太陽と月

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再燃する憎悪

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結局仕事が忙しく組事務所とフロント企業のいくつかを回り、朔也が帰宅できる頃には日付が変わっていた。
定期的に入る楠瀬からの連絡では、やはり陽の食事量が少ないこと、少々落ち着きがなく口数が少ない事が報告された。

そして落ち着かないのは陽だけではない。朔也も同様だ。早く陽を迎えに行ってやりたい。抱き上げて、額に口付けを1つ。毎日当たり前にしてきた事が、今夜は帰宅してもできないのだ。

朔也はこれまで「寂しい」と言う感情をあまり持ったことがなかった。
昔から独りが嫌いではなかった。

『それなのに』

陽が隣にいない、長期間は堪えられそうにない。

本日最後のチャンスとばかりに、自宅マンションの200メートルほど手前の交差点で車から降り、ゆっくりと歩道を歩く。
それが目的で、朔也に対しては何も言えない下っ端に帰りの運転を命じたのだ。
吾妻にバレたら小言のオンパレードとなるだろう。護衛のいないところでは、1ミリでも外に出るなと言われているのだから。
しかし、こちらからは仕掛けない、と言うのは吾妻の意見を聞き入れたのだ。
であれば、1つぐらいは許されるだろう。

自動車から降りて早々に車道を挟んだ向こう側の歩道に怪しげな人影が1つ。マンションのメインエントランスの少し手前にも1つ。いずれも通行人を装っているのだろうが、不自然極まりない。




おまけにマンションのメインエントランスからは風間が箒と塵取りを手に姿を現し、怪し過ぎて笑ってしまう程の2つの人影を瞬時に見切る。
さも面白そうに傍観を決め込む風間は例え2人掛かりであっても朔也に危険はないと判断したのだろう。掃除をするふりを決め込む。
夜中にメインエントランスの掃除と言うのも、2人に負けず劣らずで怪しいとは思うが、2人は朔也に気を取られ思いが及ばない。
運転手を命じた組員は朔也の言い付け通り自動車からは降りてはいない。

怪しい2人が拳銃を所持していると仮定しても、この距離では射程距離圏外だ。
今回も、あくまで護身のためだと持たされたワルサーPPKの安全装置をポケットの中で解除し万が一に備える朔也だが、徐々に距離を詰める2人が懐から取り出したのは安っぽい短刀だった。

愛用のワルサーを汚すほどのこともない。丸腰でも勝てる。安全装置を戻し、2人と対峙する。
徐々に距離を詰める2人が歩いてくる。徐々に早足となり2人が短刀を鞘から抜いた刹那、前方から猛スピードの自動車がハイビームで近づく。

いち早く異変に気付いた風間が朔也に向かって走り出すが自動車のスピードには勝てない。
自動車が急ブレーキをかけ、直後乾いた破裂音が3回響いた。

『若っ』
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