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1章

2.公爵家を追放されて①

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殿下からの婚約破棄を受けた私は、会場を後にして公爵家へと向かっていました。

「お嬢様! 大丈夫ですか……」

「平気よ……むしろ殿下にはもっと早く婚約破棄してほしかったわ」

「お嬢様を苦しませるなんて……あのクソ王子」

「殿下相手に不敬よ。……今は私しかいないからいいけど」

馬車の中で私の侍女を務めてくれているアイラが、私以上に怒ってくれてる。
私は別に殿下のことは何とも思ってないから、気にしなくていいのに。

「お嬢様のギフトは踊り子なんて、蔑まれていいものじゃないはずです! きっともの凄いギフトです!」

「……ありがとう」



「明日には、公爵家を出ていきなさい」

公爵家に帰って早々、父であるフロイライン公爵から出た言葉は、私に家を出ていけというものだった。

「殿下に婚約破棄されたお前に、公爵家として利用価値はない。もうお前にかける金はない」

「ほんとよ。公爵家の娘が『踊り子』なんて下品なギフト持ちだなんて恥だわ!」

「私のギフトは『舞踊家』であって、『踊り子』ではありません」

「黙りなさい! もう私の娘ではないのだからただの平民よ。今日家においてやるだけでもありがたいと思いなさい!」

父は娘を自分の出世の道具としか考えていない。
母も公爵夫人の肩書で贅沢すること以外に興味のない人。

「これ以上お前がここにいると、シェイラに悪影響だ」

「シェイラは『聖女』のギフトを授かった、公爵家の誇りよ。それに比べて貴方は……」

両親は私のことよりも妹のシェイラの心配しかしていない。
シェイラは私の妹で『聖女』のギフトを授かった。

今は聖女の修行で教会に行っているから家にはいない。
もう会えなくなるし……出ていく前にもっといろいろ話したかったな。

公爵令嬢という身分とシェイラの存在だけがこの家に生まれて良かったわ。

それ以外……とくに親ガチャは大外れね。
ああ、もう公爵令嬢でも無くなるのか。

「……お話はそれだけでしょうか? でしたら身支度を整えるのでこれで失礼します」

「親に対するその態度はなんだ……」

公爵が何か話してきたけど、無視して今日限りの自室に戻ることにした。



「お嬢様! 家を出ていくってほんとですか!」

部屋に勢いよく入ってくるアイラ。

「お父様、公爵様がそう仰ったの。まぁそうなるわね」

「どうしてお嬢様が出ていかないといけないんですか! 納得できません!」

「まぁ、殿下から婚約破棄された令嬢を嫁にもらうところなんてないわよね」

「ほんとあのクソ王子……」

「だから不敬だって言ってるのに……ありがとうね」

アイラにとっては他人事なのに、私以上に怒ってくれた。

……ちょっとうれしくて、泣きそうになる。
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