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結婚披露宴②

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 ◆◆◆

 予定していた行事をこなしていくと、後は宴会だけとなる。城のあちこちで祝い酒が振る舞われ、普段と違い音楽団が演奏して賑やかだ。

 ようやくアミフェ姉さまの姿を見つけると、私はすぐに駆け寄っていった。

「アミフェ姉さま!」
「まぁ、アリーチェ、とっても綺麗よ」
「姉さま、姉さま!」

 姉さまは燃える炎を彷彿とさせるような、えんじ色の華やかなドレスを着ている。豊満な胸の谷間を久しぶりに見た私は、そこに顔を埋め柔らかさを堪能した。

「ああ……姉さまのオムネ……」

 よくルドヴィーク様は私の胸にほおずりしているけれど、気持ちはよくわかる。こんなにも柔らかいと、本当に気持ちがいい。

 懐かしさもあり、私はアミフェ姉さまに抱き着いたまま顔を上げた。

「もうっ、アリーチェは変わらないのね。ルドヴィーク様との結婚性活はどう?」
「お姉さま、お姉さまに聞きたいことがたくさんあります。私、射精管理が上手くできないんです。ルドヴィーク様のルドヴィーク様はいつも暴れん坊で、全くおりこうにならないんです」
「そうなの? だったら道具を使ってみるといいわよ」
「道具ですか?」

 顔をコテンと倒すと、なぜか隣に立っているルドヴィーク様が慌てふためいた様子で口を挟んできた。

「アリーチェッ! な、何を言っているんだっ」

 いけない、隣にいた彼の存在をすっかり忘れていた。コホン、と咳をすると私は姉さまの胸から顔を放し、ルドヴィーク様を紹介する。

「姉さま、こちらがバルシュ辺境伯のルドヴィーク様です」
「初めまして、姉のアミフェ・ベルカでございます。バルシュ辺境伯閣下、本日はお招き下さり、ありがとうございました」

 アミフェ姉さまは綺麗な姿勢で淑女の礼をすると、ルドヴィーク様は目元を緩めて微笑んだ。

「あなたがアミフェ殿ですか。いや、常々アリーチェから話を伺っていますので、とても身近に感じております」

 ルドヴィーク様はにこやかに対応されている。いつもよりご機嫌な様子をみると、美人でモテモテのアミフェ姉さまの魅力に、やっぱり引き寄せられているのだろうか。

 ――それはちょっと、嫌だなぁ……

 アミフェ姉さまは大好きだけど、ルドヴィーク様は私だけのもの。思わず彼の腕を掴みなおし、袖をギュッと握ってしまう。

「アリーチェ? どうした」

 優し気な目をして私を見下ろすルドヴィーク様に、私は思わず目を潤わせて見つめてしまう。

「あの、ルドヴィーク様が希望されても、やっぱりサンピーはちょっと無理……」
「は?」

 目を点にした彼は、口をポカンと開けて動きを止めた。でも、どう考えても彼は私だけのものでいて欲しい。そんな私達の様子を見ていた姉さまが紅色をした唇の口角を上げた。

「まぁ、アリーチェ。何を言うかと思ったら、サンピーだなんて。そんなこと、姉妹で行うものではなくてよ。ほら、閣下も驚かれているわ」

 優しく諫められると、隣に立つルドヴィーク様がぽつりと呟く。

「アミフェ殿は意外とまともだな……」

 姉さまはにっこりと笑っているけれど、以前はよくサンピーをされていた。当時の私は「そうなんだ」としか思わなかったけれど、今はそれがどれだけ特殊なことか、わかっているつもりだ。

「でも姉さま、以前はあんなにもお好きでしたのに」
「そうねぇ、でも、最近はそうでもないのよ」

 眉根を寄せた姉さまは、私の手をとると両方の手で握りしめた。

「アリーチェ、あなたの手の不思議な力のことだけどね」
「あ、はい。実はそのこともお話したくて。どうやら聖力といって、貴重なものだったらしいです」
「聖力?」
「はい、でももう大分弱まってしまいました」

 姉さまは私の手を握ったまま、ジーっと見つめてくる。なんだかソワソワとしてしまうけど。

「私ね、あなたに靄を払われなくなってから、以前のような性欲がなくなったの。だから、あなたの力が関係しているんじゃないかなって、思うのよね」
「はい?」
「ほら、お父様もあなたに靄を払って貰うようになってから、弟ができたじゃない」
「……」
「だからね、あなたの力は聖力っていうより、性力とか精力って言う方がいいと思うのよね」

 アミフェ姉さまはニコリと笑うと、トドメのように一言を放つ。

「アリーチェ精女様、また私の靄を払って頂けますか?」
「ね、姉さまっ!」

 聖女ならともかく、精女なんて呼ばれたくはない。わなわなと口を震わせながら、私は反論する。

「そんなのおかしいですっ! だって、ルドヴィーク様は靄を払っても払ってなくても、毎晩ギンギンで凄いですからっ!」
「……アリーチェ……頼むから、口を閉じてくれないか……」

 額に手をあてたルドヴィーク様は、顔を天井に向けていた。その背後で、私たちの会話を聞いていたのか騎士団長がお腹を抱えて苦しそうにしている。

 アミフェ姉さまは一瞬驚いたように目を丸くしたけれど、すぐにいつものように妖艶に微笑んだ。

「夫婦の仲が良いようで良かったわ。でも、もっと仲良くなれるようにアリーチェ、勉強を怠ってはいけないわよ」
「姉さま、格言ですね! はい、また後でいろいろと教えてください! 射精管理の道具もあるなんて、楽しみです」
「そうね、また明日にでもお話ししましょうね」

 にこやかに会談していると、ルドヴィーク様は再びポツリと呟いた。

「頼むから普通にしてくれ……」

 がっくりと肩を落としている彼の背中を、騎士団長がいい顔をしながら叩いている。

 こうして姉さまと再会できたからには、新たな知識を得てルドヴィーク様を悦ばせたい。私は拳をギュッと握りしめるのだった。
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みんなの感想(65件)

pinkmoon
2024.03.24 pinkmoon

完結、お疲れ様でした✨
ああ…もう終わってしまうのかと思うと、ものすごく淋しくて残念です😢

最後の最後で漸く「人違い」に気付いて貰えて良かったですが、✨新品🍒✨のはずのアリーチェが姉仕込みの豊富な(性)知識と「けしからんボディ」の持ち主だったことも色々誤解が誤解を呼んでしまって… 本人が気にして(気付いて)なくても、読者側としてはデイモンドやセルジュ(⇐個人的にはアリーチェの敵認定)の勝手な思い込みにムカついておりました。(特にセルジュとかセルジュとかセルジュ…以下100回リピ)

そういえば、魔女の蔦のせいで消えてしまったアリーチェの力、もう戻ってこないのでしょうか…?何年か経ったら戻る可能性はないのでしょうか?なくてもルドの呪いは完全に解けてるので十分幸せにはなると思いますが、あるととっても便利そうなのでこのまま消えてしまうのは勿体ないなぁ…なんて思ったりします😔

本物の「魅惑の子爵令嬢」ことアミフェお姉様と、ルドを始めとした辺境伯側の勘違いをしていた人々とが邂逅したらどんな感じだったのか……残念ながらその機会がないまま終わってしまったので、心残りです。もし番外編を執筆なさる機会があれば、そんなシーンが少しでもあるといいなぁと思います☺️

約1ヶ月、本当に楽しかったです☺️
面白くて楽しい作品をありがとうございました✨ 出来れば番外編もお待ちしています☺️

季邑 えり
2024.03.24 季邑 えり

はわわ、熱い感想ありがとうございますっ!

新品アリーチェと実は新品ルドヴィークと、勘違いすれ違いのラブコメ、楽しんでいただけたようで嬉しいです!私も書いていてとても楽しかったです!!!!

アミフェ、番外編では登場する予定です! 近況にもあるように、ちょっと先に進めないといけないことがあってまだ書けていませんが、ネタはたくさんありますので!

お待ちください~💞

解除
はらり𓃠
2024.03.23 はらり𓃠

完結おめでとうございます🍾㊗️

日々の楽しみが一つ減った寂しさもあり‪(´・ω・`) ‬

誤解が解けるまで時間かかったけど、アリーチェの言動も🔰に見えなかったということで😆

いやいや、もう最高に楽しかったです💕
番外編激しく希望(*´꒳`*)/

季邑 えり
2024.03.23 季邑 えり

ひゃー!日々の楽しみだったと言っていただけるなんて✨✨

笑っていただけるのが何よりです! 番外編も書きますねー💞

解除
朝倉真琴
2024.03.23 朝倉真琴

まだ姉から教わる気だった🤣!!でも女性に振り回される方が家庭は安泰とかも聞くので……無自覚にぶんぶん振り回して一人勝ちで家内安全☺お姉さんにも良い出逢いが訪れますように✨

季邑 えり
2024.03.23 季邑 えり

ええ、まだまだアリーチェ、ルドヴィーク相手に技の向上に努めて……いくのかな(笑)

まだまだ試したい道具とかシチュとか薬とかありますからね……また番外編を書きたいと思います!

解除

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