『踊り子令嬢』と言われて追放されましたが、実は希少なギフトでした

Ryo-k

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1章

4.花柳咲夜①

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『花柳咲夜』

それがサーシャになる前の私の名前。

私の家は日本舞踊の名家の一つで、私はその跡取り娘だった。
家元を勤める母のもと、幼少期から時間があれば日舞の稽古の時間だった。
友だちと遊ぶ時間なんて全くなかった。

小さい頃は踊ることがただ楽しくて、夢中になっていた。

ところが大きくなるにつれていつもは褒めてくれていた母が、怒ることが増えてきた。

「貴方は次期家元なんですから、これくらいできるでしょ」

と毎日毎日言ってくる母。
そのうちあれだけ楽しかった踊ることが、次第に嫌になってきた。
何のために踊るのか分からなくなってきていた。

更に追い打ちをかけたのが妹の存在だった。

妹には私なんかとは比べ物にならない踊りの才能があった。それは私から見ても明らかだった。


「あなたを次期家元から外します」

母からそう言われた。当然と言えば当然だった。
私より才能のある妹がいるのに、私が時期家元というのもおかしな話だ。



だから私は……踊ることを止めた。



高校に進学するころには、夜は毎日遊び歩いていた。
時には暴力沙汰を起こして警察の世話になることもあった。

「花柳の名前に傷がつくから止めなさい」

母はいつもそれしか言ってこなかった。
私のことより家の心配。

「うるさいな! なら私が出てけばいいんでしょ!」

「別にそこまでは……って待ちなさい!」

母が何か言っていたけど無視して家を出た。

家を出てからは、つるんでいた友だちの家を渡り歩いた。

不意にニュースをつけたら、妹のことが特集されていた。

10代で注目されているスポーツ選手なんかをいつも紹介している番組で、「日本舞踊未来の家元」と題打ったそれは……

「花柳家元の一人娘で――」

「幼少期から次期家元として、学校が終わると毎日稽古が始まり――」

など、自分のことが最初からいなかったかのような紹介のされ方だった。

あの家に自分の居場所はもうないんだ……。


私はその時にもう駄目になったんだろう。
今まで手を出さなかった、酒や煙草にも手を出した。
少しやばい奴ともつるむようになった。
流石に薬だけには手を出さなかったけど、それ以外で警察の世話になることもしばしば。


その日もいつものように、友達と遊び歩いていた。
夜も遅くなり、これ以上遅くなると警察に補導される時間帯になるかという時間。


「……お姉ちゃん?」


妹が私の目の前に現れた。
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