62 / 197
陽の試練 蒴也の忍耐
62
しおりを挟む
『内藤に男色傾向があることはご存じですね?』
今まで気に留めたことはなかったが、内藤がバイセクシャルであることは、蒴也も耳にしたことがあった。
『内藤と結城は、会長と幹部と言った関係だけではなかったようです』
ゲイ専門の風俗店で結城が内藤に買い取られ、側仕えをしているうちに幹部まで上り詰めたのだと言う。元々頭の回転が速く、早い段階から策士として頭角を現したようだ。ヤクザにしては物腰が柔らかく部下からの評判も上々ではあるが、決断力と統率力は著しく欠落している、と言うのが炎星会内外から聞こえてくる結城の為人らしいのだが。
『内藤には随分と恩義を感じていたようです』
結城が所属していた風俗店は実質的には炎星会の下部団体が取り仕切っており、環境は劣悪だった。
元々借金を抱えて風俗に身を落とした者達に性病への対策も無い状態で一日に何人もの客を取らされ、心身共に傷付いた男娼達は、それを癒す術として覚醒剤を覚えさせられる。薬欲しさに借金は嵩み、休み無く客を取らされる。見事な悪循環を作り上げたのだが、廃人となるまでに、そう時間はかからない。その末路は想像に難くない。
結城が、その風俗店に入店した正にその日、炎星会のご機嫌取りのため初物好きの内藤に結城が宛がわれたのだ。
内藤は、そのまま結城を連れ帰ったのだと言う。そして、内藤が創世会本部に監禁される前日まで2人は生活を共にしていた。
内藤は好色で男女問わず数多の愛人がいた。しかし結局は結城の下へ帰っていく。そして結城も内藤を受け入れていたのだ。
『実際、創世会に監禁されている内藤は廃人と化して尚、結城の名だけを呼んでいるようです』
2人の絆と結城の性格から何等かを仕掛けてくるのではないかと吾妻は踏んでいた。
しかし、今まで影に隠れていた結城がどう動くのか考えあぐねているのだろう。無茶をするような人間ではないにしても、何を仕掛けてくるのかを判断するには材料が少なすぎるのだ。
『短絡的なことはしないとは思うのですが』
とは言え万が一を考える吾妻は炎星会への警戒を強化している。
破門状が回っている以上、内藤にも篠崎にも援助者はいない。炎星会の下部団体は末端までが創世会預かりとなっているし、それらは他の一次団体へと嫁ぎ先が割り振られるだろう。
一見、力を失った炎星会ではあるが動かせる金と兵隊を全て失ったわけではない。
しかし、時間が経てば経つほどに、それも厳しくなっていくはずだ。
決断力に欠ける結城であっても、動くのであれば早々に動いてくる。
吾妻の言葉を引き取った蒴也が
『矛先がどこなのか、そしてどんな手段を使うのか』
まだ情報が足りないのだ。結城の動きが読みきれない。
しかし、それを予想すべくもなく蒴也のスマホが振動を始めた。創世会本部の土門から直々に電話が来るのは珍しいことだ。
それほどに急を要することなのだろう。
今まで気に留めたことはなかったが、内藤がバイセクシャルであることは、蒴也も耳にしたことがあった。
『内藤と結城は、会長と幹部と言った関係だけではなかったようです』
ゲイ専門の風俗店で結城が内藤に買い取られ、側仕えをしているうちに幹部まで上り詰めたのだと言う。元々頭の回転が速く、早い段階から策士として頭角を現したようだ。ヤクザにしては物腰が柔らかく部下からの評判も上々ではあるが、決断力と統率力は著しく欠落している、と言うのが炎星会内外から聞こえてくる結城の為人らしいのだが。
『内藤には随分と恩義を感じていたようです』
結城が所属していた風俗店は実質的には炎星会の下部団体が取り仕切っており、環境は劣悪だった。
元々借金を抱えて風俗に身を落とした者達に性病への対策も無い状態で一日に何人もの客を取らされ、心身共に傷付いた男娼達は、それを癒す術として覚醒剤を覚えさせられる。薬欲しさに借金は嵩み、休み無く客を取らされる。見事な悪循環を作り上げたのだが、廃人となるまでに、そう時間はかからない。その末路は想像に難くない。
結城が、その風俗店に入店した正にその日、炎星会のご機嫌取りのため初物好きの内藤に結城が宛がわれたのだ。
内藤は、そのまま結城を連れ帰ったのだと言う。そして、内藤が創世会本部に監禁される前日まで2人は生活を共にしていた。
内藤は好色で男女問わず数多の愛人がいた。しかし結局は結城の下へ帰っていく。そして結城も内藤を受け入れていたのだ。
『実際、創世会に監禁されている内藤は廃人と化して尚、結城の名だけを呼んでいるようです』
2人の絆と結城の性格から何等かを仕掛けてくるのではないかと吾妻は踏んでいた。
しかし、今まで影に隠れていた結城がどう動くのか考えあぐねているのだろう。無茶をするような人間ではないにしても、何を仕掛けてくるのかを判断するには材料が少なすぎるのだ。
『短絡的なことはしないとは思うのですが』
とは言え万が一を考える吾妻は炎星会への警戒を強化している。
破門状が回っている以上、内藤にも篠崎にも援助者はいない。炎星会の下部団体は末端までが創世会預かりとなっているし、それらは他の一次団体へと嫁ぎ先が割り振られるだろう。
一見、力を失った炎星会ではあるが動かせる金と兵隊を全て失ったわけではない。
しかし、時間が経てば経つほどに、それも厳しくなっていくはずだ。
決断力に欠ける結城であっても、動くのであれば早々に動いてくる。
吾妻の言葉を引き取った蒴也が
『矛先がどこなのか、そしてどんな手段を使うのか』
まだ情報が足りないのだ。結城の動きが読みきれない。
しかし、それを予想すべくもなく蒴也のスマホが振動を始めた。創世会本部の土門から直々に電話が来るのは珍しいことだ。
それほどに急を要することなのだろう。
10
お気に入りに追加
261
あなたにおすすめの小説
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる