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食堂

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しばらくして、ソルが帝都から帰って来た。そして早朝から、私に会いに来てくれた。

「アイリス、元気にしていたかい?」

「ソル!久しぶりね。帝都はどうだった?」

「ああ、帝都はせわしなくてね。他にも用事ができたから、思わず滞在が伸びてしまったよ。」

 そう言うと、私の服装を見て、眉をひそめた。

「その恰好は・・・。また妖銃の練習をしているのか?」

 私がいつものホットパンツにロングブーツ姿の、冒険者スタイルにしているのをみたソルは、ちょっと不機嫌な声で私に尋ねた。この格好を好んでいないのは知っているが、これが一番、動きやすい。

「あ、師匠が来てくれているの。それで、訓練を兼ねた私の魔物狩りにも、付き合ってくれていて。上達している気がするよ。」

 本当は、上達しているかどうか、自信はないのだけど。でも、そうでも言わないと、またソルに嫌な顔をされそうだ。元々、ソルは私がサボから教えてもらうことを、嫌っている。

ソルが小さなころは、私と一緒に基礎的な訓練につきあってくれた。体力づくりの為の走り込みとか、筋力をつけるためのエクササイズとか。私よりも、ソルの方が役立っていたみたいだけど。でも、学園の騎士コースに入ると、サボの訓練には、参加しなくなった。

一度、理由を聞いてみたら、騎士と銃士は違うとか、何とか言っていたけど。教員への遠慮もあったのかな。ソルはサボから離れるようになり、それ以来、二人の仲も、良いとも悪いとも言えない―――そんな関係になった。

「そうか、サボ師匠が来ているのか。私も久しぶりに、挨拶しよう。一緒に行くよ、アイリス。」

「・・・いいけど、私の邪魔はしないでね。危険なところも、行くんだから。」

「無理に、妖銃使いなどにならなくても・・・。まぁ、今は好きにしたらいい。でも、無茶をしないように。」

「わかってる。じゃ、一緒に行くから、乗せて行って。」

 私は、久しぶりにソルの馬に乗った。ソルは騎士になってから、この白馬に乗って移動している。白馬に乗った王子様、といいたいところだけど、普段は街の警備も兼ねているから、顔つきは厳しい。

これで愛想が良ければなぁ・・・あ、また王室ファンが増えてしまうか。馬上は普段より視線が高くなるし、風も感じることができる。私も、自分の馬を持てればいいけど、今は学生の身だから、ちょっと難しい。

「私も、馬を走らせたいなぁ。白樺の林の中を、風をきって走ることができたら、このモヤモヤも晴れそう。」

 ふと、つぶやいてしまう。アンケートを白紙でだした私は、ようするに誰も選んでいない。『赤の日』までは、宙ぶらりんの状態である。

「馬が欲しいのか。アイリスには、もうちょっと女性らしいものを、強請って欲しいが、何もないのか?」

「え?欲しいもの?そうねぇ、馬以外だと、新しい軽量のプロテクション・スーツとか、あと魔力とか高める手袋があるって、聞いたことあるけど。そうした防具とか武具が欲しいかな。」

 私の答えは、ソルの顔を曇らせてしまったようだ。ソルと結婚したら、冒険者とか、妖銃使いになることも、許してくれなさそうだなぁ。まぁ、私が情けないくらい弱いから、心配なんだろうけど。

「まぁ、それがアイリスの希望なら、仕方ない。今度、一緒に防具を見に行こうか。卒業祝いも兼ねて、ね。」

 でもやっぱり、ソルは優しい。思えばいつでも、このソルのやさしさに甘えていたように思う。

 そうしているうちに、目的地のサボの宿の、食堂についた。既にそこは、朝食を食べる人たちで混みあっていた。

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