164 / 197
曙
162
しおりを挟む
インターホンでの応答から、すぐに声の主と思しき男性が出入口に現れる。
子供達の安全上の理由で、直接出入可能な場所は全て建物内部からしか解錠できないのだと言う。
広い裏庭には物理的に外部からの侵入が不可能であるため、子供達も裏庭には自由に出入しているのだと、その男性が説明してくれたのだが。
『あっ!申し遅れました』
ガジュマルの家で子供達の学びをサポートしている松田が自己紹介をする。
陽と目線を合わせるように少し膝を折り目線を合わせるが、警戒心剥き出しの陽は朔也の後ろに隠れてしまう。
松田を警戒していると言うよりは、知らない場所に対しての警戒のように見える。
そんな陽に無理して近づこうともせず、松田は奥に園長がいるからと案内してくれる。
前を歩く前田は少し左足を引き摺っている。朔也の視線に気付いたのだろう。
松田が中学生の頃、交通事故に巻き込まれ生死を彷徨ったのだと話してくれた。
内蔵と左足に大きな損傷を受け、1年以上を工藤総合病院で過ごしたのだと言う。
その間、何度か手術を受けたが、左足は完全には治ることなく後のリハビリで、ここまで動かせるようになったと言うが
『院内学級で、ここの園長と知り合ったから』
リハビリの痛みに立ち向かえたのだと笑顔を見せている。
卑屈にならず、今の自分があるのは園長のおかげであり、いつか園長のようになりたくて、教員になったと語る松田は、どこか誇らしげだ。
『まだまだ園長の足元にも及びませんが』
子供達が自分の未来を楽しみにできるよう手伝いたいと、そこまで話したところで、木製のドアの前にたどり着いた。
特にノックをすることもなく開けられたドアの向こうは30畳ほどある教室らしき部屋で、皆が思い思いに工作をしている。
鋸や釘を使い板を加工しているが、中高生ほどの子供達は小学生に道具を安全に使うよう教えつつ、ここぞと言う時には手を貸したりしているようだ。
その様子を注意深くも温かく見守る初老の男性こそが、ガジュマルの家の園長、南雲恭平だ。
『天海さんですね』
工藤から話を聞いているようだ。
お待ちしていましたよ、と言われ、やはり初めに陽と視線を合わせようと膝を折る。
やはり初めての場所を警戒しているのだろう。朔也と繋いだ陽の手にギュッと力が入る。
南雲も松田同様、陽に無理して近付くようなことはせず、それでも陽の視界に入る場所で、朔也と松田と世間話のように学園の紹介を始めた。
その時、陽の視線は工作に取り組む生徒達に向けられていた。
子供達の安全上の理由で、直接出入可能な場所は全て建物内部からしか解錠できないのだと言う。
広い裏庭には物理的に外部からの侵入が不可能であるため、子供達も裏庭には自由に出入しているのだと、その男性が説明してくれたのだが。
『あっ!申し遅れました』
ガジュマルの家で子供達の学びをサポートしている松田が自己紹介をする。
陽と目線を合わせるように少し膝を折り目線を合わせるが、警戒心剥き出しの陽は朔也の後ろに隠れてしまう。
松田を警戒していると言うよりは、知らない場所に対しての警戒のように見える。
そんな陽に無理して近づこうともせず、松田は奥に園長がいるからと案内してくれる。
前を歩く前田は少し左足を引き摺っている。朔也の視線に気付いたのだろう。
松田が中学生の頃、交通事故に巻き込まれ生死を彷徨ったのだと話してくれた。
内蔵と左足に大きな損傷を受け、1年以上を工藤総合病院で過ごしたのだと言う。
その間、何度か手術を受けたが、左足は完全には治ることなく後のリハビリで、ここまで動かせるようになったと言うが
『院内学級で、ここの園長と知り合ったから』
リハビリの痛みに立ち向かえたのだと笑顔を見せている。
卑屈にならず、今の自分があるのは園長のおかげであり、いつか園長のようになりたくて、教員になったと語る松田は、どこか誇らしげだ。
『まだまだ園長の足元にも及びませんが』
子供達が自分の未来を楽しみにできるよう手伝いたいと、そこまで話したところで、木製のドアの前にたどり着いた。
特にノックをすることもなく開けられたドアの向こうは30畳ほどある教室らしき部屋で、皆が思い思いに工作をしている。
鋸や釘を使い板を加工しているが、中高生ほどの子供達は小学生に道具を安全に使うよう教えつつ、ここぞと言う時には手を貸したりしているようだ。
その様子を注意深くも温かく見守る初老の男性こそが、ガジュマルの家の園長、南雲恭平だ。
『天海さんですね』
工藤から話を聞いているようだ。
お待ちしていましたよ、と言われ、やはり初めに陽と視線を合わせようと膝を折る。
やはり初めての場所を警戒しているのだろう。朔也と繋いだ陽の手にギュッと力が入る。
南雲も松田同様、陽に無理して近付くようなことはせず、それでも陽の視界に入る場所で、朔也と松田と世間話のように学園の紹介を始めた。
その時、陽の視線は工作に取り組む生徒達に向けられていた。
10
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています


怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる