103 / 197
再燃する憎悪
100
しおりを挟む
いつものように車に乗り込んだ朔也のスマートフォンが懐で震え始めた。
まるで陽から離れるのを待っていたかのようなタイミングでかかってきた電話はやはり腹心である吾妻からだ。
『陽に聞かせられない話ってことか?』
電話に出ていきなり本題に入ることを吾妻も解っていたのだろう。
『炎星会が動き始めたようです』
3ヶ月余の間、全く動かなかった元炎星会が動き始めたのだ。
いや、正確には篠崎が動こうとしている。何の後ろ楯もない篠崎が。
ついさっきマンションの駐車場を出た所で目付きの悪い男が朔也の車を目で追っていたのには気付いていた。
因みに結城は己のコネクションを使い私大の付属病院に内藤を入院させ、内藤の回復のために寄り添っていた。
薬物による心身へのダメージと共に創世会本部に留め置かれた際に篠崎に負わされた怪我により危篤の一歩手前のような状態が続いた内藤は、左半身に麻痺が残ったが今は自力歩行が可能なまでに回復しているのだと言う。
そうした結城の献身的な姿は監視を続けていた明星会の若衆からも報告が上がっていた。
そして、つい先日結城が自宅に内藤を連れ帰ったとの報告が続いた。元々2人が住んでいた家で、結城が内藤の今後の全てを引き受けたのだ。
結城からすれば、漸く内藤を独占できたのだ。炎星会会長の名前と金を目当てに近づいた他の愛人とは違う、底知れない恋慕と敬愛の下に。
内藤の体が自由に動かなくとも、結城は隣に在り続けるだろう。
炎星会をたたみ隠居同然の結城だが、株取引でそれなりの個人資産を持っている。
結城の性格からして、それを増やすことも減らすこともなく手堅く取引を続け、余生と言うには少々長い時間を内藤と共に静かに過ごすことを望んでいるのだろう。
結局コソコソと動き出したのは篠崎だったのだが、まだ炎星会若頭だった頃の舎弟をほんの数人集め何かを画策している。静かにしていればいいものを。
精鋭とは言えない数人を集めたところで資金もない篠崎に出来ることなどたかが知れている。狙いは創世会幹事長の土門なのか辰星会若頭補佐の工藤か、朔也か。いずれにしても個人への復讐だろう。
相変わらず小さい男だ。
それにしても、随分と甘く見られたものだ。大した戦力にもならない輩を片手で足りるほどしか集められない篠崎は本気で報復できるとでも思っているのだろうか。
ただ吾妻も、そして朔也も篠崎が銃器を使うことを憂慮しているのだ。
密輸した銃器は創世会に全て没収されたはずだが、小型拳銃など、どこかに隠し持っていてもおかしくはない。
ハッキリ言って脅威ではない。ただ警察が動くような面倒事にならなければいい。
まるで陽から離れるのを待っていたかのようなタイミングでかかってきた電話はやはり腹心である吾妻からだ。
『陽に聞かせられない話ってことか?』
電話に出ていきなり本題に入ることを吾妻も解っていたのだろう。
『炎星会が動き始めたようです』
3ヶ月余の間、全く動かなかった元炎星会が動き始めたのだ。
いや、正確には篠崎が動こうとしている。何の後ろ楯もない篠崎が。
ついさっきマンションの駐車場を出た所で目付きの悪い男が朔也の車を目で追っていたのには気付いていた。
因みに結城は己のコネクションを使い私大の付属病院に内藤を入院させ、内藤の回復のために寄り添っていた。
薬物による心身へのダメージと共に創世会本部に留め置かれた際に篠崎に負わされた怪我により危篤の一歩手前のような状態が続いた内藤は、左半身に麻痺が残ったが今は自力歩行が可能なまでに回復しているのだと言う。
そうした結城の献身的な姿は監視を続けていた明星会の若衆からも報告が上がっていた。
そして、つい先日結城が自宅に内藤を連れ帰ったとの報告が続いた。元々2人が住んでいた家で、結城が内藤の今後の全てを引き受けたのだ。
結城からすれば、漸く内藤を独占できたのだ。炎星会会長の名前と金を目当てに近づいた他の愛人とは違う、底知れない恋慕と敬愛の下に。
内藤の体が自由に動かなくとも、結城は隣に在り続けるだろう。
炎星会をたたみ隠居同然の結城だが、株取引でそれなりの個人資産を持っている。
結城の性格からして、それを増やすことも減らすこともなく手堅く取引を続け、余生と言うには少々長い時間を内藤と共に静かに過ごすことを望んでいるのだろう。
結局コソコソと動き出したのは篠崎だったのだが、まだ炎星会若頭だった頃の舎弟をほんの数人集め何かを画策している。静かにしていればいいものを。
精鋭とは言えない数人を集めたところで資金もない篠崎に出来ることなどたかが知れている。狙いは創世会幹事長の土門なのか辰星会若頭補佐の工藤か、朔也か。いずれにしても個人への復讐だろう。
相変わらず小さい男だ。
それにしても、随分と甘く見られたものだ。大した戦力にもならない輩を片手で足りるほどしか集められない篠崎は本気で報復できるとでも思っているのだろうか。
ただ吾妻も、そして朔也も篠崎が銃器を使うことを憂慮しているのだ。
密輸した銃器は創世会に全て没収されたはずだが、小型拳銃など、どこかに隠し持っていてもおかしくはない。
ハッキリ言って脅威ではない。ただ警察が動くような面倒事にならなければいい。
10
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。


見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる