太陽と月

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続く朔日

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鹿島の尽力により、消化がよく喉ごしのよいデザートが常に何種類か用意された。いつも通りの食事はなかなか喉を通らないようだが、デザートであれば辛うじて口にする陽は、吐き戻しもなくなり、ほんの少しではあるが元気を取り戻した。

時を同じくして吾妻から朔也が個室に移ったとの連絡を受けた佐伯は、陽に提案する。

『ねぇ陽くん』

朔也は病院で寝ていて、陽を迎えに来れないから陽の方から朔也に会いに行ってみてはどうか、陽が朔也を起こしてくれないか、と。

『さくや、あたまいたい?おなかいたい?』

決して流暢とは言えないが、朔也を心配して一生懸命に話す陽を見れば心が痛む。皆に相談したにも関わらず意識のない朔也に陽を会わせることが、今の陽にとって、どれだけ残酷な仕打ちとなるのか。

そんな時でも、やはり咲恵は気丈だ。命の儚さも強かさも知っている。
朔也は既に十分休んだから、陽くんが起こしてあげて、と言い含める。

『ぼく、さくやを、おこす』

2人を会わせることも酷なことだが、会わせないこともまた、酷である。

意を決した佐伯は、吾妻の命により朝から待機していた麻生の運転で咲恵と共に陽を朔也の眠る工藤総合病院へと急いだ。

体力のない陽が朔也と離れたことで体調を崩し自動車での移動と言っても、その負担は大きなものだろう。
それでも瞳を輝かせ車窓から景色を眺める陽は、朔也に会えることを楽しみにしていることが見て取れる。
時折、小さな小さな声で朔也の名前を囁いている。

陽にとって朔也の代替となる人間はいない。朔也にとっても同様だ。
他人はそれを相互依存なのだと言うのだろう。

佐伯は、それでもいいのではないかと思う。2人が互いを必要とし愛しているのであれば、それでいい。
そんな2人の関係性だからこそ、この儚げな少年が奇跡を起こすかもしれない。
決して予断を許すような状況ではないが、期待してしまうのが不思議だった。

病院のエントランスに自動車が横付けされると、吾妻と何人かの組員に出迎えられる。

吾妻は佐伯と咲恵に一礼した後、長身を屈めて陽と視線を会わせる。

『陽くん病室で朔也が待っているよ』

そうだ。朔也は陽を待っているのだ。そして陽も皆も朔也の目覚めを待っている。

吾妻の案内で朔也の病室を目指す。

『吾妻君、若の容態は?』

何か変化があったかと聞く佐伯に、小さく首を横に振る吾妻もまた、陽が奇跡をもたらせてくれるのではと期待を抱いていた。

期待と言うよりは願いのような感情を抱く自身の思考に苦笑しながら、朔也の眠る病室のドアを静かに開けた。
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