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最新治療

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「お前なぁ、俺が魔蔦の根っこを抑えておかないと、ファイアもだせなかっただろうが。ほれ、手をみせてみろ。」

 そう言って私の手を持つと、火傷の痕をみてチッと舌打ちをした。

「せっかくの白い肌だっていうのに、火傷なんかするなよ。痕消してやるよ、ちょっと我慢しろよ。」

 レオンはつかんだ私の両手をぐっと引き寄せて、「動くなよ」と言い、火傷の痕を、ヌルっと舐めはじめた。

「ひえぇえ、なんで舐めているのよ、いつもは指でなぞるだけでしょ。」

「俺の最新の医療魔術の研究成果だ。火傷の痕を治すには、舐めるのが一番だ。」

 ヌルっ、ヌルっと手を舐めていく。レオンの舌は、腕に巻き付いた痕から始まり、手首、手のひら、そして指の1本1本まで舐めた。熱い舌で舐めた。時々、レオンから吐息がハァと漏れる。

「・・・これって、本当に最新治療なの?」

 私がそう言ったところで、最後に右の手の親指を咥えて、上目遣いで私を見上げてきた。その赤い視線に、ぞくっとする。研究成果というけど、魔術を発動させているだけだろう。

「ねえ、本当に舐めないとダメなの?」

魔術の中でも、治癒術を使えること自体、凄まじく優秀なんだけど、その手法がいつも、どこか残念なのは何故だ。この前は指でなぞられながら、くすぐったかったし。今回は舐められている。

「ダメだ。お前の肌なら、これが一番いい。」

 そう言いながら、レオンは首筋をペロッと舐めた。私から「ハァっ」という吐息が漏れる。

「レ、レオン。なんか、くすぐったい・・・」

 彼は黙って、私の首筋から、耳元に移動し、頬を舐めた。ヌルっとした感触が、肌にくる。

 頬にレオンの唇が、触れる。その後、ちょっと彼は止まって、私の顔をじっと見ている。顔まで火傷していないと思うけど・・・

「ん、これで良し。ま、後は帰ってからだな。」

 舐められたけど、助けてもらったことに代わりはない。危険なダンジョンに行く時は、気が付くといつも後ろにいて、中途半端な魔術しか使えない私に嫌味をいいながらも、こうして助けてくれる。

私の得意分野は妖銃ではあるが、攻撃力が低いから、正直助かっていたりする。ちょっと、いや、かなり変態だけど。

「レオン、ありがとう。口は悪いし変態だけど、腕は相変わらずいいよねぇ。火傷痕もきれいになった。ほんと、助かったわ。」

「お前も十分、口が悪いぞ。お礼のパンツを忘れるなよ。あ、匂いはそのままにしておいてくれ。」

「人が素直にお礼を言えば。レオン、鼻毛ボーボーがいいか、一本だけ顔から長いひげがでるか、どちらか選ばせてあげるわ。」

「お前、妖力を無駄に使うなよな!俺の高貴なイメージが崩れるだろうが!」

 いつもレオンとは、言い争いをしてしまう。千年の歴史を誇るサザン帝国といえども、第七皇子となると関心もないのか、帝国の東の辺境にあたるサルベニア領に、12歳から預けられている。

私も、同じ頃に学園に通い始めたので、学園では一緒に5年間、過ごしてきた。

 私は、旧サルベニア王国の王族の一人でもあったので、身分的には同じようなものだった。同じ王族という立場からか、他のクラスメイトとは違う、空気というか、緊張感を共有していたと思う。

レオンが揶揄ってくるのは、私だけ、というのも知っていた。

「まぁ、魔蔦から魔石も取れたから、これでいいか。レオンは?」

「俺か?もう下層で一匹倒してきたさ。当たり前だろう?」

 そういうと、私の魔石とは明らかに大きさも輝きも違う魔石をとりだした。

レオンは魔力だけでなく、騎士科のクラスに入って剣技も鍛えているから、私とはダンジョンでの実力が違う。悔しいが、実力差は認めざるを得ない。

「まぁ、私は無事に卒業さえできればいいから、いいのよ。魔石を採取することが、課題だから。」

 とりあえず、目的は果たしたので、出口に向かうことにすると、レオンが物言いたげに睨んできた。

「オイ、まだお礼をもらっていない。匂いのついている、パンツだ。」

「はぁぁぁぁ?何言ってるの!あげるわけ、ないでしょ!この変態!」

 揶揄われた私は、怒った勢いでレオンを平手打ちしようと右手を上げるが、その手をレオンに捕まれた。

「まぁ、乱暴な姫からのお礼は平手打ちか。俺の趣味じゃないから、今日はこれで我慢してやるよ。」

 そういうと、右手をつかまれたまま動きのとれない私に近づいてきた。何かされると、思わずギュッと目をつむる。すると、唇を何か、暖かいものがサッと触った感触があった。

それがレオンの唇だったと認識したのは、驚いて目を開けた私のすぐ近くに、彼の顔があったからだ。

「―――!!!―――」

 驚きすぎて言葉にならない。立ちすくんだ私に、レオンは右手をつかんだまま、出口に向かって歩きはじめた。

「また、魔蔦に捕まる前に、このダンジョンを出るぞ、ついてこい。」

 私たちは会話もないまま、手をつかまれて歩くことになった。レオンはそのまま街に帰るまで、私の手を離さなかった。

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