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3章
20.お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――――――――
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場所は変わって公爵領。
サーシャがいなくなってからの侯爵領は、かつての栄華が嘘のような有り様。
何故か公爵領だけ自然災害が襲い……
何故か公爵領の使用人に調度品を持ち逃げされたり……
運悪く公爵家の全員が食べ物にあたって3日間寝込む羽目になったり……
ここのところ良くない日々が続いていた。
「貴様! またわしに黙ってドレスなんぞ買いおって!」
「何で貴方にいちいち言わないといけませんの!」
「うるさい! 今家には金がない! 貴様だって分かっているだろ!」
「そんなの私の知ったことじゃありませんわ!」
と最近では毎日喧嘩ばかりで、
使用人たちもこの状況に不味いと感じたのか次々と辞めていき、残っているのは古くからいる侍女長と執事長だけ。
その二人も、今月いっぱいで辞めることになっている。
「お父様、お母様」
言い合いをしている二人のことなんかお構いなく、突然屋敷にシェイラが転移してきた。
二人は言い争いをさっさとやめて、シェイラに縋りついた。
「シェイラ! いいところに来た! 今領地が大変なんだ」
「『聖女』のギフトで何とかしてちょうだい!」
「……お姉様は?」
「あいつか。安心してくれ、あいつはとっくに追い出したからな」
「そうよ。あの疫病神がいなくなって貴方も大喜びでしょう?」
「……そう」
サーシャを屋敷から追い出したこと。
二人にとっては取るに足らないことだったが、シェイラにとってはそうではなかった。
シェイラは淡々と二人を見つめている。
シェイラの様子に、自然とたじろいでしまう。
「――がいない」
「シェイラ? どうしたの……?」
心配するそぶりを見せている二人の言葉はシェイラの耳に入っていない。
「お姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいない」
「ひぃ……!」
呪詛を唱えているかのような、その恐ろしさに腰を抜かしてしまう公爵夫人。
更にシェイラの様子に反応するように、外は激しい嵐が突然襲ってきていた。
実はこの嵐は公爵家だけをピンポイントで襲っていた。
更にシェイラの魔力が増大して部屋中に広がっていった。
それはとどまることを知らず、屋敷のあちこちが悲鳴を上げるようにギシギシと音を立てている。
「シェイラ! 早くこれを沈めろ!」
「そうよ! 『聖女』の貴方をここまで育ててきたのよ。その恩を返しなさい!」
二人の懇願はシェイラには全く届いていなかった。
それどころか被害は悪化する一途をたどっていることが、シェイラの答えであるかのようだった。
公爵家の惨状は屋敷を跡形もなく破壊しつくすまで止まることはなかった。
シェイラがいなくなった後の公爵家には、かつての栄華の面影は跡形もなく無くなっていた。
公爵夫妻の失敗はただ一つ。
――サーシャを追放したこと
シェイラのサーシャへの気持ちに全く気付いていなかったが故に、サーシャを屋敷から追い出し。
結果としてシェイラの怒りを買った。それだけのこと。
公爵領の経営は崖から転げ落ちるようにみるみる悪化していき、事業を起こせば忽ち失敗し借金だけが凄まじい勢いで膨らんでいった。
それでも公爵夫妻は、贅沢することをやめられなかった。
更に『聖女』シェイラが、王国から行方不明となってしまった。
公爵夫妻は、娘の監督責任も取らされる羽目になり、国から莫大な制裁金を請求されることになった。
持っていた領地のほぼすべてを売り払っても、借金は欠片も減らないほどの借金だった。
一生かかっても返済することは絶対に不可能なほど。
もはや公爵は爵位剥奪寸前となるまで転がり落ちていった。
ここまで落とすほどに、シェイラはサーシャのことが好きで……
サーシャをないがしろにした二人のことが許せなかったようだ……
「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――――――――――――――」
サーシャがいなくなってからの侯爵領は、かつての栄華が嘘のような有り様。
何故か公爵領だけ自然災害が襲い……
何故か公爵領の使用人に調度品を持ち逃げされたり……
運悪く公爵家の全員が食べ物にあたって3日間寝込む羽目になったり……
ここのところ良くない日々が続いていた。
「貴様! またわしに黙ってドレスなんぞ買いおって!」
「何で貴方にいちいち言わないといけませんの!」
「うるさい! 今家には金がない! 貴様だって分かっているだろ!」
「そんなの私の知ったことじゃありませんわ!」
と最近では毎日喧嘩ばかりで、
使用人たちもこの状況に不味いと感じたのか次々と辞めていき、残っているのは古くからいる侍女長と執事長だけ。
その二人も、今月いっぱいで辞めることになっている。
「お父様、お母様」
言い合いをしている二人のことなんかお構いなく、突然屋敷にシェイラが転移してきた。
二人は言い争いをさっさとやめて、シェイラに縋りついた。
「シェイラ! いいところに来た! 今領地が大変なんだ」
「『聖女』のギフトで何とかしてちょうだい!」
「……お姉様は?」
「あいつか。安心してくれ、あいつはとっくに追い出したからな」
「そうよ。あの疫病神がいなくなって貴方も大喜びでしょう?」
「……そう」
サーシャを屋敷から追い出したこと。
二人にとっては取るに足らないことだったが、シェイラにとってはそうではなかった。
シェイラは淡々と二人を見つめている。
シェイラの様子に、自然とたじろいでしまう。
「――がいない」
「シェイラ? どうしたの……?」
心配するそぶりを見せている二人の言葉はシェイラの耳に入っていない。
「お姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいないお姉様がいない」
「ひぃ……!」
呪詛を唱えているかのような、その恐ろしさに腰を抜かしてしまう公爵夫人。
更にシェイラの様子に反応するように、外は激しい嵐が突然襲ってきていた。
実はこの嵐は公爵家だけをピンポイントで襲っていた。
更にシェイラの魔力が増大して部屋中に広がっていった。
それはとどまることを知らず、屋敷のあちこちが悲鳴を上げるようにギシギシと音を立てている。
「シェイラ! 早くこれを沈めろ!」
「そうよ! 『聖女』の貴方をここまで育ててきたのよ。その恩を返しなさい!」
二人の懇願はシェイラには全く届いていなかった。
それどころか被害は悪化する一途をたどっていることが、シェイラの答えであるかのようだった。
公爵家の惨状は屋敷を跡形もなく破壊しつくすまで止まることはなかった。
シェイラがいなくなった後の公爵家には、かつての栄華の面影は跡形もなく無くなっていた。
公爵夫妻の失敗はただ一つ。
――サーシャを追放したこと
シェイラのサーシャへの気持ちに全く気付いていなかったが故に、サーシャを屋敷から追い出し。
結果としてシェイラの怒りを買った。それだけのこと。
公爵領の経営は崖から転げ落ちるようにみるみる悪化していき、事業を起こせば忽ち失敗し借金だけが凄まじい勢いで膨らんでいった。
それでも公爵夫妻は、贅沢することをやめられなかった。
更に『聖女』シェイラが、王国から行方不明となってしまった。
公爵夫妻は、娘の監督責任も取らされる羽目になり、国から莫大な制裁金を請求されることになった。
持っていた領地のほぼすべてを売り払っても、借金は欠片も減らないほどの借金だった。
一生かかっても返済することは絶対に不可能なほど。
もはや公爵は爵位剥奪寸前となるまで転がり落ちていった。
ここまで落とすほどに、シェイラはサーシャのことが好きで……
サーシャをないがしろにした二人のことが許せなかったようだ……
「お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様お姉様――――――――――――――」
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