に振ると、「仕方ないな」と彼は私の髪を手で梳きはじめた。

 以前の彼には、冷酷なイメージしかなかったけれど。この家にいる時は全く違う。というか、私と二人きりになった途端、ものすごく甘くなる。砂糖菓子よりもべたべたに甘い。

「あの、マスター。今日は夕食が終わったら、お願いしたいことがあるんです」
「ん、なんだ? セラージュのお願いなら、何でも聞くから言ってごらん」

 抱きしめられていた私は、彼の背中に手を回して下から見上げる。スーッと息を吸い込むと、勇気を出して考えていた台詞を口にした。

「今夜、私に精液を注いで欲しいの」

 いっ、言っちゃった! とうとう、彼に伝えてしまった。恥ずかしさのあまり、私は厚い胸板に顔をこすりつけてしまう。こんなにも甘い彼なら、きっと叶えてくれるだろう。

 けれど、上から落ちてきた言葉は私の想像とは違っていた。

「セラージュ……ダメだ」
「えっ」

 驚いて顔を上げると、マスターは顔を手で覆い、唸るように「ダメだ、いや」と呟いている。

「マスター、ダメなの? 私、マスターに抱いて欲しいの」
「それはっ……っ」

 奥歯をかみしめた彼は、とても苦しそうな顔をしている。それでもやっぱり、彼に抱いて欲しい。否定されたことがショックだけれど、私は瞳を潤ませながらもう一度懇願した。

「パウルさんのことが、好きなの。お願い……私のハジメテの男になって?」
「くそっ」

 彼は理性を手放したように、私に噛みつくように口づけた。身長差があるから、お尻に腕を回し持ち上げられる。身体をくっつけながら、お互い唇の裏側の柔らかい部分を重ね、舌を絡ませる。

 ジュッと音が鳴るほどに舌を吸われる。息が続かない。

「んっ、っはっ……ああっ」

 彼は私を抱き上げたまま、寝室に連れて行こうとする。食卓の上に乗せてあるエピメボドラが気になるけれど、この勢いのまま抱いて欲しくて、私は料理を一旦頭の中から追い出した。

 身体は揺れるけれど、安定感のある力強い腕で運ばれる。寝室の扉を蹴破り、待ちきれないとばかりに私は寝台の上に横たわらされた。

「マスターッ」

 瞳に赤い筋が見える。これは彼が興奮している証拠だと、今ならわかる。彼の中の竜性が目を覚まして昂っている。

 ボタンを外す手間が惜しく、ブチブチッと白いブラウスが破られる。その下には黒い透け感のあるキャミソールひとつしかない。

「くそっ……私を殺す気か」

 黒い下着が白い肌に張り付いている。扇情的な姿を現した途端、マスターは男らしい喉ぼとけをゴクリと動かした。

 既に乳頭は硬く勃ちあがっている。服を着ていると想像できないほど形の良い美乳に、真っ白く吸い付くような肌。呼吸に合わせて胸が上下している。

「マスター、抱いてくれるの?」
「ああ……だが……っ」

 ここまできても、彼はためらいを捨てきれないでいる。どうしてだろう、と手を伸ばして彼の頬を両手で挟み込む。

「私、一度だけでいいんです。マスターの精液をいただければ……そうすれば、フェロモンのコントロールができるようになるから。もう、マスターを煩わせることも、なくなるから」
「セラージュのことを、煩わしいと思ったことなどない」
「だったら……どうしてダメなの?」

 首を傾げて問いかけると、彼ははーっと大きく息を吐く。そしてグッと口を引き結ぶと、上着を脱ぎ、シャツのボタンを外し始めた。

「私の身体を見て、それでもセラージュがいいというなら。……怖いかもしれないが、それでもいいか?」

 覚悟を決めたマスターは、優しい声で話しかける。

「マスターのこと、怖いとはもう思いません。だから……お願い。全部、見せてください」
「……わかった」

 上半身にまとっていたものを全て脱ぎ去ると、彼の肌がキラリと光っている。——うろこだ。それも、銀色のうろこが所々についている。

「私の身体は、竜人の特徴が色濃くでている。うろこもその一つだ」

 手を伸ばしてそこに触れると、つるりとした肌に硬いうろこがはりついている。それでも、怖くはなかった。

「これくらい、大丈夫です。私の方が……吸血鬼と淫魔なんですよ?」
「私にとっては、かわいらしいものだ。いくらでも私の血を吸えばいい。だが……これは」

 ぐっと喉を鳴らすと、彼は下穿きの腰の部分を手にかけた。けれど男性器を見せることを戸惑っているのか、引き下げずにいる。

でも、それを出してくれないと私の願いは叶わない。

「マスター? 私、これでも淫魔の血をひいているから、大丈夫……だと、思います」

 少なくとも、普通の女性よりは性行為にこだわりはない、と思う。ママがあれだから、姉たちもオープンに話しているし。
 
「そうか……君は、これを見ても大丈夫なら……」

 マスターは覚悟を決めたように手に力を入れると、下穿きを下ろして男性器を私に見せた。体の大きい彼のことだから、きっと大きいのだろうと思っていたけれど。

 目の前には、想像を超えるものがあった。ブルんッと震えるようにして現れたそれは……。
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