太陽と月

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煌めく太陽 満ちる月

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仕事が片付き、ほんの短い間だが穏やかな寝息を立てる陽の隣に横になる。
結局一睡もできなかったが特に眠気もなく、いつもの時間に陽を起こす。

『陽、おはよう。そろそろ起きよう』

昨晩、性的な知識など全くない陽に同意を得ぬまましでかしたことで、どんな顔をして起こせばいいものかとも思ったが、知識のない陽だからこそ普段と変わらぬ朝を迎えた。
意識したのは朔也だけか。

それにしても。

今朝の陽に、そこはかとない色気を感じるのは昨晩ああ言った接触があっせいだろうか。それとも、これまで気づかなかっただけなのだろうか。

これまでも陽に対して抱く独占欲は、己を嘲笑したくなるほどに強かった。しかし、今は独占欲とか執着心と言う言葉で片付けられぬほどの強い想いを陽に対して向けている。
危険なほどの想い。陽を傷つけることは誓ってないが、もし誰かが陽を傷つけるようなことがあれば、命で償わせるほどの制裁を加えてしまうであろう己の姿が容易に想像できる。

そうしないために、陽をこのまま閉じ込めてしまおうとさえ思う。
陽を所有物だとは微塵も思わない。何よりも陽を尊重したい。
結局自信がないのだ。

これまで朔也の思い通りにならなかったことなど、ほとんどなかった。思い通りになるよう綿密に策を練り、事を動かしてきたのだから。

しかし、陽を相手にそのような駆け引きをするつもりはない。

三十路を過ぎた極道である朔也が、真心で繋がりたいと思っている。
もちろん、真心だけでなく下心があることは否めないが、陽の心も身体も己だけのものであって欲しいのだ。

だから

ベタベタに甘やかして、朔也こそが陽の居場所なのだと思って欲しい。ここが一番、居心地がいいのだと思って欲しい。

他に選択肢を用意するつもりがないからこその朔也の贖罪だろうか。

グルグル考える朔也に、今朝も通常運転の陽から声がかかる。

『さくや  おしっこ』

今朝も手を繋ぎ、トイレで陽の無自覚淫靡なショーの始まりだ。
昨日までと少し違うのは、陽の色気が増したことだろう。

そして、朔也に愛され陽の色気は日々増していく。
朔也はそれに、どこまで、いつまで、我慢できるのだろうか。

己に問うたところで、今は答えを持ち合わせていない朔也だった。

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