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アレンふたたび
しおりを挟むソルやサボの訪問に、疲れを感じた私はまた、午睡をしてしまった。
「・・・あ・・りす・・」
「・・アイ・・ス」
また、夢の中で、私を呼ぶ声が聞こえた。
「アイリス!アイリス!このニブちん。私の声が、わからないの?」
その声は、妖銃アレンであった。
「あ、アレン。また会えた!嬉しい!」
久しぶりに、私に声をかけてくれたアレンは、相変わらず黒のレースのドレスを纏った、穏やかなロマンスグレーの淑女であった。
「アレン、聞いて。私、3人から直接プロポーズされたわ。この1週間で。父なんて、大混乱よ・・・私より、父の方が無茶なプロポーズに翻弄されているわ。」
「そうねぇ、レオンにソルにサボ。なかなか、見ものだったわね。」
「ほんと、赤に青に白の薔薇だなんて。なんで揃いもそろって、薔薇なんて持ってくるのよ。」
「そりゃ、プロポーズといえば、定番よね。あら、あなた嬉しくないの?」
「一人からならともかく、3人とも薔薇・・・これから、薔薇の花を見ると、複雑な気持ちになるわ。」
赤の日から1週間。私の状況はジェットコースターのように、上がって下がって。赤の日さえ終われば、安定すると予想していたのに、今はより酷くなっている。何故だろう・・・
「アレン、また貴方と会話したいときは、どうしたらいいの?」
「そうねぇ、決まった方法はないけれど、あなたが眠っている時は、比較的話しやすいわね。熟睡しているとダメだけど。」
「やっぱり、眠った時でないとダメなのね。」
「貴方の声は、聞こえているわよ。だから、本当に必要な時は、呼んで頂戴。お願いアレン、って。」
「そんなことでいいの?」
「会話できるかどうかは、その時の魔力とか、妖力のバランス次第のようだけど。」
とりあえず、アレンとの会話が今後もできそうなことにホッとして、私は気になっていたことを聞いた。
「ララクライン様の隠れている所とか、わかりそう?居場所を見つけたいの。」
「ん~、私の予想では、お父さんと話してみると、面白いかもしれないわよ。」
「父さまが、何か知っている?」
「直接というより、間接的にね。ほら、貴方のお父さんも、王制復古派っぽいじゃない?彼らにしてみたら、仲間にしたい人でしょ。そういう人には、接触しているものよ。」
「そうか、父さまね。後で話をしてみようかしら。」
その後も話が盛り上がってきたが、夕食が近づいたことを知らせるノックの音を聞くと、
「いつでも、あなたの味方よ。アリエス。アデュー・・・」
アレンはそういって、夢は終了するのであった。
◇◇◇◇◇
二人きりでの夕食。このところ、いろいろ騒がしくて落ち着かない日々であるが、父の知らなかった面を知ることができて、アイリスも家に馴染んできていた。
こうして父と娘で食事ができるのは、過去のわだかまりを考えると、嬉しくもあった。
「アリエス、お前も母さんに似て美しく育ったが、それはそれで・・・悩みも増すな。」
「父さま、それはやっぱり、3人も押しかけてきたことでしょうか。」
「そうだな、この1週間で3人か・・・。お前も成長したな。実感したよ。」
「お騒がせして、すみません。」
「いや、それはいい。3人とも、お前の父である私に許可を求めるところは、誠実でいい青年達ではないか。ただ、それぞれな・・・。あー、なんだ。一筋縄ではいかない相手ばかりだな。」
そう言うと、はぁ、とため息をついていた。気持ちは良くわかる。
「一人は皇帝の皇子か。まぁ、気持ちの良さそうな奴だが。南西の地の領主となると、ずいぶんと離れたところに住むことになるな。ソルディーエルであれば、変わらず近くに住むことは出来るが、生涯帝国の監視がつくであろうし。あの傭兵は、お前に自由を与えてくれそうだな。だが、海外の生活かぁ。で、お前はどう思っているんだ?」
「父さま。私は変わらず、レオンハルト皇子と結婚したいと思っています。ただ、それにはララクライン様を見つけないといけませんが、私も動くことができません。どうしたものかと、思っています。」
正直に私の気持ちを伝えると、父は少し考える様子を見せて、私に教えてくれた。
「・・・アイリス、スイレン宮に行ってみなさい。少し前、スイレン宮の一部を借りたいと、申請に来た者がいた。彼が今回の事件と関係があるのかわからないが、可能性はある。」
「それは・・・王政復古派と関係がある方なのですか?」
「お前の探し物がみつかるといいが。それ以上は、私にもわからない。」
「父さま、ありがとうございます。そうですね、スイレン宮ですか。行ってみます。」
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