『踊り子令嬢』と言われて追放されましたが、実は希少なギフトでした

Ryo-k

文字の大きさ
上 下
14 / 22
2章

14.弐の舞

しおりを挟む
……目を覚ました私の視界に最初に移るのは、最近見慣れるようになった天井。
私が済んでいる部屋。

「起きたようだね」

部屋に入ってきたのはリーザさんだった。

「リーザさん? ……ここは、私の……っ!」

起き上がろうとするも身体が思うように動かせない。

「無理しない方がいい。3日も寝たきりだったんだから」

「3日……そうだ、私たち」

森でゴブリンの群れに襲われて……。

「君たちがクエストに出かけてすぐ、あの森にゴブリンが巣を作っているという話が入ってね。丁度討伐に来た王国騎士団が襲われている君たちを見つけたんだ」

「アイラ……アイラは無事なんですか!?」

「……実際見た方が早いか」

私の言葉にリーザさんは表情を暗くするだけで何も答えない。



「アイラ……?」

リーザさんに案内されてアイラの部屋に入ると、そこには全身包帯まみれで痛ましい姿になっているアイラの姿が。

「体中に複雑骨折多数。……もって数日だそうだ」

「そんな……何とかならないんですか!」

「ギルドの声かけで集まった治癒師数人がかりで治療しても、どうにもならないそうだ」

そういうとリーザさんは部屋を出ていった。
私たち二人きりにしてくれたみたい。

その時アイラが意識を取り戻した。

「アイラ!?」

「お嬢様……? ご無事で、よかった、です……」

意識を取り戻したアイラは、すぐさま起き上がろうとする。

「すぐに……夕食のご用意……いたし、ますね……」

「酷いけがなんだから、まだ横になっていなさい」

「いえ……そういう、わけには……参りません」

そういうとアイラはまた意識を失ってしまう。

『舞踊家』なら何とか……
そう考えた私は日舞を踊る。

《ギフト『舞踊家』壱の舞――『力』》

確かにギフトは発動している……しかしアイラの怪我が治る気配がない。
どうして……どうして治らないのよ……

どうして『舞踊家』なの……

『聖女』だったらアイラを治せるのに……


――そんな私の中に前の私花柳咲夜の記憶が突然思い浮かんだ。

「次期家元になるからには、我が家だけでなく他家の流派のことも知っておく必要があります」

母はそう言うと、他家の流派の映像を見ながら流派の成り立ちや特徴について教えてくれる。

「一説には、この踊りを観たものは、身体の怪我が一瞬のうちに癒えたとか……」


そのことを思い出した私は、見よう見まねで映像の振りを踊る。
映像のように大まかな振りだが、それでいて動作一つ一つに力の入った踊りを……


《ギフト『舞踊家』弐の舞――『癒』》


サーシャの踊りに反応してギフトが発動した。
サーシャを中心に光が部屋中に広がったかと思うと、その光は段々とアイラに向かって集まっていく。
光がアイラを包み込むと、アイラの傷が徐々に治っていき……サーシャが踊りを終えると同時に光も消滅したが、その時にはアイラの傷は綺麗に治っていた。


「アイラ!?」

「……温かいものが……お嬢様が私を包み込んでくれるような……」

「よかった……本当に、良かった……」

アイラの傷が治ったことを確認した私は、そこで身体に力が入らなくなってその場で意識を失った。

「お嬢様!?」

「……さっきの魔力は一体……って嘘だろ……」

サーシャの魔力に気付いて部屋に入ってきたリーザが見たのは、怪我一つなく元気な様子のアイラが、意識を失っているサーシャの姿をみてオロオロしているというもの。

「あれだけの傷が一瞬で……まさか、サーシャのギフト……?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

富士とまと
ファンタジー
一緒に異世界に召喚された従妹は魔力が高く、私は魔力がゼロだそうだ。 「私は聖女になるかも、姉さんバイバイ」とイケメンを侍らせた従妹に手を振られ、私は王都を追放された。 魔力はないけれど、霊感は日本にいたころから強かったんだよね。そのおかげで「英霊」だとか「精霊」だとかに盲愛されています。 ――いや、あの、精霊の指輪とかいらないんですけど、は、外れない?! ――ってか、イケメン幽霊が号泣って、私が悪いの? 私を追放した王都の人たちが困っている?従妹が大変な目にあってる?魔力ゼロを低級民と馬鹿にしてきた人たちが助けを求めているようですが……。 今更、魔力ゼロの人間にしか作れない特級魔力回復薬が欲しいとか言われてもね、こちらはあなたたちから何も欲しいわけじゃないのですけど。 重複投稿ですが、改稿してます

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

こちらの異世界で頑張ります

kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で 魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。 様々の事が起こり解決していく

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

処理中です...