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初恋の真実②
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「ルドヴィーク様。私もあの時助けて頂いてから、ずっとお慕いしていましたよ。本当に助けて頂いて、ありがとうございました」
「あ……いや、そうか。だが……アリーチェ、本当に君だったのか」
「はい、だから結婚の申し込みが来た時、姉さまを差し置いて私が手を挙げたのです。手紙には名前が書かれていなかったので」
「なに?」
「いえ、ですからベルカ子爵令嬢と結婚したいとしか、書かれておらず……って、ご存知なかったのですか?」
こちらも驚きの声を上げる。するとルドヴィーク様ははぁ、と息を漏らして正直に告白した。
「あの時はデイモンドに全て任せていたのだ。全く興味がなかったからな……それも、魅惑の子爵令嬢と噂されるのであれば、お飾りの妻になってくれるだろうと、都合のいいことを考えていた」
「まぁ……!」
「俺の方こそ、礼を言わなければな。アリーチェが手を挙げてくれなかったら、こうして俺達が夫婦になることはなかったのだから」
「ええ、そうですね」
ルドウィーク様は答え合わせをするように、状況を整理していく。まるでパズルをはめるように、私達は、お互いの状況を確かめ合った。それはまるで、偶然が糸を紡いで織りなす綺麗な織物のように繋がっていく。
「なんと……天の采配のようだな」
「そうですね。こうした出会いが、運命と言うのかもしれませんね」
にっこりと笑った私は、手元にあるハンカチを再び見直した。少しよれているけれど、あの時と同じように折りたたまれている。
「これをずっと、手元に持っていてくださったのですね」
「ああ、そうだが……どうした? アリーチェ」
——ずっと手元にもっていたのよね……
ルドウィーク様は時折ハンカチを取り出しては眺めていたと、ゼフィールが話していた。私であったからいいものの、違う女の人だったらなんか嫌な感じがする。
それも、今まで大切にしていたと聞くと……なんとなくモヤモヤする。
「これ、結婚した後も持っていたのですよね。大切に、手元に」
「そ、そうだな……ただ、単に処分し忘れただけで……そんなに大切にしていたわけでは……」
「なんかちょっと、自分に嫉妬しています」
口をすぼめて彼を見上げると、ルドウィーク様が「う」と一歩後ずさる。
「私だったから、いいんですけど……ルドウィーク様は、これは他の女の人の物だと思って、持っていたんですよね」
「あ、あぁ、だが……アリーチェ……」
首を左右に振った彼を、私は壁に追い詰める。そして壁に片手をつくと空いた方の手で拳を握り、口をキュッと結んで睨みつける。
「もうっ……第八条で『嫉妬させられたら射精管理』って、教わりました」
「は? 射精……管理?」
壁に手をつけた私に挟まれた彼は、呆れたように驚いている。
「君は一体だれからそんなことを習ったんだ」
「アミフェ姉さまですっ!」
「いや、だからそれはちょっとおかしいのでは……」
そう言われるとちょっと自信がなくなるけれど、アミフェ姉さまは何といっても『閨の格言』を教えてくれた人だ。尊敬している。
「閨の格言は大切だから暗唱しろと言われました」
「だからそれがっ、あっ」
つべこべ言われる前に、私はさっとしゃがみ込んでルドウィーク様のズボンを下ろす。「何をするんだっ」と言われたので「射精管理です」と答えると、なぜか彼は目元をうっすらと赤くした。
思えば事件が終わってから、同じ寝台で寝ていても彼は私を包み込むだけだった。まだ万全でないから、と気遣われている。でも……もう、いい加減に夫婦生活を復活させたい。
私は前ボタンを外してくつろがせると、目の前にはいつもはギンギンに勃っているのに、ちょっと違うアレが目に入った。
「わぁ、ショボち……んっ、んんっ」
いけない、男性器がふにゃふにゃしているなんて聞かせてはイケないから、咄嗟に口を手で覆う。
アレは窓から入る朝日を浴びて力を得つつあるけれど、いつもと比べたらまだ小さい。ルドウィーク様はサッと目を手で覆うと、顎を上げて天井を仰ぎ見た。
「あ……いや、そうか。だが……アリーチェ、本当に君だったのか」
「はい、だから結婚の申し込みが来た時、姉さまを差し置いて私が手を挙げたのです。手紙には名前が書かれていなかったので」
「なに?」
「いえ、ですからベルカ子爵令嬢と結婚したいとしか、書かれておらず……って、ご存知なかったのですか?」
こちらも驚きの声を上げる。するとルドヴィーク様ははぁ、と息を漏らして正直に告白した。
「あの時はデイモンドに全て任せていたのだ。全く興味がなかったからな……それも、魅惑の子爵令嬢と噂されるのであれば、お飾りの妻になってくれるだろうと、都合のいいことを考えていた」
「まぁ……!」
「俺の方こそ、礼を言わなければな。アリーチェが手を挙げてくれなかったら、こうして俺達が夫婦になることはなかったのだから」
「ええ、そうですね」
ルドウィーク様は答え合わせをするように、状況を整理していく。まるでパズルをはめるように、私達は、お互いの状況を確かめ合った。それはまるで、偶然が糸を紡いで織りなす綺麗な織物のように繋がっていく。
「なんと……天の采配のようだな」
「そうですね。こうした出会いが、運命と言うのかもしれませんね」
にっこりと笑った私は、手元にあるハンカチを再び見直した。少しよれているけれど、あの時と同じように折りたたまれている。
「これをずっと、手元に持っていてくださったのですね」
「ああ、そうだが……どうした? アリーチェ」
——ずっと手元にもっていたのよね……
ルドウィーク様は時折ハンカチを取り出しては眺めていたと、ゼフィールが話していた。私であったからいいものの、違う女の人だったらなんか嫌な感じがする。
それも、今まで大切にしていたと聞くと……なんとなくモヤモヤする。
「これ、結婚した後も持っていたのですよね。大切に、手元に」
「そ、そうだな……ただ、単に処分し忘れただけで……そんなに大切にしていたわけでは……」
「なんかちょっと、自分に嫉妬しています」
口をすぼめて彼を見上げると、ルドウィーク様が「う」と一歩後ずさる。
「私だったから、いいんですけど……ルドウィーク様は、これは他の女の人の物だと思って、持っていたんですよね」
「あ、あぁ、だが……アリーチェ……」
首を左右に振った彼を、私は壁に追い詰める。そして壁に片手をつくと空いた方の手で拳を握り、口をキュッと結んで睨みつける。
「もうっ……第八条で『嫉妬させられたら射精管理』って、教わりました」
「は? 射精……管理?」
壁に手をつけた私に挟まれた彼は、呆れたように驚いている。
「君は一体だれからそんなことを習ったんだ」
「アミフェ姉さまですっ!」
「いや、だからそれはちょっとおかしいのでは……」
そう言われるとちょっと自信がなくなるけれど、アミフェ姉さまは何といっても『閨の格言』を教えてくれた人だ。尊敬している。
「閨の格言は大切だから暗唱しろと言われました」
「だからそれがっ、あっ」
つべこべ言われる前に、私はさっとしゃがみ込んでルドウィーク様のズボンを下ろす。「何をするんだっ」と言われたので「射精管理です」と答えると、なぜか彼は目元をうっすらと赤くした。
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私は前ボタンを外してくつろがせると、目の前にはいつもはギンギンに勃っているのに、ちょっと違うアレが目に入った。
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いけない、男性器がふにゃふにゃしているなんて聞かせてはイケないから、咄嗟に口を手で覆う。
アレは窓から入る朝日を浴びて力を得つつあるけれど、いつもと比べたらまだ小さい。ルドウィーク様はサッと目を手で覆うと、顎を上げて天井を仰ぎ見た。
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