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レオンとスイレン宮へ

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「ん、ちょ、ちょっと、ストップ。レオン。少し話しをしようよ。帝都はどうだった?」

そう聞くと、レオンは苦々しい顔をした。

「すまん、帝都では、何も情報が得られなかった。せっかくララクライン嬢をみつけることが、できたのに。」

「そんな、うまくいく時もあれば、いかない時もあるよ。私、レオンの分けてくれた魔力で、何度か助けられたよ。」

 会えなかった日の、出来事を話していく。離れていても、この赤いピアスがあったから、助けてもらっていた。それは、忘れないでほしい。

「そういえば、帝都で聞いた話だが、ソルディーエル王子は、やはり事前に組み合わせのことを聞いていたみたいだな。リード家の手の者が働いたのかもしれないが。今回の計画は、やはりあいつが絡んでいるのかもしれない。」

「ララクライン様は、ソルが関わっているようなことは、言ってなかったけど。」

「ホレた相手のことを、悪く言うやつは、そうはいない。別ルートで探ってみるべきだった。もしかしたら、その線で呪いをかけた、魔術師を見つけることができたかもしれない。」

「そうね、呪いに関して言えば、リード家ではなく、王政復古派の関与が強いのかも。」

 レオンは、最後まで諦めたくないと、また、ぎゅっと私を抱きしめた。明日の夜は、婚約式だ。

 私は、呪いそのものを焼き切る、新しい妖魔煙の開発をしていることを、レオンに話した。ほぼ完成しているが、マズイことに最後の大きな難関があった。呪い、の探知だ。

 私のイメージの呪いは、黒いモヤモヤが、身体のどこか、頭とか胸とかに張り付いている。その黒いモヤモヤを、妖魔煙で捕まえて、砕いてしまう、というのが私なりの「呪いの解呪」だ。

 だが、その呪いそのものを探知することが、難しかった。身体のどこに張り付いているのか、もしくは全身にくまなく張り付いているのか。

 そのことを話すと、意外なことにレオンがあっさりと答えをくれた。

「ああ、それなら、身体中をスキャンすればいい。頭の先から、足先まで。ほれ、手をこうかざしてだな」

 レオンはいきなり、私の身体を魔術の一つで、調べるそぶりをした。初めて見る魔術、『スキャン』であった。

「すごい、レオン!そんなことできたのね!」

「ああ、これすると、ホレ、お前肩こりすごいな。とか、身体のどこに不調があるのか、よくわかるぞ。」

 レオンは、意外と身体を視る能力があるらしく、かなり細かく不調の原因が視えると言った。ただ、視えても医者ではないから、治すことも何もできない。だから、あまり使わない魔術だと言っていた。

 今、私はレオンが持っている魔術を、ピアスを通じて共有している。これを組み合わせれば、呪いを見つけ、砕くことができるかもしれない。

「レオン、行こう!ララクライン様のいる、スイレン宮に行くよ!」

 いきなり立ち上がった私に、レオンは驚いていたけれど。ようやく、解決の方法がひらめいたのだから、行くしかない!明日の夜は婚約式ということもあり、すぐに私たちはスイレン宮に行くことを決めた。

*********

 スイレン宮の、スイレンの花は美しい。沼地に咲く花を、改めて見入ってしまう。おばあ様の愛した沼には、美しい紫の花が咲き誇っていた。

そこにいた、全ての魔蛇は、いなくなっていた。多分、サボが退治してくれたのだろう。何も聞いていないけど、彼しか考えられない。

 今は、ララクライン嬢の呪いを解くことに集中しよう、と、レオンと急いで宮殿の奥へ向かう。辺りは真っ暗だが、レオンの魔力の共有で、昼間と変わらず見えている。

「レオン、この奥にララクライン様がいるはずだけど、手前の部屋で、リード家の人たちが控えているから、まず先にその人たちをどうにかしないと。」

「わかった。俺が何とかするから、アイリスは先に行ってくれ。」

「レオン、殺さないでね。」

「・・・大丈夫だ。多分。」

 とりあえず、私はその場をレオンに任せて、ララクライン様のいた部屋へ向かう。この前と同じ部屋であれば、この角を曲がった先に、いるはずだ。

 と、そう思ったところで、争う人の声が聞こえてきた。

「・・・が、・・だから、我々は・・・」「そうは言っても、先払いしろっていっただろうが!」

 ドキン、と心臓がなる。どうやら、支払いのことで揉めているようだ。妖銃アレンを構え、いつでも麻酔弾を撃つことができるように、構える。

「チッ、これだから頭の固い、王政復古派の奴らは払いが悪い。リードをつつくか・・・」

 体格が良く、人相の悪い3人組はどうやら、魔物の代わりに新たに宮殿に来た者たちのようだ。支払いが悪い、ということはリード家ではないだろうな。3人は、彼らが雇った用心棒のようだ。

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