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違和感の正体
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会社も前田達也の素行の悪さにはお手上げだったのだろう。
解雇され退寮させられた達也は、美由紀を唆し美由紀の名前でアパートを借りたのだ。
真面目に働き、特に金を使うことのなかった美由紀は、それなりの貯金があったのだ。達也はそこに目を付けたのだろう。
人の道から逸脱した異性感しか持ち合わせていない達也と年相応の知性を身に付けられなかった美由紀が共に暮らした結果が陽なのだ。
人知れず自宅で危険な出産をした美由紀と、その子供に対し達也の愛情が向くことはなかった。
当時、達也と悪さをしていた仲間を探しだし脅しあげた末に聞き出したのは、美由紀の自宅での出産に興味本位で立ち会った達也が、惨状とも言える光景に臍の緒の処理もそこそこにアパートを飛び出し、その後は一切アパートに帰らなかったと薄ら笑いを浮かべ語ったと言う内容だった。
鬼畜だ。ヤクザな朔也すらそう感じる前田達也の過去。
そして現在でもそんな生活も性癖も変わることなく、同じようなことを繰り返している。
『今わかっているのは、これだけです』
そうなると当然1つの疑問が湧く。
『前田達也はゲイでもバイでもないんだよな?』
確かに現在ではノンケであっても男性のみを顧客とする風俗店で働く者もいる。
しかし、前田達也ならば女を相手にする職種を選びそうなものだ。
『これは前田達也の紹介者である系列店の売り専ボーイから聞き取ったのですが』
朔也の溜め息が益々深いものとなる。
セックスが好きだから、仕事でセックスをしたい。好きなセックスをして金をもらえるなら、それほど幸せなことはない。
でも女は妊娠する生き物だから面倒だ。
であれば、妊娠しない男を相手にすればいい。
なんとも浅はかで馬鹿げた理由だが、これ以上女性の被害者を出すよりはと、紹介者であるボーイはある意味正しい判断をしたのだ。
ここまでを聞いて、朔也は決心した。生い立ちには多少の同情を寄せるが、情状酌量の余地はない。セックス依存症でもない。正に社会のクズとも言える前田達也に償いの機会を与えてやろうと。死ぬまで償い続けさせようと。
『吾妻、昨日の面接の件で店長に連絡を』
前田達也は採用だ。一刻も早く連絡しなければ確かな人を見る目を持ったあの店長は前田達也に不採用の通知を出してしまう。
『かしこまりました』
早々にスマートフォンをタップする吾妻を視界の隅に入れつつ、朔也は思案する。紹介者からの聞き取りでは前田達也は男とセックスする場合でも自身をタチとして想定しているのだろう。自分が突っ込まれる側にまわるなど想定外の、そのまた外側のはずだ。
『桐島のオジキがいいな』
朔也の中で前田達也の「嫁ぎ先」が決まった瞬間だった。
解雇され退寮させられた達也は、美由紀を唆し美由紀の名前でアパートを借りたのだ。
真面目に働き、特に金を使うことのなかった美由紀は、それなりの貯金があったのだ。達也はそこに目を付けたのだろう。
人の道から逸脱した異性感しか持ち合わせていない達也と年相応の知性を身に付けられなかった美由紀が共に暮らした結果が陽なのだ。
人知れず自宅で危険な出産をした美由紀と、その子供に対し達也の愛情が向くことはなかった。
当時、達也と悪さをしていた仲間を探しだし脅しあげた末に聞き出したのは、美由紀の自宅での出産に興味本位で立ち会った達也が、惨状とも言える光景に臍の緒の処理もそこそこにアパートを飛び出し、その後は一切アパートに帰らなかったと薄ら笑いを浮かべ語ったと言う内容だった。
鬼畜だ。ヤクザな朔也すらそう感じる前田達也の過去。
そして現在でもそんな生活も性癖も変わることなく、同じようなことを繰り返している。
『今わかっているのは、これだけです』
そうなると当然1つの疑問が湧く。
『前田達也はゲイでもバイでもないんだよな?』
確かに現在ではノンケであっても男性のみを顧客とする風俗店で働く者もいる。
しかし、前田達也ならば女を相手にする職種を選びそうなものだ。
『これは前田達也の紹介者である系列店の売り専ボーイから聞き取ったのですが』
朔也の溜め息が益々深いものとなる。
セックスが好きだから、仕事でセックスをしたい。好きなセックスをして金をもらえるなら、それほど幸せなことはない。
でも女は妊娠する生き物だから面倒だ。
であれば、妊娠しない男を相手にすればいい。
なんとも浅はかで馬鹿げた理由だが、これ以上女性の被害者を出すよりはと、紹介者であるボーイはある意味正しい判断をしたのだ。
ここまでを聞いて、朔也は決心した。生い立ちには多少の同情を寄せるが、情状酌量の余地はない。セックス依存症でもない。正に社会のクズとも言える前田達也に償いの機会を与えてやろうと。死ぬまで償い続けさせようと。
『吾妻、昨日の面接の件で店長に連絡を』
前田達也は採用だ。一刻も早く連絡しなければ確かな人を見る目を持ったあの店長は前田達也に不採用の通知を出してしまう。
『かしこまりました』
早々にスマートフォンをタップする吾妻を視界の隅に入れつつ、朔也は思案する。紹介者からの聞き取りでは前田達也は男とセックスする場合でも自身をタチとして想定しているのだろう。自分が突っ込まれる側にまわるなど想定外の、そのまた外側のはずだ。
『桐島のオジキがいいな』
朔也の中で前田達也の「嫁ぎ先」が決まった瞬間だった。
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