太陽と月

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朔也の葛藤

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最近、陽の言葉数が随分と増えてきた。

朔也のマンションに来たばかりの頃、自ら発する言葉と言えば「おしっこ」だけだった。
その後、朔也が出かける度「待ってる」と拙い口調で伝えてくれるようになった。
そして今、決して巧いとは言えないが、陽を取り巻く人間と意思の疎通を図れるようになってきている。

咲恵を「さきちゃん」と呼び朔也を「さくや」と呼ぶ。因みに鹿島と楠瀬は「おっきいお兄ちゃん」と「ちっさいお兄ちゃん」と言うことらしい。

『さくや、おふろ  はいろ』

皆が帰った後、熱烈なお誘いを受けた朔也にとって今も苦行は続いている。
毎日続けた甲斐があり、陽のはほぼ終了と言ったところだろうか。綺麗な薄桃色の亀頭が出ているのが常態化した。
後は陽に洗い方を教えればいい。いや、毎日朔也が洗っているのを見て、既に洗い方など解っているのかもしれない。

それをしないのは偏に朔也が陽に触れたいからに他ならない。

そして最近、幼い陽のソレを洗っていると徐々に兆し始めることがある。精通が近いのだろう。

やはり、そろそろ自分で洗うよう話す時期に来ているのだ。
カモミールの香りのする湯の中、膝の間に座らせた陽を後ろから抱き込む。

『陽、自分で体洗えるように練習しようか』

背中は届かないから俺が洗うけど、あとは自分で洗えるように練習だ。
意を決して伝えたつもりの朔也だが、陽はと言えばそれをバッサリと斬り捨てる。

『さくやが  あらう』

どうやら自分で洗う気はないらしい。
それではダメだ。陽が自分で何もできない人間になってしまう、と言うのは表面上の理由で陽のソレが兆してくれば、それを見た朔也のソレも兆してしまう。

手を出せないのに?苦行の上に更なる試練が重なるのか?

『最初から全部できなくてもいいから』

実際に長い髪を綺麗に洗うのは陽には難しい。頭と、そして背中を洗ってやれば、他は自分で洗えるだろう。
湯の中から陽を抱き上げ、先に頭を洗ってやる。タオルの中に髪の毛を纏めるのは特技とも言えるほどの手際だ。

陽と風呂を共にするようになってから使い始めたオーガニックのボディソープをスポンジで泡立て、泡だけを陽の手に乗せる。泡で遊ぶ陽に

『ほら、ここ洗ってごらん』

首元を指でトントンと触ってみるも、陽は頑なだ。

『さくやが  あらう』

せっかく風呂に入ったのに体が冷めてしまうのはよくない。朔也が己に対する言い訳を見つけたところで

『じゃあ、明日からは自分で洗う練習だぞ』

と溜め息混じりに陽の体を洗い始める朔也だった。
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