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スイレン宮の最後
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私は、自分の相棒を取り出す。
「アレン、お願い。」
戦いを止めない3人、私をいつまでもスイレン姫と呼ぶ人達。全員、目を覚まして欲しかった私は、一つのお願いを、アレンにした。
「このスイレン宮を焼くわ。手伝って。あなたなら、できるでしょう?」
かつてない、壮大なお願いをする。私の人生で、一番のわがままだ。でも、この宮殿は私のもの。―――全て、私が終わらせる。終わらせてみせる。
私は、アレンを抱えると、妖力を練り上げて、魔力を編み込んだ。アレンが私の願いに反応するように、その銃身を赤く、大きくさせる。かつて見た、あの赤い妖銃アレンの姿だ。
かつて、サルビア宮殿を一瞬で炎に包み、全てを焼いた妖銃アレン。神秘的なその姿を、私がもう一度呼び出せると思っていなかった。だが、アレンは答えてくれた。今は、抱え込むほどに大きくなっていた。
銃口をスイレン宮に向ける。そして、狙いを定め、トリガーに指をかける。よし、銃弾も完成した。
そして月夜の明かりを受け、美しく輝くスイレン宮を、私は瞼に焼き付けた。
―――さよなら、私のスイレン宮。ありがとう。お前は最後まで、美しいよ。
「アレン、お願い。―――焼いて。全て、終わらせる。」
私は一気に、トリガーを引いた。
――――ズドォォォォォン―――――
空気を動かす爆音が響く。全ての空気が、止まる。そして、宮殿が燃える。赤い炎は、轟音と共に一気に宮殿を包み込んだ。
「アイリス!」
「姫!」
「姫様!」
そこにいた者は、各々の動きを全て止め、燃え盛るスイレン宮を茫然とみていた。そんな中、レオンだけは私を探していた。
私は、妖銃を撃った反動で飛ばされていた。衝撃で動かなくなった私を見て、レオンが駆け寄ってくる。
「アイリス、アイリス、お前・・・なんてことを。」
「レ・・オン・・」
レオンが私を抱きしめてくれる。でも、そのレオンもボロボロで血だらけだ。
「だい・・じょうぶ?」
「ああ、俺は大丈夫だ。お前、どこか打っていないか?」
「レオン、私、終わらせ・・た・かった。」
「しゃべるな、今は、しゃべらなくていい。」
「ぜ・・んぶ。アレン・・」
レオンの顔を見ていたら、安心してしまった私は、その腕の中で、ふらっと意識を手放してしまった。
**********
今夜は、月が美しい。
今夜は、合同婚約式が開かれている。私は、赤いドレスを着て、レオンハルト皇子の隣にいる。
昨夜の、スイレン宮の火災が落ち着いたのは、私が目を覚ましたのと同じ、夜が明ける頃だった。燃え尽きた宮殿跡は、多くの国民にサルビア宮殿の崩壊の日を、思い起こさせた。
王制復古派の人々も、サルベニア王国の息吹が色濃く残っていて、歴史が詰まったスイレン宮が焼け落ちてしまった。その為、その勢力も気力も削がれたのか、勢いを無くしたようだ。
「レオン、よかった。貴方の隣にいられて、嬉しい。」
「俺もだ。って、イテェ・・・」
レオンは昨日の喧嘩、いや、サボとの戦闘の結果、身体中が切られ、ついでに腕も折られていた。今は、美しい正装のはずが、骨折のために腕をつっているし、額にも包帯を巻き、痛々しい姿だ。ソルも、同じようなものだった。
注目の王子と皇子が、二人揃って包帯姿である。何かあったと勘繰る人も多い。痛々しい視線を感じるが、今夜は合同婚約式だ。
「アレン、お願い。」
戦いを止めない3人、私をいつまでもスイレン姫と呼ぶ人達。全員、目を覚まして欲しかった私は、一つのお願いを、アレンにした。
「このスイレン宮を焼くわ。手伝って。あなたなら、できるでしょう?」
かつてない、壮大なお願いをする。私の人生で、一番のわがままだ。でも、この宮殿は私のもの。―――全て、私が終わらせる。終わらせてみせる。
私は、アレンを抱えると、妖力を練り上げて、魔力を編み込んだ。アレンが私の願いに反応するように、その銃身を赤く、大きくさせる。かつて見た、あの赤い妖銃アレンの姿だ。
かつて、サルビア宮殿を一瞬で炎に包み、全てを焼いた妖銃アレン。神秘的なその姿を、私がもう一度呼び出せると思っていなかった。だが、アレンは答えてくれた。今は、抱え込むほどに大きくなっていた。
銃口をスイレン宮に向ける。そして、狙いを定め、トリガーに指をかける。よし、銃弾も完成した。
そして月夜の明かりを受け、美しく輝くスイレン宮を、私は瞼に焼き付けた。
―――さよなら、私のスイレン宮。ありがとう。お前は最後まで、美しいよ。
「アレン、お願い。―――焼いて。全て、終わらせる。」
私は一気に、トリガーを引いた。
――――ズドォォォォォン―――――
空気を動かす爆音が響く。全ての空気が、止まる。そして、宮殿が燃える。赤い炎は、轟音と共に一気に宮殿を包み込んだ。
「アイリス!」
「姫!」
「姫様!」
そこにいた者は、各々の動きを全て止め、燃え盛るスイレン宮を茫然とみていた。そんな中、レオンだけは私を探していた。
私は、妖銃を撃った反動で飛ばされていた。衝撃で動かなくなった私を見て、レオンが駆け寄ってくる。
「アイリス、アイリス、お前・・・なんてことを。」
「レ・・オン・・」
レオンが私を抱きしめてくれる。でも、そのレオンもボロボロで血だらけだ。
「だい・・じょうぶ?」
「ああ、俺は大丈夫だ。お前、どこか打っていないか?」
「レオン、私、終わらせ・・た・かった。」
「しゃべるな、今は、しゃべらなくていい。」
「ぜ・・んぶ。アレン・・」
レオンの顔を見ていたら、安心してしまった私は、その腕の中で、ふらっと意識を手放してしまった。
**********
今夜は、月が美しい。
今夜は、合同婚約式が開かれている。私は、赤いドレスを着て、レオンハルト皇子の隣にいる。
昨夜の、スイレン宮の火災が落ち着いたのは、私が目を覚ましたのと同じ、夜が明ける頃だった。燃え尽きた宮殿跡は、多くの国民にサルビア宮殿の崩壊の日を、思い起こさせた。
王制復古派の人々も、サルベニア王国の息吹が色濃く残っていて、歴史が詰まったスイレン宮が焼け落ちてしまった。その為、その勢力も気力も削がれたのか、勢いを無くしたようだ。
「レオン、よかった。貴方の隣にいられて、嬉しい。」
「俺もだ。って、イテェ・・・」
レオンは昨日の喧嘩、いや、サボとの戦闘の結果、身体中が切られ、ついでに腕も折られていた。今は、美しい正装のはずが、骨折のために腕をつっているし、額にも包帯を巻き、痛々しい姿だ。ソルも、同じようなものだった。
注目の王子と皇子が、二人揃って包帯姿である。何かあったと勘繰る人も多い。痛々しい視線を感じるが、今夜は合同婚約式だ。
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