52 / 197
始まった日常
52
しおりを挟む
なんとなく陽のトイレには蒴也が付き合う、と言うのが暗黙のルールとして定着し始めている。
今も陽は蒴也と手を繋ぎトイレのドアを開けた。
蒴也自身は邪な考えもあり、それに付き合うのは苦ではない。ある意味低め安定の聖人君子度を計られる辛い行為ではあるのだが。
しかし明日からは蒴也が四六時中、陽の側にいられるわけではない。
となれば、誰かが陽のトイレに付き合うことになるのか?
『そんなの許さない』
蒴也の狭い狭い心はあり得ないほどにイケナイ想像を膨らませる。
もし蒴也不在中に陽が『おしっこ』と言ったら?
しかも料理番や雑用の組員の手を取って、それを言ったら?
陽は組員をトイレまで伴うのか?そこで下肢を惜しげもなく晒すのか?
そして組員の目の前で…
吾妻の選り抜いた組員が陽に対しては暴挙に出ることは考え難い。
それは蒴也とて理解している。しているのだが…
ダメだ。そんなの絶対にダメだ。
それならば、先手を打ってトイレ介助は咲恵に頼んでおくか?
いや、咲恵とて可愛い陽のそんな姿を見てしまえば、少しぐらい不埒なことを考えても仕方ない。
陽はそれほどに可愛いのだから。
自身の思考が著しく変てこな方向に傾いていることに全く気付かない蒴也は、腕を引かれたことで我に返る。
腕を引かれた先を見れば、陽がモジモジと膝を擦り合わせながら、上目遣いで蒴也を見ていた。
『おしっこ』
そうだ。とりあえず「おしっこ」だ。
『あぁ、陽ごめん』
まるで蒴也が現実に引き戻されたことを確認したかのように陽は自らズボンとボクサーブリーフを下ろすと、蒴也と手を繋ぎ直す。
まただ。陽は今度もまた、蒴也の目の前で「淫靡な」ショーを始めようとしている。
もっとも、そこに「淫靡な」感情を抱いているのは蒴也だけなのだ。陽は恐ろしく無自覚なのだから。
膀胱は許容量間際と言ったところだったのだろう。
便座に腰を下ろした陽はすぐに薄い琥珀色の液体を勢いよく排泄し始めた。
こんな光景、他の誰にも見せるわけにはいかない。
…いや蒴也が見せたくないだけか。
そこで漸く蒴也は昨日のことに思い至る。
?昨日は1日炎星会のことで組事務所に詰めていた。
その間、陽は佐伯と咲恵と3人で過ごしたのだ。
???昨日はどうしていたんだ?
咲恵か
それとも
佐伯が、あの佐伯が陽のトイレに付き合っていたのか?
下着とズボンを直す陽に
『陽、昨日はトイレどうしてた?』
陽が答えるはずもなく、蒴也を見上げている。
すぐに、すぐに咲恵に確認しなければならない。陽が昨日トイレをどうしていたのか。
すぐに確認だ。
『咲恵さん!』
何事かと驚いたのだろう。リビングのドアを慌てて開けた咲恵が
『どうしたの?』
首を傾げて、こちらを見ている。
『昨日、陽はトイレどうしてた?』
今も陽は蒴也と手を繋ぎトイレのドアを開けた。
蒴也自身は邪な考えもあり、それに付き合うのは苦ではない。ある意味低め安定の聖人君子度を計られる辛い行為ではあるのだが。
しかし明日からは蒴也が四六時中、陽の側にいられるわけではない。
となれば、誰かが陽のトイレに付き合うことになるのか?
『そんなの許さない』
蒴也の狭い狭い心はあり得ないほどにイケナイ想像を膨らませる。
もし蒴也不在中に陽が『おしっこ』と言ったら?
しかも料理番や雑用の組員の手を取って、それを言ったら?
陽は組員をトイレまで伴うのか?そこで下肢を惜しげもなく晒すのか?
そして組員の目の前で…
吾妻の選り抜いた組員が陽に対しては暴挙に出ることは考え難い。
それは蒴也とて理解している。しているのだが…
ダメだ。そんなの絶対にダメだ。
それならば、先手を打ってトイレ介助は咲恵に頼んでおくか?
いや、咲恵とて可愛い陽のそんな姿を見てしまえば、少しぐらい不埒なことを考えても仕方ない。
陽はそれほどに可愛いのだから。
自身の思考が著しく変てこな方向に傾いていることに全く気付かない蒴也は、腕を引かれたことで我に返る。
腕を引かれた先を見れば、陽がモジモジと膝を擦り合わせながら、上目遣いで蒴也を見ていた。
『おしっこ』
そうだ。とりあえず「おしっこ」だ。
『あぁ、陽ごめん』
まるで蒴也が現実に引き戻されたことを確認したかのように陽は自らズボンとボクサーブリーフを下ろすと、蒴也と手を繋ぎ直す。
まただ。陽は今度もまた、蒴也の目の前で「淫靡な」ショーを始めようとしている。
もっとも、そこに「淫靡な」感情を抱いているのは蒴也だけなのだ。陽は恐ろしく無自覚なのだから。
膀胱は許容量間際と言ったところだったのだろう。
便座に腰を下ろした陽はすぐに薄い琥珀色の液体を勢いよく排泄し始めた。
こんな光景、他の誰にも見せるわけにはいかない。
…いや蒴也が見せたくないだけか。
そこで漸く蒴也は昨日のことに思い至る。
?昨日は1日炎星会のことで組事務所に詰めていた。
その間、陽は佐伯と咲恵と3人で過ごしたのだ。
???昨日はどうしていたんだ?
咲恵か
それとも
佐伯が、あの佐伯が陽のトイレに付き合っていたのか?
下着とズボンを直す陽に
『陽、昨日はトイレどうしてた?』
陽が答えるはずもなく、蒴也を見上げている。
すぐに、すぐに咲恵に確認しなければならない。陽が昨日トイレをどうしていたのか。
すぐに確認だ。
『咲恵さん!』
何事かと驚いたのだろう。リビングのドアを慌てて開けた咲恵が
『どうしたの?』
首を傾げて、こちらを見ている。
『昨日、陽はトイレどうしてた?』
10
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

僕の部下がかわいくて仕方ない
まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる