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贖罪
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テレビでは連日、不知火一家のスキャンダルが面白おかしく報じられている。
亜美が薬物中毒だったことをリークしただけにも関わらず、一家の様々な疑惑が持ち上がったのだ。
亜美の父親、つまり不知火議員の息子の職場での不倫とパワハラ問題。亜美の母親のホストへの執心。
そして数知れない不知火議員の収賄。もう暫くはテレビの画面も新聞の紙面も不知火の名が踊る日が続くだろう。
一家は社会的に抹殺されるだろうと誰もが思っているが、不知火議員は未だ国会議員であり続けている。面の皮の厚さはヤクザ以上だ。
病気療養を口実に入院を決め込んでいるが、世論が離党だけでは許さないと言った風潮になっている。
今、朔也の目の前で紅茶で喉を潤す工藤曰く、最終的には一家の地位も名誉も社会からの収入も奪い尽くす算段ができているのだと言う。
本部の八神も土門も、口を挟む気はないようだ。最早、用済みとでも思っているのだろう。
『明星会の若の逆鱗に触れたのだから当然です』
涼しい顔で言い切る工藤に、やはりヤクザだったのかと再認識させられる。
『吾妻さんは紅茶を淹れるのがお上手なのですね』
組事務所の応接室で、吾妻が香り高い紅茶を振る舞う。
まさか、風俗嬢から茶葉をもらって以来、紅茶にはまったとも言えず、曖昧な笑顔でやり過ごす吾妻が朔也にとっては新鮮だ。
どうでもいい相手には自ら紅茶を振る舞うようなことはしない。しかも朔也に付き従って行ったとは言え、風俗店に足を向けたことを、なんとなく隠そうとしている。
普段の吾妻であれば、淡々と事実を語ってもおかしくはない。風俗店はただただ欲を満たすための場所であり、それに対して羞恥を覚えるようなこともないだろう。しかも同年代の同性であれば、その辺りのことなど日常会話としてる輩も多いはずだ。
そうなると
これは。と朔也は思う。
工藤の想いが報われる可能性がないわけではない。ほんの些細なことから、そこまで考えるのは早計だろうか。
吾妻は元々気遣いの男だ。それでも、自らが淹れた紅茶を振る舞うなど朔也の自宅マンションでしか見たことのない。
ましてや組事務所への来客に対しては、下っ端の組員がコーヒーやお茶を用意するのが常であり、吾妻が紅茶を淹れるなど初めてだろう。
であれば、朔也の気まぐれな言動に吾妻も工藤も乗ってくれるだろうか。
『吾妻』
今日の昼は工藤をしっかり接待して欲しい。本当なら俺がすべきだが、どうしても外せない予定があるから、と。
その予定と工藤を天秤にかけたわけではないが、随分と前に入れた予定だから外せないのだと言い訳染みてしまうのは、なぜだろう。
『かしこまりました』
頭を下げている吾妻に代わり、朔也が工藤に提案する。
『吾妻が旨いワインの飲める店に案内します』
つまりは、昼から飲んでこい。もう事務所には戻るなと言うメッセージを吾妻は確かに受け止めた。
亜美が薬物中毒だったことをリークしただけにも関わらず、一家の様々な疑惑が持ち上がったのだ。
亜美の父親、つまり不知火議員の息子の職場での不倫とパワハラ問題。亜美の母親のホストへの執心。
そして数知れない不知火議員の収賄。もう暫くはテレビの画面も新聞の紙面も不知火の名が踊る日が続くだろう。
一家は社会的に抹殺されるだろうと誰もが思っているが、不知火議員は未だ国会議員であり続けている。面の皮の厚さはヤクザ以上だ。
病気療養を口実に入院を決め込んでいるが、世論が離党だけでは許さないと言った風潮になっている。
今、朔也の目の前で紅茶で喉を潤す工藤曰く、最終的には一家の地位も名誉も社会からの収入も奪い尽くす算段ができているのだと言う。
本部の八神も土門も、口を挟む気はないようだ。最早、用済みとでも思っているのだろう。
『明星会の若の逆鱗に触れたのだから当然です』
涼しい顔で言い切る工藤に、やはりヤクザだったのかと再認識させられる。
『吾妻さんは紅茶を淹れるのがお上手なのですね』
組事務所の応接室で、吾妻が香り高い紅茶を振る舞う。
まさか、風俗嬢から茶葉をもらって以来、紅茶にはまったとも言えず、曖昧な笑顔でやり過ごす吾妻が朔也にとっては新鮮だ。
どうでもいい相手には自ら紅茶を振る舞うようなことはしない。しかも朔也に付き従って行ったとは言え、風俗店に足を向けたことを、なんとなく隠そうとしている。
普段の吾妻であれば、淡々と事実を語ってもおかしくはない。風俗店はただただ欲を満たすための場所であり、それに対して羞恥を覚えるようなこともないだろう。しかも同年代の同性であれば、その辺りのことなど日常会話としてる輩も多いはずだ。
そうなると
これは。と朔也は思う。
工藤の想いが報われる可能性がないわけではない。ほんの些細なことから、そこまで考えるのは早計だろうか。
吾妻は元々気遣いの男だ。それでも、自らが淹れた紅茶を振る舞うなど朔也の自宅マンションでしか見たことのない。
ましてや組事務所への来客に対しては、下っ端の組員がコーヒーやお茶を用意するのが常であり、吾妻が紅茶を淹れるなど初めてだろう。
であれば、朔也の気まぐれな言動に吾妻も工藤も乗ってくれるだろうか。
『吾妻』
今日の昼は工藤をしっかり接待して欲しい。本当なら俺がすべきだが、どうしても外せない予定があるから、と。
その予定と工藤を天秤にかけたわけではないが、随分と前に入れた予定だから外せないのだと言い訳染みてしまうのは、なぜだろう。
『かしこまりました』
頭を下げている吾妻に代わり、朔也が工藤に提案する。
『吾妻が旨いワインの飲める店に案内します』
つまりは、昼から飲んでこい。もう事務所には戻るなと言うメッセージを吾妻は確かに受け止めた。
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