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二晩続けての『待て』②

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◆◆◆ 《アリーチェ視点》
 
 チュン、チュンと鳥の鳴き声が聞こえると共に、朝日が顔にあたっている。うっすらと瞼を上げると、目の前には私の顔を凝視する美丈夫がいた。

「えっ」

 黒髪を無造作にかきあげ、気怠そうな目をしてこちらを見つめている。すっと通った鼻筋に男らしい眉。黒曜石のように美しい瞳に、薄くとも形の良い口元。

 ひとつひとつの配置が完璧で、すさまじい美貌の男性が寝衣の胸元を開け、たくましい胸筋の筋をちらりと見せている。

 こんなにも美しい人は見たことが無くて、ドキドキしてしまう。

 ——ル、ルドヴィーク様よね……

 男の色気をこれでもかというほど放ちながら、腰に響く低い声を放った。

「……おはよう、アリーチェ」

 どうして、こんなにも美しいご尊顔の方が目の前にいるのか? と思うけれど、昨夜私が彼の顔にかかる靄を払いきったからに違いない。

 靄はどうやら、彼の本来持つ輝きとか尊さとか麗しさとか……とにかく、全てを隠していたようだ。今の彼は、後光がさすように素晴らしいお顔をしている。

「は、はいぃぃ……!」

 会話をするのもおこがましいけれど、ルドヴィーク様は私の旦那様だ。けれど、肉体から放たれる雄の匂いにくらくらしてしまい、私は掛布を握りしめる。

「どうした? 今朝もまだ……やっぱりダメなのか?」

 ルドヴィーク様は私の顔にかかる髪をとって、耳にかけた。その仕草だけで血が頭に登ってくる。きっと顔は真っ赤になっているに違いない。

「ダメ! ダメです……! 朝からなんて」

 こんな綺麗な人の前で裸になるなんてできない。同衾するためには、お互いの裸体を晒す必要があるけど、私はこんな明るい陽射しの中で見せる勇気はない。

「……そうか」

 私が答えると、ルドヴィーク様はがっくりと肩を落とし残念そうに眉根を寄せている。そんな憂いのある顔も尊い。こんなにも麗しい顔をした方のアレを、私は昨日、胸に挟んで……と思ったところで限界が来てしまう。

「あのっ、今日はいい天気ですね!」
「あ、ああ……そうだな」

 ふっと顔を横に向けた隙に、私はがばりと起き上がると寝台を降りた。昨日のようにねだられると、断る自信がない。いや、断ってはいけないのかもしれないけど、ルドヴィーク様がこんなにも美麗な方だと思っていなかった。だから……ちょっとだけ待って欲しい。

「こ、今夜は……今夜は、きちんと準備しますので!」

 私はありえないほど心臓をばくばくとさせながら、主寝室を出て私室に向かう。あんなにも色っぽくて男らしくて視線だけで孕んでしまいそうなルドヴィーク様の近くには、恥ずかしくていられなかった。
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