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再燃する憎悪
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その日の夜遅く、朔也は陽を連れ箱根の別荘に入った。
念のためマンションの駐車場には国産のミニバンが2台用意されていた。普段は朔也自身も組の人間も使わない自動車で所有者から調べても明星会には辿りつかない自動車だ。
運転手も佐伯の伝手で明星会とは無関係の人間に依頼している。
ここまでせずとも篠崎等が朔也と陽の移動に気付けるほどの聡明さは持ち合わせていないだろう。
しかし、陽をほんの少しでも危険な目に遭わせるわけにはいかない。過ぎるほどの緻密さで箱根まで陽を移動させるのだ。
長く見積もって3日。陽は初めて朔也から離れ箱根に滞在することとなる。
万全を期すため、楠瀬と鹿島そして咲恵だけでなく佐伯にも同行を依頼している。
その際、咲恵にも佐伯にも割増の別料金を提示したが2人は口を揃えて、箱根の温泉旅館に宿泊するのと同様だからと断られてしまう。逆に宿泊費を支払わなければならない、とまで。
咲恵はともかく佐伯までが、そんなことを言う。これも陽の魅力のせいなのだ。
老若男女問わず陽は誰をも魅了する。
『陽、お前は結構罪深いな』
御殿場インターを通り過ぎる頃には朔也の膝枕で寝息を立て始めた陽の髪を撫でながら柔らかな感触を楽しんだ。
『若、お待ちしておりましたよ』
箱根の別荘の管理を任せている北見が出迎える。今でこそ好々爺然としているこの男性も風間同様、先代組長を支えた幹部の1人だった。隠された鋭い眼光もその頃の名残だ。
『世話になります。もっとも俺はとんぼ返りですけど』
眠ったままの陽を腕に抱き、早々にリビングに入れば照明が明るかったのだろう。陽がモゾモゾと動きだし目を覚ます。
『あぁ陽、起こしちまったな』
ソファに座らせたところで、北見に陽を紹介すれば、正に孫を見守るような眼差しとなる。
『陽くん、ここにいる間はじいちゃんと遊んでくれるかい?』
箱根に来るにあたり、陽には朔也が側にいられないことを言い含めては来たが、何かに堪えるように陽の体に力が入った。
『さくやが、むかえにくるまで、ここで、おるすばんする』
ヤクザな事情に巻き込まないためとは言え、毎日共に過ごしているのだ。陽の不安は朔也の不安でもある。
『用事を済ませたら、すぐに迎えに来るから』
だから、待っててくれるか?
『まってる』
纏わり付いて離れない陽を朔也自身も膝から降ろす事ができず、最終的には咲恵により強制終了がかかったことで、漸く朔也が自宅へと戻ったのだった。
念のためマンションの駐車場には国産のミニバンが2台用意されていた。普段は朔也自身も組の人間も使わない自動車で所有者から調べても明星会には辿りつかない自動車だ。
運転手も佐伯の伝手で明星会とは無関係の人間に依頼している。
ここまでせずとも篠崎等が朔也と陽の移動に気付けるほどの聡明さは持ち合わせていないだろう。
しかし、陽をほんの少しでも危険な目に遭わせるわけにはいかない。過ぎるほどの緻密さで箱根まで陽を移動させるのだ。
長く見積もって3日。陽は初めて朔也から離れ箱根に滞在することとなる。
万全を期すため、楠瀬と鹿島そして咲恵だけでなく佐伯にも同行を依頼している。
その際、咲恵にも佐伯にも割増の別料金を提示したが2人は口を揃えて、箱根の温泉旅館に宿泊するのと同様だからと断られてしまう。逆に宿泊費を支払わなければならない、とまで。
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御殿場インターを通り過ぎる頃には朔也の膝枕で寝息を立て始めた陽の髪を撫でながら柔らかな感触を楽しんだ。
『若、お待ちしておりましたよ』
箱根の別荘の管理を任せている北見が出迎える。今でこそ好々爺然としているこの男性も風間同様、先代組長を支えた幹部の1人だった。隠された鋭い眼光もその頃の名残だ。
『世話になります。もっとも俺はとんぼ返りですけど』
眠ったままの陽を腕に抱き、早々にリビングに入れば照明が明るかったのだろう。陽がモゾモゾと動きだし目を覚ます。
『あぁ陽、起こしちまったな』
ソファに座らせたところで、北見に陽を紹介すれば、正に孫を見守るような眼差しとなる。
『陽くん、ここにいる間はじいちゃんと遊んでくれるかい?』
箱根に来るにあたり、陽には朔也が側にいられないことを言い含めては来たが、何かに堪えるように陽の体に力が入った。
『さくやが、むかえにくるまで、ここで、おるすばんする』
ヤクザな事情に巻き込まないためとは言え、毎日共に過ごしているのだ。陽の不安は朔也の不安でもある。
『用事を済ませたら、すぐに迎えに来るから』
だから、待っててくれるか?
『まってる』
纏わり付いて離れない陽を朔也自身も膝から降ろす事ができず、最終的には咲恵により強制終了がかかったことで、漸く朔也が自宅へと戻ったのだった。
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