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訪ねて来たレオン

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 その日の夜、また私はアレンと話すことができた。

「アイ・・ス・・・アイリス。」

「アレン!嬉しい。また会えたわ。」

 夢の中のアレンは、優しい微笑みを絶やさない。

「アレン、今度は呪いよ。時間もないのに、呪いをかけた本人を探さないといけない。」

「アイリス・・・呪いを依頼した者の、目星はついたの?」

「うーん、リード家か、王政復古派か、どちらかと思うのだけど。王宮の沼地に魔蛇を放ったのは、リード家ね。王政復古派は、スイレン宮を大切にしているから、魔物に荒らさせることはしないと思う。でも、ララクライン嬢に呪いをかけたのは、王政復古派と思うわ。」

「あら、どうして?」

「さすがにリード家にしてみれば、一人娘を殺してしまうような、恐ろしい呪いなんてかけないと思うわ。」

「そうねぇ。真実なんて、どっちもどっちなのかもしれないわよ。王宮を魔物に汚された復古派が、仕返しの一つとして一人娘に呪いをかけた、なーんてことが、裏であったのかもしれないわね。」

「どちらにしても、婚約式までに解呪しないことには・・・レオンと婚約できない。」

 私は少し、しょんぼりとしてしまった。

「あらあら、あんなに悩んでいたのに、もう、はっきりと答えはでたようね。」

「そうね、もう迷いはないかな。でも、状況はだんだん難しくなっていくけど。」

「あなたも、成長したわねぇ。私も長く生きて来たけど、貴方のようなマスターはいなかったわ。」

「私のようなマスターはいないって、どうして?」

 私のように、弱い銃士はいない、と言われたら落ち込むけど。でもアレンの返答は違っていた。

「貴方のように、麻酔弾とか、魔蔦だけを焼き切る妖魔煙とか、新しい銃弾を開発するようなマスターは、いなかったわ。私も、新しい技を開発するのが、こんなに楽しいとは、思わなかったのよ。」

「そうね、魔蔦は私の天敵だから、必死だったわ。」

 当時、魔蔦のみを対象とするのは、どうやったらいいのか、本当によく考えていた。銃弾を煙状にすると、全身に纏わりついている蔦をとらえやすいと気づいてからは、早かったなぁ…と、当時の開発を思い出す。

「あ!それと同じで、呪いだけをターゲットにした妖魔煙を作り出せないかなぁ・・・」

 何か、ひらめいてきた。解呪ばかりに目がいっていたが、呪いそのものを焼き切ることができれば、ようするに解呪になる。

「アレン!ひらめいたわ。よし、やってみる。どうせ家からは出られないから、しばらく籠って開発よ!」

 私の研究魂が、メラメラと燃え上がっている。明日から、いろいろと試してみよう。

気持ちが上向きになると、眠気を感じ始め、私はすうぅと眠りに入った。アレンが微笑んでいたように思った。

***********

 翌日、すっきりと目覚めた私は、早速、妖銃アレンを使った妖魔煙の開発に取り掛かった。イメージは、煙が細かな粒子となって、身体の中に入っていき、呪いの塊を砕くか、壊す。

 妖銃の銃弾は、妖力と魔力の組み合わせだ。煙にするまでは、もうできているから、それが細かくなるようにイメージする。人間の体内を通り抜けるような、煙。呪いだけを捕まえる煙。

 部屋にこもって、取りつかれたように妖銃にかかりっきりになった。しかし、最後のところで完成できない。焦る日は続き、とうとう、合同婚約式の前日になってしまった。

 その日の夜、コンコンと窓をたたく音がした。バルコニーに、誰かいるようだ。

「誰かいるの?」

「アイリスか、俺だ、俺。レオンだ。」

「レオン!」

 やっと帰ってきてくれた!嬉しい思いで、急いで窓を開けた。最近は伝令魔鳩も来ていなかった。

「会いたかった。アイリス。遅くなってすまない。」

 部屋に入ってくるなり、レオンはぎゅっと私を抱きしめて、そして唇にそっと触れた。

 赤い眼が、私を捉えて離さない。この眼で見つめてほしかった。やっと、会えた。レオン、と言い終わらないうちに、いつものように噛みつくようなキスをしてきた。

「ん、アイリス・・・」

 角度を変えて、唇を食べるようにキスをする。私も、嬉しい思いでいっぱいになり、だんだんと大胆になってきた。

 レオンがちろ、と唇を舐めると、その舌をチュッと吸い込んでみる。

「おまっ、いいのかよ。」

 そう言うと、レオンの舌が私の中を蹂躙した。拙い動きだけど、荒々しくて、私を求めている気持ちをぶつけるように、口内を舐め、舌を吸いだした。

「はあっ、ん、んん」

 チュバッっと、長いキスを終えると、レオンは睨むように真剣な目で、私に言った。

「お前を諦めない。アイリスさえよければ、お前を今夜、抱きたい。」

 キスで勢いがついてしまったのか、レオンは私の身体を抱き寄せて、ベッドに押し倒してきた。でも私は、その展開に追い付けない。


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