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王政復古派
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「すみません、こちらに本日、ソルディーエル・サルベニア騎士は、勤務していらっしゃいますか?」
騎士団詰所の、受付をされている方に、声をかける。
「ソルディーエル?ああ、サルベニア様ね。・・・申し訳ないのだけど、あなたのお名前と、関係は?」
なぜか疑いの目で見つめられる。私がスイレン姫とは、認識してくれなかった。もちろん、スイレン姫が、冒険者スタイルで現れるとは、だれも想像しないだろうけど。
「ええと、従妹のアイリスです。呼び出していただけると、助かりますが。」
「従妹ねぇ・・・ええと、サルベニア様に確認してくるから、ちょっと待っていてくれる?本物の従妹なら、問題ないけど。そうでない場合は、ちょっと面倒なことになるけど、貴方、大丈夫かしら?」
「え、本当の従妹ですが。証明しろといわれても・・・あ、本人に聞いていただければ大丈夫です。サクランボ色の髪をした、アイリスと言ってください。」
「わかったわ、疑ったりしてごめんなさいね。従妹とか、義妹とか、いろいろ理由をつけて、サルベニア様に近づきたい女性は多いから。ちょっと、ね。」
やはり、ソルに近づきたい女性はいっぱいたのか。私はめったに騎士団に来なかったから、知らなかった・・・。
入り口で待っていたら、ソルが慌ててやって来た。よほど急いできたのか、まだシャワーをした後の髪が半乾きのようだった。
「アイリス、私に会いに来てくれたのか?」
「ソル、ちょっと話がしたくて。静かに話せるところはある?」
「あ、ああ、騎士団の来客用の部屋があるから、そこが使えるか聞いてみるよ。」
ソルは受付の女性に、確認と鍵を借り受けて、戻って来た。私たちは、その部屋に移動して、ソルが部屋のドアをパタンと閉めた。そして、カチャっと鍵をかけた。
「アイリス・・・会いたかったよ。」
部屋に二人きりになったとたん、近づいてきたソルの腕の中に閉じ込められた。
「ソル!ソル!私、話をしたいと思って。話を・・・」
抱きしめられた腕から逃れようとしても、力強いその腕から、逃れられない。
「アイリス・・・さぁ。」
いつものように、顎を持ち上げられる。二つの紺碧が、紫の瞳を探し、唇を見つめる。・・・マズイ。
「ソル、ソル、まって。私、今はレオンの婚約者なの。ソルも、ララクライン様の婚約者だわ。」
口づけされそうになり、思わず手でソルの口を押える。これまで、あからさまに拒否したことはなかったので、ソルもちょっと驚いた顔をした。が、私の意図を組んでくれたのか、近づいていた顔を戻してくれた。
「・・・今は、確かにそうだ。だが、アイリスは領主から話を聞いたか?」
「え、ええ。ララクライン様が行方不明と聞いたわ。そして、このまま見つからない場合、私がソルと婚約することも。ねぇ、それは本当なの?私、なんだか信じられなくって。」
「信じられなくても、事実だよ。あと10日、ララクライン嬢が現れなければ、婚約だ。」
ソルは、私を納得させるように力強く、また抱きしめた。
「ソル・・・。私、ええと、そうじゃなくて。話をしたかったの。だから、少し離してくれる?」
ソルは黙っているが、腕をゆるめはしなかった。
「王制復古派が、関係していると聞いたわ。ソル、何か知っている?今回も、彼らが首謀ではないかと言われているけど。」
王制復古派、という言葉を話した途端、ソルはそれまでの腕の力を少し緩めた。そして、私の顔をみて話を聞き始めた。
「あと、帝国としては王政復古派を抑えたいけど、仮に私たちが結婚した後は、むしろ囮にして復古派を監視する、ということも聞いたわ。」
「それは、そうだろうな。帝国の考えることだ。」
私にとって、監視される人生なんて恐ろしいが、ソルは既にその覚悟があるようだった。王家に生まれ、王太子として育ったソルであれば、監視も、国民から注目される人生も、あまり変わりはないのかもしれない。
「ソルは、王制復古派の人たちを知っているの?・・・ララクライン嬢が、隠れている場所を、もしかして知っている?」
「アイリス、どうしてそう思うのかな。私が、無理やり事件を起こしているように聞こえるが。王政復古派のことは、知っているが。今回のことと関係しているかどうかは、わからない。」
サボは、少し突き放したような声で、私に答えた。
「ララクライン嬢のように、赤の日の結果が不服で、行方不明になるケースはあるよ。高位貴族であれば、特にね。」
腕を緩め、私とちょっと距離をとり、少し考えるようにソルは腕を組み始めた。しばらく沈黙が続く。
「アイリス、今はギューエ公爵家に戻っているのか。」
何か考えがまとまったのか、ソルは私のこれまでの行動を聞いてきた。
「うん、寮の荷物も、整理して持ってきてもらう手配をしたから、しばらくは父さまと暮らすことになるわ。」
「そうか・・・わかった。王政復古派の動きも心配だから、アイリスは公爵家に留まっていなさい。家からでないように、公爵にお願いしよう。」
「ソル!何を言っているの?私、ララクライン様を探したいわ。どうして、こんなことになったのか、知りたいもの。」
ソルは私を、家に閉じ込めようとしている。それだけは止めたい
「やはり、君は・・・いや、今は止めておこう。アイリス、さぁ、家に帰ろう。送ってあげるよ。」
一旦こうと決めた後は、考えを変えることのないソルは、すぐに行動を開始した。
王政復古派が、どのような意図かわかならいことを理由に、私の警備理由として、騎士団からギューエ公爵家に、護衛という名の軟禁対策要員が派遣されることが急遽決まった。
そして、私が公爵家に滞在する間、外出を制限するように、約束させられてしまった。
レオンに、あれだけ強く「ララクライン嬢を探し出すわ」と言っておきながら、家から出られなくなるなんて。自分が情けなくなってくる。王政復古派のことも、ソルが関わっているかどうかも、結局何もわからなかった。
こうして、私の家での軟禁生活が始まってしまった。
騎士団詰所の、受付をされている方に、声をかける。
「ソルディーエル?ああ、サルベニア様ね。・・・申し訳ないのだけど、あなたのお名前と、関係は?」
なぜか疑いの目で見つめられる。私がスイレン姫とは、認識してくれなかった。もちろん、スイレン姫が、冒険者スタイルで現れるとは、だれも想像しないだろうけど。
「ええと、従妹のアイリスです。呼び出していただけると、助かりますが。」
「従妹ねぇ・・・ええと、サルベニア様に確認してくるから、ちょっと待っていてくれる?本物の従妹なら、問題ないけど。そうでない場合は、ちょっと面倒なことになるけど、貴方、大丈夫かしら?」
「え、本当の従妹ですが。証明しろといわれても・・・あ、本人に聞いていただければ大丈夫です。サクランボ色の髪をした、アイリスと言ってください。」
「わかったわ、疑ったりしてごめんなさいね。従妹とか、義妹とか、いろいろ理由をつけて、サルベニア様に近づきたい女性は多いから。ちょっと、ね。」
やはり、ソルに近づきたい女性はいっぱいたのか。私はめったに騎士団に来なかったから、知らなかった・・・。
入り口で待っていたら、ソルが慌ててやって来た。よほど急いできたのか、まだシャワーをした後の髪が半乾きのようだった。
「アイリス、私に会いに来てくれたのか?」
「ソル、ちょっと話がしたくて。静かに話せるところはある?」
「あ、ああ、騎士団の来客用の部屋があるから、そこが使えるか聞いてみるよ。」
ソルは受付の女性に、確認と鍵を借り受けて、戻って来た。私たちは、その部屋に移動して、ソルが部屋のドアをパタンと閉めた。そして、カチャっと鍵をかけた。
「アイリス・・・会いたかったよ。」
部屋に二人きりになったとたん、近づいてきたソルの腕の中に閉じ込められた。
「ソル!ソル!私、話をしたいと思って。話を・・・」
抱きしめられた腕から逃れようとしても、力強いその腕から、逃れられない。
「アイリス・・・さぁ。」
いつものように、顎を持ち上げられる。二つの紺碧が、紫の瞳を探し、唇を見つめる。・・・マズイ。
「ソル、ソル、まって。私、今はレオンの婚約者なの。ソルも、ララクライン様の婚約者だわ。」
口づけされそうになり、思わず手でソルの口を押える。これまで、あからさまに拒否したことはなかったので、ソルもちょっと驚いた顔をした。が、私の意図を組んでくれたのか、近づいていた顔を戻してくれた。
「・・・今は、確かにそうだ。だが、アイリスは領主から話を聞いたか?」
「え、ええ。ララクライン様が行方不明と聞いたわ。そして、このまま見つからない場合、私がソルと婚約することも。ねぇ、それは本当なの?私、なんだか信じられなくって。」
「信じられなくても、事実だよ。あと10日、ララクライン嬢が現れなければ、婚約だ。」
ソルは、私を納得させるように力強く、また抱きしめた。
「ソル・・・。私、ええと、そうじゃなくて。話をしたかったの。だから、少し離してくれる?」
ソルは黙っているが、腕をゆるめはしなかった。
「王制復古派が、関係していると聞いたわ。ソル、何か知っている?今回も、彼らが首謀ではないかと言われているけど。」
王制復古派、という言葉を話した途端、ソルはそれまでの腕の力を少し緩めた。そして、私の顔をみて話を聞き始めた。
「あと、帝国としては王政復古派を抑えたいけど、仮に私たちが結婚した後は、むしろ囮にして復古派を監視する、ということも聞いたわ。」
「それは、そうだろうな。帝国の考えることだ。」
私にとって、監視される人生なんて恐ろしいが、ソルは既にその覚悟があるようだった。王家に生まれ、王太子として育ったソルであれば、監視も、国民から注目される人生も、あまり変わりはないのかもしれない。
「ソルは、王制復古派の人たちを知っているの?・・・ララクライン嬢が、隠れている場所を、もしかして知っている?」
「アイリス、どうしてそう思うのかな。私が、無理やり事件を起こしているように聞こえるが。王政復古派のことは、知っているが。今回のことと関係しているかどうかは、わからない。」
サボは、少し突き放したような声で、私に答えた。
「ララクライン嬢のように、赤の日の結果が不服で、行方不明になるケースはあるよ。高位貴族であれば、特にね。」
腕を緩め、私とちょっと距離をとり、少し考えるようにソルは腕を組み始めた。しばらく沈黙が続く。
「アイリス、今はギューエ公爵家に戻っているのか。」
何か考えがまとまったのか、ソルは私のこれまでの行動を聞いてきた。
「うん、寮の荷物も、整理して持ってきてもらう手配をしたから、しばらくは父さまと暮らすことになるわ。」
「そうか・・・わかった。王政復古派の動きも心配だから、アイリスは公爵家に留まっていなさい。家からでないように、公爵にお願いしよう。」
「ソル!何を言っているの?私、ララクライン様を探したいわ。どうして、こんなことになったのか、知りたいもの。」
ソルは私を、家に閉じ込めようとしている。それだけは止めたい
「やはり、君は・・・いや、今は止めておこう。アイリス、さぁ、家に帰ろう。送ってあげるよ。」
一旦こうと決めた後は、考えを変えることのないソルは、すぐに行動を開始した。
王政復古派が、どのような意図かわかならいことを理由に、私の警備理由として、騎士団からギューエ公爵家に、護衛という名の軟禁対策要員が派遣されることが急遽決まった。
そして、私が公爵家に滞在する間、外出を制限するように、約束させられてしまった。
レオンに、あれだけ強く「ララクライン嬢を探し出すわ」と言っておきながら、家から出られなくなるなんて。自分が情けなくなってくる。王政復古派のことも、ソルが関わっているかどうかも、結局何もわからなかった。
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