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6.帝国への入り口
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王宮から帝国の検問までは、1週間ほどの道のり。
アシュリー達は、途中の街で何度か宿をとりながら進んでいった。
その道中、民衆の間では、アシュリーの婚約破棄の話題で持ちきりだった。
王都に近い都市だと、アシュリーを非難する声が多かったが、国境沿いに進むに連れて、次第に同情と心配の声が多くなっていった。
これは国境沿いにある村や街の主な収入は、農業または他国からの商人との商売によって成り立っている部分が大きい。
王妃セシルは元は平民であったことから、その娘であるアシュリーに好意的なのだ。
その後の道中も何事もなく進んでいき、アシュリー達は帝国との国境であり、帝国への入り口でもある、検問に差し掛かる。
「これが帝国への検問所」
「すごい人だかりですね~」
「彼の帝国ですからね。いろいろな目的で来る人がいるということですよ」
他国との交易から帰ってきた人……
帝国で一攫千金を夢見ている人……
住んでた領地から逃げてきた人……
自分だけの居場所を求めてくる人……
様々な人たちで日々あふれていた。
「私たちも行きましょう」
アシュリーがそういうと、御者は馬車を走らせ……
「止まるのじゃ!」
ようとしたところで、呼び止められる声がして、慌てて停車する。
アシュリー達の馬車の前に立ちふさがったのは、アシュリーと同じくらいかという年齢の女の人の姿が。
身に着けている衣服や装飾品は、遠目から高価なものだと分かるほどで、明らかにこの場に似合っていない。
「帝国への入国希望じゃな。光栄に思うがいい。わらわが検査を担当することを!」
その身なりに似つかわしくない豪快な物言いに唖然としているアシュリー達。
女の人はアシュリー達の様子に目もくれずに、馬車の周囲をぐるりと見て回る。
馬車を見てから御者、それから中にいるアシュリー達を。
「商人……いや、どこかの貴族じゃな。一行の主は……お主か?」
女の人はアシュリーに声をかける。
アシュリーたちは、道中で山賊等の襲撃を受け辛くするために、全員商人に扮していたからだ。
それを女の人は一瞬で見破り、更に主であるアシュリーに声をかけてきた。
目の前の女の人に、警戒するアシュリー。
「……はい」
「そう警戒するでない。アシュリー・クローネ第一王女殿下」
「!?」
更にはアシュリーの正体も言い当ててしまった。
侍女の一人であるウリスが、アシュリーをかばうように位置を移動する。
「うむ。見事な身のこなしじゃな。そこの御者と護衛もなかなかの手練れじゃ」
御者や護衛の騎士は、何かあればすぐに剣を抜ける体制をとっている。
「いやー。そろそろこちらに到着する頃かと思い、なんとなく来てみたら。大当たりじゃな!」
「私たちがこちらに来ることを知っている……?」
アシュリーが女の人の言葉が何か引っ掛かったと思いきや……
「レオノーラ皇女殿下!」
検問所の衛兵が女の人のことをそう呼んだ。
「勝手に行動されては困ります」
「良いではないか、暇つぶしにお主らの仕事も手伝ってやったろうに。少しフラっと動くくらい……」
「陛下に報告しますよ?」
「ごめんなさい」
女の人は衛兵にも気さくな態度であったが、衛兵が今の出来事を陛下に報告するといった瞬間に、一瞬でその態度を翻し速攻で謝っている。
目の前で女の人は衛兵から怒られているが、アシュリー達はその光景より、今出ていた名前のほうに驚いていた。
「レオノーラ皇女殿下って確か……」
「帝国の第二皇女殿下のお名前ですよね?」
女の人はアシュリー達の方を振り返って。
「帝国へよく来たな! アシュリー・クローネ第一王女殿下。わらわの名はレオノーラ・エスメラルダ。これからよろしくの!」
アシュリー達は、途中の街で何度か宿をとりながら進んでいった。
その道中、民衆の間では、アシュリーの婚約破棄の話題で持ちきりだった。
王都に近い都市だと、アシュリーを非難する声が多かったが、国境沿いに進むに連れて、次第に同情と心配の声が多くなっていった。
これは国境沿いにある村や街の主な収入は、農業または他国からの商人との商売によって成り立っている部分が大きい。
王妃セシルは元は平民であったことから、その娘であるアシュリーに好意的なのだ。
その後の道中も何事もなく進んでいき、アシュリー達は帝国との国境であり、帝国への入り口でもある、検問に差し掛かる。
「これが帝国への検問所」
「すごい人だかりですね~」
「彼の帝国ですからね。いろいろな目的で来る人がいるということですよ」
他国との交易から帰ってきた人……
帝国で一攫千金を夢見ている人……
住んでた領地から逃げてきた人……
自分だけの居場所を求めてくる人……
様々な人たちで日々あふれていた。
「私たちも行きましょう」
アシュリーがそういうと、御者は馬車を走らせ……
「止まるのじゃ!」
ようとしたところで、呼び止められる声がして、慌てて停車する。
アシュリー達の馬車の前に立ちふさがったのは、アシュリーと同じくらいかという年齢の女の人の姿が。
身に着けている衣服や装飾品は、遠目から高価なものだと分かるほどで、明らかにこの場に似合っていない。
「帝国への入国希望じゃな。光栄に思うがいい。わらわが検査を担当することを!」
その身なりに似つかわしくない豪快な物言いに唖然としているアシュリー達。
女の人はアシュリー達の様子に目もくれずに、馬車の周囲をぐるりと見て回る。
馬車を見てから御者、それから中にいるアシュリー達を。
「商人……いや、どこかの貴族じゃな。一行の主は……お主か?」
女の人はアシュリーに声をかける。
アシュリーたちは、道中で山賊等の襲撃を受け辛くするために、全員商人に扮していたからだ。
それを女の人は一瞬で見破り、更に主であるアシュリーに声をかけてきた。
目の前の女の人に、警戒するアシュリー。
「……はい」
「そう警戒するでない。アシュリー・クローネ第一王女殿下」
「!?」
更にはアシュリーの正体も言い当ててしまった。
侍女の一人であるウリスが、アシュリーをかばうように位置を移動する。
「うむ。見事な身のこなしじゃな。そこの御者と護衛もなかなかの手練れじゃ」
御者や護衛の騎士は、何かあればすぐに剣を抜ける体制をとっている。
「いやー。そろそろこちらに到着する頃かと思い、なんとなく来てみたら。大当たりじゃな!」
「私たちがこちらに来ることを知っている……?」
アシュリーが女の人の言葉が何か引っ掛かったと思いきや……
「レオノーラ皇女殿下!」
検問所の衛兵が女の人のことをそう呼んだ。
「勝手に行動されては困ります」
「良いではないか、暇つぶしにお主らの仕事も手伝ってやったろうに。少しフラっと動くくらい……」
「陛下に報告しますよ?」
「ごめんなさい」
女の人は衛兵にも気さくな態度であったが、衛兵が今の出来事を陛下に報告するといった瞬間に、一瞬でその態度を翻し速攻で謝っている。
目の前で女の人は衛兵から怒られているが、アシュリー達はその光景より、今出ていた名前のほうに驚いていた。
「レオノーラ皇女殿下って確か……」
「帝国の第二皇女殿下のお名前ですよね?」
女の人はアシュリー達の方を振り返って。
「帝国へよく来たな! アシュリー・クローネ第一王女殿下。わらわの名はレオノーラ・エスメラルダ。これからよろしくの!」
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