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そして未来へ
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『できた』
パーティーが明日に迫った土曜の夕方。陽がミサンガを作り上げた。
途中で間違えて何度かほどいては編み直し、編み目がもたついている所もあるが、正真正銘、陽が最後まで編み上げたミサンガだ。
新月の夜と太陽の光。陽が選んだそれらの色は朔也と陽が寄り添っているようだと思うのは妄想が過ぎるだろうか。
簡単なものではあるが、ラッピングも陽自らが済ませ、念のため今夜も楠瀬が持ち帰ることになっている。
『陽くん、ホント頑張ったわね』
菜々子も陽の『初めて』を誉め讃え、楠瀬も鹿島も強く深く同意する。
朔也のために頑張った陽の横顔が達成感に満ちているのは気のせいではないだろう。
パーティーはまだ始まっていないのに。
いよいよ明日だ。料理のレシピと手順を確認しながら、皆でパニーニを頬張る。
食事を疎かに考えがちな陽に毎晩食べやすく栄養のあるものをと手を変え品を変えとやってきた鹿島だが、明日は陽と本格的なイタリアン、しかもフルコースを用意する。
もっとも陽が用意するのはアンティパストとして選んだエビのマリネと悩み抜いた末にプリモピアットに選んだズッパの仕上げまでだ。
フルコースとなれば鹿島の腕の見せ所であり、サーブは楠瀬にも可能だ。
頑張った陽と、そして朔也にゆっくりと2人のパーティーを楽しんで欲しいと思った。
明日は午前中のうちに陽の仕込みを手伝い、午後からはメインディッシュとドルチェの仕込みをすれば朔也の帰宅と同時にパーティーが始められる。
陽が自ら企画したパーティー。朔也に感謝の気持ちを伝えたいと純粋な想いの元、今の陽ができること全てを詰め込んだパーティー。
『若、喜ぶだろうな』
鹿島は思う。今まで誰かに対して、こんなにも穏やかで優しい気持ちを持てたことがあっただろうか。
これが陽の魅力なのだ。周囲を優しくしてしまう。相手が明星会の若頭であっても例外ではない。
『そして陽くんも、喜ぶよね』
楠瀬も鹿島と同じ温度で陽を見つめる。菜々子が帰宅の途についた後、食器を片付ける楠瀬とシンクを磨く鹿島。同じことを考えていた。
やくざも悪くない。
そして
今、自分たちは間違いなく幸せだ。
不遇だった天使は明星会へと舞い降りた。自身も幸せを掴み、周囲をも幸せにした。
そして明日、この天使は朔也に大きな幸せを運ぶのだろう。
パーティーが明日に迫った土曜の夕方。陽がミサンガを作り上げた。
途中で間違えて何度かほどいては編み直し、編み目がもたついている所もあるが、正真正銘、陽が最後まで編み上げたミサンガだ。
新月の夜と太陽の光。陽が選んだそれらの色は朔也と陽が寄り添っているようだと思うのは妄想が過ぎるだろうか。
簡単なものではあるが、ラッピングも陽自らが済ませ、念のため今夜も楠瀬が持ち帰ることになっている。
『陽くん、ホント頑張ったわね』
菜々子も陽の『初めて』を誉め讃え、楠瀬も鹿島も強く深く同意する。
朔也のために頑張った陽の横顔が達成感に満ちているのは気のせいではないだろう。
パーティーはまだ始まっていないのに。
いよいよ明日だ。料理のレシピと手順を確認しながら、皆でパニーニを頬張る。
食事を疎かに考えがちな陽に毎晩食べやすく栄養のあるものをと手を変え品を変えとやってきた鹿島だが、明日は陽と本格的なイタリアン、しかもフルコースを用意する。
もっとも陽が用意するのはアンティパストとして選んだエビのマリネと悩み抜いた末にプリモピアットに選んだズッパの仕上げまでだ。
フルコースとなれば鹿島の腕の見せ所であり、サーブは楠瀬にも可能だ。
頑張った陽と、そして朔也にゆっくりと2人のパーティーを楽しんで欲しいと思った。
明日は午前中のうちに陽の仕込みを手伝い、午後からはメインディッシュとドルチェの仕込みをすれば朔也の帰宅と同時にパーティーが始められる。
陽が自ら企画したパーティー。朔也に感謝の気持ちを伝えたいと純粋な想いの元、今の陽ができること全てを詰め込んだパーティー。
『若、喜ぶだろうな』
鹿島は思う。今まで誰かに対して、こんなにも穏やかで優しい気持ちを持てたことがあっただろうか。
これが陽の魅力なのだ。周囲を優しくしてしまう。相手が明星会の若頭であっても例外ではない。
『そして陽くんも、喜ぶよね』
楠瀬も鹿島と同じ温度で陽を見つめる。菜々子が帰宅の途についた後、食器を片付ける楠瀬とシンクを磨く鹿島。同じことを考えていた。
やくざも悪くない。
そして
今、自分たちは間違いなく幸せだ。
不遇だった天使は明星会へと舞い降りた。自身も幸せを掴み、周囲をも幸せにした。
そして明日、この天使は朔也に大きな幸せを運ぶのだろう。
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